耐える女の子たちがいる風景 > 平均台

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ピシッ。

「プルプル震えるな。ビシッと立て!」

「はいっ。注意1です。すみませんでしたっ!」

ピシッ。

「尻の力を抜くな。キュッと力入れとけ!」

「はいっ。注意2です。すみませんでしたっ!」

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ピシッ。

「指先! いつも、どうしろって言ってる?」

「はいっ。注意7です。すみませんでしたっ! 指先までピンと伸ばします!」

ピシッ。

「目線! 下向かない! 顔上げて、いつでも笑顔! 苦しそうな顔しない!」

「はいっ。注意8です。すみませんでしたっ!」

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「注意5以上受けた出来損ないは、尻に根性入れ。平均台に手をついて、尻突き出す。5未満の者はアップで待機」

「「「はいっ!」」」

平均台の上での、アップと呼ばれるつま先立ちの姿勢維持は、毎日の練習前に行われる、私たちにとってはつらい練習前のウォーミングアップのようなものです。

しかし、ウォーミングアップと言っても、短くても30分、長いときには一時間や二時間は当たり前、時には一日中平均台アップで練習が終わってしまうなんていうこともあるのです。

教育係の先輩方に言わせれば、私たちはそのウォーミングアップすらも満足に出来ない、出来損ないの集まりだということなのです。

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注意を八回受けた私は、平均台に手をついて、お尻を突き出すと、注意を受けた回数分、八発の根性入れを先輩の教育棒で入れてもらいました。

いつも先輩の手を煩わせてしまって申し訳ない気持ちで一杯です。

「四人も根性入れが必要だなんて、どうなってるの? まぬがれた二人だって、注意0だった訳じゃないんだから、気を抜かないように。明日は我が身ですよ」

「「「はいっ! すみませんでしたっ! 根性入れ、ありがとうございましたっ!」」」

注意の際にふくらはぎや足の裏に受けた教育棒の痛み、根性入れの際にお尻に受けた教育棒の痛みが体にしみます。しかし、その痛みを和らげる間もなく、次の練習が始まりました。

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「左足前で前後開脚。一つ一つ気持ち入れてやるんだよ。せっかく根性入れしてやったんだから、その尻の痛みを忘れるな」

「「「はいっ!」」」

床の上とは違い、平均台に片足を乗せることで、開脚の角度は180度以上になります。それも、誰に押されるという訳でもなく、自分自身の体の重さで勝手に足が広がっていくのです。

それでも限界があります。しかし、開脚が甘いと判断されれば、教育係の先輩によって容赦なく押さえつけられ、踏みつけられます。

ふくらはぎやお尻を教育棒の痕で赤くした私たちは、今度は太ももの裏側を先輩の靴の裏の跡で真っ赤に染められていくのです。

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「ありがとうごじゃぃぃまぁぁぁすぅ」
「ぎゃぁぁ。ありがじょぉうごじゃりまぁず」
「ぐわぁぇ。あじぎゃどぉ……ござじばすぅ」

泣いたり、痛がったりすることを禁じられている私たちは、お礼の言葉でどうにかそれを誤魔化すしかないのです。体育館には私たちの叫び声がこだましました。

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「右足前で前後開脚。二本でいくよ。三人ずつで別れて、残りはアップで待機」

「「「はいっ!」」」

息つく間もなく次のメニューです。平均台を平行に並べると、その上で開脚を始めました。

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やはり、先輩の踏みつけ攻撃は続きます。今度は太ももの裏だけでなく、前に広げた右足の太ももも踏みつけられます。目線を下げると、先輩の靴の裏の跡がくっきりとついてました。

「こら、目線は上。下げるんじゃない。何度言ったら分かるんだよ」

「はいっ。すみませんっ! あっ、あぁ、はいっ。すみません……」

先輩は目線を下げた私の後ろ髪をつかむと、それを引っ張り、強引に私の顔を上げさせました。そして、太ももの裏に違和感を覚えます。そう言えば、先輩の声が妙に耳に近かった……。

少しだけ、振り返ると、なんと私の太ももの裏に先輩が腰かけていたのです。もちろん、全体重を掛けていた訳ではありませんが……。

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「アップ待機の三人、悪いんだけど、ちょっと手伝ってくれないかな」

平均台を使っての左右開脚が始まると、もう私は完全に教育係の先輩方のターゲットになっていました。

こういう日は、数日に一度やってくるのです。もうその日は地獄。最後は落ちるところまで落ちる覚悟をしなくてはなりません。ほぼ順番にターゲットの日は回っているような気もするのですが、心なしか私が生贄になる日が多いような……。

しかし、先輩が声をかけてくださるのは、気にされている証拠。期待されている証。そう思って、頑張るしかありません。

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先輩方に睨まれ、教育棒で突かれ、仲間の三人に押さえつけられ……。

「なんで他の人は出来るのに、あんただけ出来ないのかな」

「はいっ。すみません……。頑張ります……」

「すみません、じゃなくてさぁ。なんで出来ないのかって。頑張りますって言って、頑張ってないじゃん」

「はいっ。すみません……。それは……。私の……。私の気持ちが弱いからです……弱いからだと思います」

「そう。気持ちが弱いんだ。じゃあ、気持ち入れてあげるから準備しな」

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レオタードを剥ぎ取られた私は、二本並べられた平均台に跨ります。体を前に倒してお尻を突き出すと、先ほどの根性入れとは違い、お尻の割れ目がぱっくりと広げられるのが分かりました。

「他の五人も明日は我が身だよ。この情けない姿が自分だと思ってしっかり目に焼き付けておきなさい」

「「「はいっ!」」」

情けない姿の私。私の背後から、仲間が返事をする声が聞こえます。みんなの視線が私の恥かしい部分に注がれているのを感じます。

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パシッ。

先輩の教育棒が、むき出しになった私のお尻を襲います。たった一枚の、あの薄手のレオタードでも、あるのとないのとでは大違いです。

先輩や仲間にすべてを見られながら恥ずかしいのを我慢し、教育棒で叩かれながら痛いのを我慢し、私の弱い気持ちを強くしていきます。

これで強くなれる、そう信じて……。

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「さて、あとはあんた次第よ。これ以上面倒見きれないから。気持ち強くして、根性入れるために、外で訓練してきなさい」

先輩のその言葉を聞いた私は、思わず自分の胸とお股を覆ってしまいました。パーンと乾いた音が体育館に響き、直後、私の左頬にジーンと痛みを感じます。

先輩のビンタが私の頬を襲ったのです。

「気持ち強くしたいんじゃなかったのか! 今すぐ、外でアップ! 許可するまで入ってくるな!」

「は……はいっ!」

外へとつながるドアへ急いで駈け出そうとしたとき、先輩の声が続きました。

「……と思ったけど、さすがに素っ裸って訳にもいかないわね。ほらっ」

そう言うと先輩は、バインダーの中から紙を一枚取り出し、そこに“訓練中”と書きなぐると、私のお尻にぺたりと貼り付けたのです。

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