投稿作品集 > 由美さんのマラソン大会

このストーリーは、bbs にて、のりぞう 氏より投稿していただいた作品です。 この作品の著作権は のりぞう 氏にあります。



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これは、中学時代最後のマラソン大会の話です。

マラソン大会は三学期で唯一の学校行事であり、3年生にとっては最後の学校行事でもあります。このマラソン大会で私達3年女子の部で優勝したのが工藤由美さんでした。

由美さんはショートカットで中性的な感じのする女の子。そんな由美さんは運動が得意のスポーツ少女で、市内の陸上大会では常に上位入賞を果たす程の実力の持ち主。優勝して当然ですね。

卒業した後、陸上部の強豪校へ進学した由美さんはこの時、「高校に入ったら陸上の事を本格的に学びたい」と言っていました。

3年生女子の部がスタートする直前、由美さんは着ていたジャージを脱いで、半袖シャツにブルマ姿になると、気合を入れる様に鉢巻きを額に締めました。

鉢巻き姿の由美さんは、まさに戦いに挑む女の子そのものです。11月から3月までジャージの着用が認められていましたが、由美さんは決戦を前にジャージを脱いで半袖ブルマの夏用の体操服姿になりました。

ジャージ姿の女の子達に混じって、唯一、純白の半袖シャツにエンジのブルマと言ういでたちの由美さんは皆の注目を浴びるのに十分。男子達が由美さんのブルマをジロジロ見ていたのを思い出します。

由美さんは自分のブルマ姿を男子たちに見られて照れ笑い。恥ずかしいならブルマ姿にならなければいいのにと思うかもしれませんが、由美さんがブルマ姿になったのには理由がありました。

ブルマは太ももの付け根辺りまで肌が露出しているので、脚が動かしやすく、激しい運動に向いている着衣と言えます。それに、由美さんは「ブルマを穿くと気が引き締まる」と言っていました。

由美さんがブルマ姿になったのは、走りやすさを優先した由美さんのこだわりと、マラソン大会に挑む熱意からと言えますね。


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毎日走り込んでいる由美さんの下半身は良く引き締まっていて格好く良く見えました。プヨプヨな私の太ももとは大違い。

ブルマを穿いたヒップラインはギュッと上がっていて、寒風に晒されて、ほんのり赤く染まっている太ももは筋肉質で、太ももから続く脚の先まで綺麗な脚線をしていました。

由美さんは毎日、夜遅くまで陸上部でしごかれていた。毎日の様に顧問の先生から罵声を浴びせられ、ビンタを受けたり、ブルマの上からお尻を引っ叩かれたり、体罰は当たり前。

唸り声を上げながら筋トレをやらされ、倒れ込んで動けなくなるまで何時間も走らされ、時には、「練習に身が入っていない」と怒られて、男子が見ているにもかかわらず、トップレスになって練習させられたりもしていました。

いくら中学生とはいえ、上半身裸にするなんてやり過ぎともいえる指導でしたが、由美さんは不平も不満も言わず、控えめな胸をプルプルと揺らしながらブルマ一枚で走っていました。

この時の由美さんの表情は、恥ずかしさよりも自分自身の至らなさに悔しさを滲ませていたのです。叩かれ、脱がされ、厳しい練習の毎日に泣き言ひとつ言わずに頑張ってきた由美さん。

そんな由美さんが半袖ブルマになると、日々の辛い練習の積み重ねによって鍛え抜かれた由美さんの身体つきが際立って、私の目にはとても輝いて見えました。


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「よーい、スタート」の合図で一斉に私達は皆の先へ先へと駆け出しました。

後輩や同級生の男子達の声援を浴びながら、締めた鉢巻きの先を棚引かせながら先頭を切って駆け抜けて行く由美さんの顔は真剣そのもの。

颯爽と目の前を駆け抜けていくブルマ姿の由美さんに、後輩たちは目を奪われていたに違いありません。

由美さんは、スタート直後からエンジのブルマから伸びる鍛え抜かれた太ももを前へ前へと出していき、私達をグングンと引き離して行きました。

私達を突き放して独走する由美さんを追いかける様に、私も一生懸命足を前へ前へと押し出しましたが、由美さんの走りについてはいけませんでした。

3年生女子の部の結果は、由美さんの堂々の一位。一番でゴールを切った由美さんは、両手をお尻の後ろに組んで、軽く会釈をしたそうです。一着を取った喜びよりも、走る喜びに感謝を示す由美さんはとても控えめな女の子ですね。

私達が走り終えると、由美さんは新聞部や放送部の皆から取材を受けていました。走り終えたばかりで、まだ身体が火照っているのか、それとも取材を受けて照れているのか、頬っぺたを赤く染めて取材に答えていた由美さん。

背筋をまっすぐに伸ばし、両腕を身体の横にピタリとつけて取材に受け答えをしている由美さんでしたが、「最後に笑顔の一枚」と言われて、照れ臭そうにしながら胸元で小さくピースサインを決めました。

小さくピースサインを決める由美さんの控えめな性格と、ボーイッシュフェイスにブルマ姿とが相まって、この時の由美さんはいつも以上に可愛らしく見えました。

私は高校に行っても由美さんが活躍できるように、心の中で祈りながら、取材を受けている由美さんを見つめていました。

これが、私の中学時代最後のマラソン大会の思い出です。マラソン大会の思い出と言うよりも、由美さんの思い出ですね。

(おしまい)


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