投稿作品集 > 体育教師奈津子 番外編 第2.5章 p.03
このストーリーは、bbs にて、ロッキー 氏より投稿していただいた作品です。 この作品の著作権は ロッキー 氏にあります。
■ 二学期直前 2年A組 藤原政代 ■
(1)
ああ、また見てるよ。この前と何が違うんだろう。宇宙開発用ってこの前見てなかったっけ。
小町が日曜日の朝やってる、仮面ライダーにどハマりしている。最初はお金の掛かりそうなSF映画を探してたはずなんだけどな。過去のシリーズも、何度も繰り返し見てる。戦隊系は、なんか違うらしい。平日も授業中ずっと見てる。
あれ、この人、前に別のに変身してなかったか? 二回も変身したのか!
というのもあった。そのたびに、詳細な説明をされるんだけど、また同じこと聞くんだよね。だって、説明が長すぎて、肝心な所がわかんないんだもん。
寮の部屋には、DVDが山積み。しかし、撮影終わった後どうするんだろう? 寄付するのかな。オークションで売ろうよ。
「仮面ライダーって、何も知らない外国人の人に、なんて説明したら伝わると思う?」
「サイボーグじゃない?」
「バッタのサイボーグって伝わるかなぁ? 脳は改造されてないんだよ? 今度、留学するときまでに、日本の文化とか、日本料理とかキチンと説明できる大人になりたいよね」
私達は高校を卒業したら、またアメリカに留学する。今度は同じスタンフォード大学院。私は地政学とMBAをとって、小町はスポーツ医工学とロボット工学を勉強する。
サヨシオも一緒に行くと思う。超感覚的知覚に興味があるらしい。どうやって、移動するんだろいうと思ったら、来た時と同じようにだって。そう言われてみると、どうやって導入したんだろう。
来た時は居なかったよ。1年A組が来てしばらくして『サヨシオ』ですって女の声が天井からしてみんなビックリしたんだから。まぁ、それはいいとして、料理に興味が持てて良かったねぇ。
研究棟まで造って、ちょっと料理は興味ないとか言われたら、どうすんだろうとヒヤヒヤしたね。科学的な料理を、スポーツ医学に基づいてという所に落ち着いたらしい。アスリート食堂をヒントにしたんだって。
そんなわけで、私達の修学旅行は『食の都・ウィーン』にした。まぁ、それはまた二学期になって話すよ。
それより、まず知らせておきたいトピックスがある。私達は色々あって、800億ドルほど、3月までに使いきらないといけなくなったの。
800億円って! 国家予算並にあるじゃないか。チマチマつくってたら、絶対無理だよね。
800÷8=100(一ヶ月)
100÷31=約4億円は使わないと間に合わない計算になる。
しかも、設備は全部新しく更新されて、『何か、新しい物をも生み出してね』だとよ。そんなに軽いノリでいうなよな! 漠然としてて、おもいつかねぇよ! まぁ、まだ、時間あるらしい。
小町が、とりあえず、何かSFでも撮ってみるかということで、愛花さんが持ってた出演作の台本を見ながら、脚本らしきものを書きあげ、これにお金を使おうと提案していた。
ただ、小町に監督をやらせると、永久に完結しなさそうなので、監督は愛花さんがやることになった。南カリフォルニア大の映画学部は、超難関で、自主制作一本じゃ、話にならないレベルということが判明したらしい。
世界中のそういうの希望してる人が、ダメでもともとで受けるとこなんだって。で急遽、じゃぁ、今度は他の人が書いたので撮ってみようということになった。
映画だとインパクトが無いから、3年の二学期まで、45分の放送を毎週一回放送することに。そんな長期の話をポンと思いつけるのは、真桑理事長か小町くらいなわけ。
一条先生? やると思う。途中で飽きるに決まってるじゃん。最近、先生って呼ぶようになった。みんなから、丸くなったって言われてるよ。
小町には存分に脚本を書いてもらって、私達が撮る方式。今は、愛花さんの初監督作品を撮ってるので、本格的な撮影はそれが終わってから。
あらすじを読ませてもらったが、これ、特撮じゃなくね?
悪の秘密結社が世界を支配するまでの話。征服ではなく、『支配する』ところがポイントで、ほとんど会社みたいな話。
小町のメモがここにある。
コンセプト
超大手秘密結社が、世界が潰れて、武者修行中だった首領の息子が独立。技術力のあるめっちゃホワイト企業みたいなイメージ。正攻法で支配したいので、時間移動して、本来の歴史を守るってる。
ターゲットは、人工知能が番号を知らせる。悪だろうと正義だろうと関係なく助ける。少数精鋭なので、超家族的。戦闘員怪人には組合もある。新選組みたいな羽織を着てる。幹部は背中に漢数字。全体的に和風な感じで。
監督 : 愛花さん
脚本 : 私とみんな
総合演出 : 政代ちゃん
音響・音声 : 高杉先生
特効管理 : 三井先生
主題歌 : 結城君とか水野君とかのヴィジュアル系バンド
首領(社長): 真桑理事長
基本チート。体が自己進化自己修復する。
体をゲル化できて、無敵だけどやる気なし。
副首領(副社長): 一条先生
蜘蛛とミノムシのハイブリッド怪人。糸が出せる。
二刀流。メッチャ怖い。鬼副首領と呼ばれてる。
総長(統括): 島田先生→渡辺詩織ちゃんor外国人の子
軍隊アリとかパワーあって、力任せな怪人。斧とかそっちけいの武器。
大幹部(役員): 黒田君
元宇宙刑事。怪我して左目に眼帯。トンボの目を移植。
天才科学者 : 結城君(病弱な設定)
副首領の弟タコ型怪人。自分で最初に実験できるように、再生型にした。
イカでもいいけど、弱そうだから駄目。
顧問弁護士 : 渡辺詩織ちゃん→島田先生
オオスズメバチ。
食堂のコック : 私と政代ちゃん
ドクター&トレーナー : 静江ちゃん
怪人(管理職課長): 2年生
シャコとか、デンキウナギとか、カタムシとか、ワシとか、アナコンダとかクマとか。
動植物とか。
戦闘員(平社員): 1年生
改造なし。
キグルミを用意。
敵対組織
コンセプト
次々と組織を拡大し、巨大ベンチャー企業超過激派。今が無理なら、成長前のヒーローとか改造前のヒーロー倒せばいいんじゃね的な?
→例えば、桶狭間の戦いで、今川義元を勝たせちゃう。関ヶ原の戦いで西軍を勝たせちゃう。
自分らがルールを作ると、ダークヒーロー協会を設立。
西郷首領
高杉副首領
三井研究総長、平賀戦闘総長、松ケ谷作戦参謀
幹部 : 愛花先輩。どっかの研究所から逃げてきたとかそんな不死身っぽい設定。
基本怪人とか戦闘員は使い捨て。メカニカルな感じで。おもちゃを売って収支を合わせたい。
ヒーロー協会
会長 : 神木先輩
副会長 : 国見先輩
ダークヒーロー協会
会長 : もともと不在
副会長 : 愛花先輩
宇宙時間刑事 : 毛利君とか運動部
ナレーション : 吉原さん
(2)
メイクとかもハリウッドから呼んで、映らないところもこだわって。とにかくお金を使おうってことになった。衣装やキグルミも、物凄くこだわったものにしようってことになった。
でも、まだまだ余ってる。結城勇気も面倒なことしてくれたよね。こいつが、三年間何もなければ、弟みたいなポジションになるんだよ。先が思いやられるよね。
でも、小町嬉しそうだよ。脚本書きながら、たまに『グフフフ』とか『フニャ』とか笑ってるぞ。見れなくて残念だったなぁ!!!!
そのうち、『小町さんの笑顔が見れないのは、宇宙空間に酸素が無いせい』とか思いつめなきゃいいけどな。
ちなみに、1年生と他のA組女子は、普通に授業中。A組は今年から夏休みがない。
え? 私と小町? 授業なんて、出るわけないじゃん。全部もう分かってるのに。
夏休みだよ? 去年みたいに、スイスの別荘にでも行きたかったなぁ。でも、その代わり、秋のゴールデンウィークは、みんなで秋の遠足に行けることになった。
もちろん、無駄遣いのために行くことになったんだけど。いっそ大名行列でもするか?
他にも、面白そうだけど実現できそうにない研究をしているベンチャー企業や、大学教授の研究を支援。人探しやスカウトの方法は真桑理事長が教えた。情報の扱い方は上手いからね。
そのときの方法を活かして、サヨシオに特撮のスタッフも検索してもらった。検索条件は細かく設定できるし、サヨシオは24時間オンライン上で、世界中と繋がって学習してるから、論文とか企業発表とかも把握してる。
ただし、研究棟に研究室ごと来てもらうこと、私達に内容を説明できることとか色々条件にしたんだけど、ほとんど全部来ちゃったよ。
シリコンバレーみたいになってるよ。行ったこと無いからイメージだけど。各部屋に、サヨシオ完備、ハルニャンズや、お手伝いロボット(二足歩行の)が、アシスタントとして常駐してるから、そりゃぁ成長早いよね。
K&S3&Mスマイル警護の人工知能研究やアンドロイド研究と関連しない企業もたくさん来てる。軍事用は駄目だけど、その他のことは基本、OKしてる。三人で相談してたけど。
聖子は小町のお母様の会社で、長期休暇は社会勉強。夜は帰ってくるけど、みんな凄い優しいらしい。なんだったら、いつもウチのCEOがお世話にみたいな差し入れでもする?
もう正社員になったらしいよ。アンドロイドは、ワガハイって名前になってるらしい。やっぱり、ドジっ子らしい。だから、アタシは、別の人の性格を基盤にしようって言ったの。
木元悠斗(弟)は、怪我して野球できなくなって落ち込むのかと思ったら、落ち込む間もなく、すぐにウチで、人工知能やロボットのレンタル営業やってるよ。インストールすれば、ロボット三原則に反しない限り、何でも取得できるからね。
流石は元ミナモトアカデミー附属第一中学A組だったことはあるな。前向き感ハンパねぇ。なんで、姉妹揃って厳しいセレクションなんて受けてウチに来たんだよ?
『情報応用工学の教員免許』も将来的には、取るらしい。ちなみに今、世界で一番人工知能のカスタマイズに詳しい男だよ。
営業ついでに、ハルニャンズのミニター先も探してる。全員レンタルしたら、研究所には、全データを元に、もう一人か二人造ろうと話してる。
『これを入れろ』『これはいらない』等、結構細かい要求をしてる。けずるってことは考えてないので、それは断っている。
あくまで、私達は人間と同等の扱いをしてくれないとレンタルしない。サヨシオだって、昼間学校に行っている時間や夜は、『好きなこと』をしている。
あと、アンドロイドの外見を指定してくることもある。マスコットキャラクターをそのまま造ってくれということもある。会社によっては、イメージキャラクターにできないかってこともある。
ちなみに、会社の選定は、事前に聖子と私と結城とサヨシオがチェックしてる。エンジニアチームは、そういうことに、一切興味が無い。清々しいくらい興味が無い。
理事長からは、『ミナモトグループに関係ないところね』と言われてるので、結構ハードルが高い。
巨大なシネコンが出来たと思ったら、中華街みたいに映画に関連するモノを全て集めたアーケイドもつくるらしい。世界中の自主制作映画とか、日本未公開の映画とかを買い付けて、公開するらしい。
うちの学生は全部無料。ただし、将来、偉くなったら、イベントに司会で吉原沙世(アナウンサー志望)起用が暗黙の了解だけどね。将来的には地域住民にも、有償で開放するらしい。あ、でも、中学生までは学校見学という名目で来てる。
あとは、島田先生(最近、呼び捨て辞めた)チャレンジ&先生レベルアップ計画。
司法試験合格(弁護士役のため)
宇宙飛行士になる(秋のA組旅行の引率のため)
公認会計士(校長ならば、財務状態とか把握できないと)
外交官試験(国際感覚を身に着けないと)
国家公務員キャリア試験(進路指導のため)
女子マラソンオリンピック出場(公務員ランナーとかいるし、予選の枠はスポンサー枠で選考レース出場)
潜水士・救急救命士取得(本来は、沖縄が修学旅行の引率。生徒が溺れたとき大変)
特殊部隊オリンピック出場(避難訓練指導のため)
気象予報士試験合格(校長が行事の雨天中止とかを判断するから)
エベレスト単独登頂(頂上に校旗を)
南極横断(基地の皆さんへの激励と社会貢献)
世界最大の砂漠にリンゴの木を植える(社会貢献)
超大型特殊免許取得(宇宙戦争が始まった時、巨大ロボットに乗り込み校長として学校を守るため)
ドーバー海峡横断(体育教師なんだから、水泳もできないと)
上空3000mからスカイダイビング
イグアスの滝で滝行
ルート砂漠で目玉焼き焼いてきて
鈴鹿8耐、パリ・ダカールラリー出場
アトランティス大陸探し
一条先生
キグルミや特撮の衣装をデザイン(総合芸術部に丸投げしてる模様)
三井先生
爆発取扱資格取得(特撮で、バンバン爆発させるため。私有地だから、最悪なくてもいいけど一応)
A組旅行っていうのは、秋のゴールデンウィークに、みんなで宇宙ステーションに旅行に行こうって話してる。もし、島田先生が引率できそうになければ、箱根か熱海の温泉にでも行こうかって。
国見さんに受験の息抜きをさせてあげたいらしい。詩織と国見さんが仲が良くなったのには、かなり驚いた。基本的に詩織は、水野への対応でも分かる通り、すっごい世話好き。毎日、夜食を持っていってるらしい。
アンドロイドのハルニャンズが家事を覚えたので、A組女子はほとんど暇な時間。ハルナを造ろうとサヨシオを言いくるめたのは、もちろん、黒田。
ヤキモチ焼かせたかったらしいけど、大失敗だと思うぞ。そっくり過ぎて見分けがつかねぇーよ。遙菜自身が困ってるぞ。スリーサイズもバッチリ一緒ですよ。とかドヤ顔だったぞ。もちろん蹴られてたけど。
遙菜も、K&S3&Mスマイル警護の営業事務としてたまにバイトしてる。あと肖像権料もちゃんと払ってる。ちなみに、一条先生の個人事務所が、ハルニャンズ共々肖像権等を全部管理してる。
愛花さんのマネージャーさんが撮影の時、挨拶に来ていたんだけど、この学校には私達の入学が決まった頃から、『前代未聞なくらい』各方面から、メディア・事務所等に対して圧力が掛かってて、スカウトはもちろん、一切取材もしないという紳士協定が結ばれてたらしい。
どおりで問題にならないわけだよ。ちなみに、ロボットの一人は、愛花さんのマネージャーとして採用された。警護プログラムとかが気に入ったらしい。
そうそう、意外なことに、『量産化を前提に、完全に均一化されていた』はずの、ハルニャンズにも個性のようなものがあったんだ。得意分野というか、若干性格も少しづつ違う。
小町曰く、戦隊物みたいにしてみたとのこと。レッドはもちろん、オリジナルのハルナ。ハルニャンズが経験したことは、全て、サヨシオとハルナと他のハルニャンズも即座に同時に経験する。
逆に、サヨシオとハルナが経験しても、ハルニャンズには、経験として共有できない。独立した設計になっている。
ハルナは物凄いペースで成長していき、来年から、三井先生や平賀先生の助手として、全学年のA組の物理・科学・社会・歴史等の教科を担当。
国語とかは別として、『数学が真っ先に対象と思う』じゃん? そこが面白いところで、1+1=2、もちろん、人工知能の方が計算早いよ。
ただ、『何故?』『どうして?』と聞かれると、相手の理解力に合わせて説明ができないから、オーバーヒートしちゃうんだなぁ。要は条件が複雑すぎるらしい。シンプルな質問程オーバーヒートする。『男と女どっちが得?』と聞いた時もオーバーヒートした。
科学や物理は、どこまでも行っても、化学式と公式と法則の範囲であれば、説明ができるみたいなんだよね。ただ、科学的に仮説の段階だったりすると、その分野の相手の理解力がわからないと、すぐにオーバーヒート。
体育もアドバイスはできるけど、たぶん向いてないと思う。
『心拍数が上がっています。100に調整してください。調整方法は目を閉じ、深呼吸をすることで、血管中の酸素濃度を……』
バトン部の練習にしても、『そのポーズをするには、上腕二頭筋が3%、腹部2.5%、太腿0.1%足りません。適切な練習方法は…… 』叩き壊したくなるだろ!
私達は体育は好きなので、毎回出ている。
島田先生も最初は楽ができると思って、ハルナに、過去のスポーツのデータとか、体育の事業の指導要領とかインストールして様子を見てたんだけど、ストレッチ一つとっても、
『生体スキャンしたところ、筋肉の付き方からあと三度捻れます』
「人間の身体って、100%に発揮しないようになってるらしいよ」
『ええ、もちろんは、それは差し引いて言ってます。怠けないでください』
『全員の体操が揃っていません。最初からやり直しです』
ということが、頻繁に発生して、授業がストレッチだけで終わり、全く進まなくて、諦めてちゃんと自分で授業をやり始めた。ちょうどいい塩梅というか、加減がまだわからないみたい。
サヨシオ曰く『向き不向き』の問題なんだって。情報を瞬時に分析し、判断を下すことはできるが、最終的には当然、それは人が決定するべきなんだとさ。
知識なら学習する人工知能に人間は絶対に勝てなくなる。スポーツの采配でも、衛星を使用して逐一分析出来るから無理。人間とは演算速度が違いすぎる。勝つための戦術も提示可能。
しかし、プレーヤーの気持ちを盛り上げることは、アンドロイドには出来ない。
サヨシオやハルナの分析では、『真桑理事長よりも、島田先生の方が息残る』という衝撃の分析結果が出ている。まぁ、真桑理事長は、『分析結果を説明することや、情報を取り扱うことに長けている』から、仕事がなくなることはないらしい。
これから必要になるのは、そういう能力。張り合う必要がない。我々の経験はデータであり、それでは人の心は動かない。やはり、人が経験によって語ることは大事なことらしい。
だから今回、『過酷な島田チャレンジを許可した』のだと推察されると分析してた。
よく考えてみると、一条先生の芸術、高杉先生の音楽、折笠先生の体操と水泳、島田先生の体育根性万能論、平賀先生の社会と経済、凡人ルール、松任先生の家庭科と花嫁修業、三井先生の物理とバレーと工業、倉内先生のサッカー、西郷先生の国語と野球。
どれも、人工知能には不向きなモノばかり。音楽は意外かもしれないけど、作詞・作曲はいつか出来るようになるかもしれない。いわゆるヒット曲や、歴史に残る名曲も作れるようになるかもしれない。
でも、それと、『人の心を感動させる』というのは別問題。
体操も、プログラムや衣装などのアドバイス。どうやったら、その技ができるかは判断できるけど、『どうやったら美しく見えるか』というのは判断できない。バトンも同じ。根性論はね。わかるよね。
社会や経済も、意外と判断は難しい。必ずしも、『歴史上全てのことが、道理に即している』とは限らない。人工知能には、ありえない反応のため、説明ができない。
家庭科は意外に思うかもしれないが、『人工知能は、ネットワーク上にある情報しか調べられない』。つまり、まだネットワークに無い情報、『おばあちゃんの知恵袋』的な情報は、直接、聞くしか無いのである。
もちろん、科学的に分析すれば、人工知能でも説明できるが、そもそも、そういう発想にはならない。
例えば、『痛いの痛いの飛んで行け』痛いところをさすることにより、痛みという感覚から、さすられているという感覚に上書きされるため、痛みが治まるという理屈。
ブラシボー効果の一つだけど、なんか気持ち楽になるじゃん? 仮に、人工知能がそれを教えて、果たしてどれだけの効果があるかということ。
「手当」という言葉は、この言葉から来ている、というデータはあったらしいけど。一番、効率的な選択をしようとする人工知能では、確率が少ないらしい。
物理や工業も、『どうして、飛行機が飛ぶのか』ということを正しく、理解できるように説明することは難しく。そして、日常的に、まだ解明されていない、自然現象を含め物理や工業の謎は多い。
どう考えても、超感覚的知覚(ESP)としか説明できない経験による神業と呼ばれる現象がある。そして、それを生徒の理解力に応じて説明することは、現状不可能。(オーバーヒートする)
これらが、サヨシオが『拡張現実』に興味を持った理由でもあり、今度はボディーのあるアンドロイドを開発して欲しいと願った理由。
そもそも、サヨシオはどこから来たのか。小町曰く、水野真司がプログラミングしていたのを、詩織とジョディー(イェール大学卒業済みのエンジニア)と、サラ(イスラエル工科大学卒業済みのエンジニア)と一緒に手伝っただけとのこと。
サラについては、『ユダヤ人バージョンの小町』だと思って貰えば良いと思う。ハイテク企業集合体のスーパーお嬢様。たぶん、市場調査に来てるのもあると思う。
だから、毎週、金曜脱走して、月曜の夕方に、ふらっと戻ってきてたんだよね。最近は、もう脱獄しなくなったけど。
いつも、一緒にいるジョディーも、アメリカ版の似たようなもん。どっちかというと、私と似たような感じかな。足りない部品を調達してきて、『戦利品』として、詩織や沙世に渡してたのもこの二人。それがアンドロイドの材料になった。
お母様(元CIA・SOG(特殊作戦グループ))も寮の保安員として働いてる。どんな経緯で、ここで働くことになったのか、娘のジョディーでさえ『怖くて聞けない』ってどういうことよ。
ちなみに、二人のお兄さんは、国防高等研究計画局で研究員として働いてるよ。
どうして、最新式の自己学習型人工知能なんてものを、一高校生であるはずの、水野真司が持っていたのか。不思議だよねぇ。どう考えても、真桑理事長が絡んでるわけだけど、どこまでが計算してるのやら。これから、どういう計算になっているのやら。
サヨシオでも、不確定要素が多すぎて、まだ、計算出来ないらしい。
ちなみに、国見さんの受験勉強をサヨシオが見てたんだけど、これもストップがかかった。国見さん曰く、正解に合わせて、ドンドン問題の難易度が変わっていくこところは素晴らしかった。
ただ、『これってあってるんだっけ?』というとき、間違ってれば良いんだけど、『偶然正解してしまう』と何故、正解したのかわからないので困るらしい。
あと、選択問題とかだと、計算間違えして、偶然、正解していても、『理解している』と判断されてしまうらしい。
そんで、サヨシオに説明するんだけど、よくわからなくて、それを説明する時間は無いんだって。ほら、私達、そういうので不安になること無いから、よくわかんないし。
『ただ、予想問題の難易度とかは流石は人工知能、予想してるのと同じレベルだった。ありがとう。みんなの気持ちは嬉しかった』と言ってたよ。
人間の察する力って凄いんだねぇ。教えるって意外と大変なんだねぇ。
「小町ちゃーん、政代ちゃーん。真理先生の所に打ち合わせ行く時間だよ」
そう、今日は、その特撮の打ち合わせ。早く言いたいなぁ。『おい! この大根女優!』『アイドル芝居が!』とか。灰皿投げたりとかできるんでしょ? 普段言えないようなことが言えるんでしょう?
でも、同じこというと「語彙力無いやつ」と思われるじゃん。難しいよね。
ところで、小町、それはなに?
「え? スケッチだけど?」
意外だよなぁ。画伯って言われるくらい絵が下手なんて気が付かなかったよ。このゴニョゴニョしたのはなんだろう? 怪人か? 怪人のイメージなのか?
Written by ロッキー.
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