投稿作品集 > 体育教師奈津子 番外編 第2章 p.18

このストーリーは、bbs にて、ロッキー 氏より投稿していただいた作品です。 この作品の著作権は ロッキー 氏にあります。



・総合芸術部

一条真理が4月の勧誘時期に、朝の服装点検の立番でピックアップした成績優秀な美男美女揃いである。各学年のA組が学年を代表する揃いであるように、学校全体の美男美女が部員である。

単純に美女ではなく、ボーイッシュからロリータまで幅広くスカウトされている。同じタイプの子はいない。

スカウト方法は、立番で服装点検を抜き打ちで行い、一人一人懲罰室に連行し、脅し、誘惑、取引など駆使して、「入部」と言うまで解放されないという方法である。

ただし、本人に強い意志を感じた場合には勧誘を諦めている(源小町、木元静江にメイク変えれば化けると勧誘したが諦めている)。美人に見えても、全く興味を示さないこともあり(例:藤原政代、鹿ノ倉高穂など)、独自の基準がある模様。

誰に対しても裏表がない性格なので、部員からの信頼も厚く、また鉄の結束と言われ、就職率は全部の中でトップである。(もともと、上記のように非効率的なスカウト方法なので、少人数制であることも要因)

文化祭での劇の発表を目標としているが、その他にも一条真理が「芸術」であると判断した活動に取り組むため、他の文化系部とバッティングすることもある。(ダンス部などもバッティング)

また、漫画家希望や小説家希望など芸術に関する職業を希望する生徒も、少数ではあるが所属している。(もちろん、女性は美人が最低条件である)

一条真理を頂点とする完全体育会系で、上級生は絶対である。その反面、下級生から質問があった場合には、必ず答えなければならないという謎の規則がある。

・オーケストラ部

高杉敦子の方針で音楽が好きであれば、どんな楽器でも良し。歌を歌うのが好きなだけでも良し。先輩後輩の間でも上下関係なしなど、非常にオープンな部活である。源小町のように、ただ聴きに来るだけという生徒も稀にいる。

音大を目指す生徒には個人レッスンもおこなっており、非常に明るい雰囲気の部である。OBやOGが差し入れをよく持ってくることでも有名。いつかはオーケストラをやりたい模様。



■ 部活動-1 総合芸術部・主務 吉原 沙世 ■

(1)

「おはようございます!」

放送室に入ると、最敬礼で挨拶をします。

「おはようございます!」

先輩達が大きな声で挨拶を返してくれます。部の細かいルールはめっちゃあるので、そのたびに説明しようと思います。寮や校則を足したくらいあります。

どんなに体調が悪かったり、愛想が悪くても良いから、挨拶はしないといけないというルールです。挨拶もできないなら、来なくていいという方針です。

あ、これは別に吉原に対してだけではなく、最上級生だろうが関係なく挨拶はしないといけません。

「吉原」と名前が一人称なのも、こういった芸能関係ではまず名前を覚えてもらえないと駄目、ということだそうです。

放送席の奥の椅子には一条先生が座っています。このとき、挨拶の声が小さかったり、お辞儀の角度が悪かっり、遅刻した場合には、容赦なく鉄拳制裁(お腹に膝蹴り)をしなければならないので、今日は大丈夫なようです。

吉原が一条先生に膝蹴りをするのです。「暴力を振るうのキャラじゃないし、そっちの方が次から気をつけようって思わないかしら?」と仰っていました。

みんな一条先生に膝蹴りなんかしたくありませんので、一生懸命挨拶します。ちなみに、膝蹴りはちゃんとやらないと、出来るまでエンドレスです。


美術の授業中は、この先生授業やる気あるのかな? というくらい無気力で、ほぼ実習だけに近い一条先生ですが、部活の時は鬼です。あ、ちなみにこの「です」「ます」も先輩、後輩なく使います。

こういった芸能の関係では、一秒でも先にデビューしてると0歳児でも先輩になるので、礼儀知らずと思われるのをさけるためです。

一条先生は、この部屋のエアコンが業務用でとても強力なので、しばらくはここでサボることにしたと仰っていました。本当は誰にも見られず劇の脚本ををコツコツ書いてるの、部員は知ってます。

創作作業というのは考える時間が90%以上を占めるそうで、周囲の人から見るとボーッとしているようにしか見えないそうです。

放送室は機材がたくさんあるので、広さの割に強力なエアコンが設置されています。今日はピンクのマニキュアがとてもオシャレです。

でも、アナウンサー志望という自己紹介をしたら、すぐにこの場所を使えるように、野村部長と吉原と一緒にお願いしに行ってくれたので、たぶん吉原が気を使わないように振る舞ってくれてるんだろうなぁと思います。

でも、半分は美術室は広いので、エアコンが調整しにくいというの、あるのかしれません。別に、それでどうとか吉原は思いません。こういう自分に正直な裏表がない人は好きです。

一条先生は、女性たるもの常に足の先から頭の先まで気を使えと仰っています。


「吉原さん、今日もメイク指導するから」

「はい!」

まだハッキリとはしていない、アナウンサーになりたいかもとお話をしたら、地方の局では自分で服を選んだりメイクをするので指導していただけることになったのです。

そして、自分でメイクは禁止だけど人のメイクをしてはいけないとは書いてないという校則違反の裏技を教えてくれました。

メイクは鏡を見て確認が必要なので、しばらくは寮で同部屋の渡辺詩織さん(詩織)と、佐伯遙菜さん(遙菜)で練習するよう指導されています。

二人は私にメイクをしますが、二人にはどんなふうなテーマとか、ここをこういうふうにして欲しいとか、指示を出さないといけないので大変です。

こういう指示も大事なことのようです。短時間で自分の要求を伝えないといけないので、めっちゃ大変です。

特にA組女子は校則やルールを確信犯で破っているので、学校内では「特別真面目で、堅実で、優秀で、美人で、清純で、スタイリッシュで、非の打ち所がない女性」であることを求められます。

好き勝手やってるわけですから、そのくらいの不自由は当たり前だと吉原は思います。クラスメイトもそう思っていると思います。朝、自分達でチェックをして、行進して学校に行くのですが、そのチェック結構厳しいと思います。


男子がかなり協力してこの生活があるので、ペアの男子が「あんなのとペアなの?」と思われないように、一歩自室を出たら、恥じらいを捨てて堂々としようと取り決めています。

中途半端に見えるから恥ずかしいんだ。どうせ剃毛してるんだし、下着いらなくね? ということで、ノーパンノーブラです。

どうせ、もうすぐクールビズです。スカートめくりとか乳首が透けて喜ぶようなレベルの低い男子はA組にはいません。まぁ、いつも寮で見てますからね。

一条先生によると、男子高校生(特にA組男子)の目にある変換ソフトなら、全裸で歩いていると変わらないとのことでした。吉原達の制服は全てオーダーメイドなので、見れば一発でA組女子とわかるのでプレッシャーは大きいです。

話を元に戻しますと、総合芸術部はまるで美男美女の展覧会です。一言に美男美女と言っても、好みがあると思います。不思議な事に、この部には同じ顔の系統の人がいません。ボーイッシュから超童顔まで幅広い顔がいます。

野村部長以外にも芸能の仕事をしている先輩も多く、学校には内緒で、モデル・某人気アイドルグループ・女優・漫画家・小説家・デザイナーなどしている人もいます。

美術部は夏休みは活動がないので、何かしらの希望する職場にインターンとして働きに行くからです。(一条先生は、海外でバカンスをされるそうです。メリハリが重要だそうです)

全員、一条先生が、校門の前でスカウトしました。よくテレビで「芸能界に入ったきっかけは?」と言われて、服装点検で先生に捕まって、懲罰室で勧誘されたといっても信じないと思います。吉原も多分、そんな話信じないと思います。

吉原はオリエンテーションの初日、野宿の場所に連れて行かれて、放水された後で、「ちょっとこっちへ」と言われアレクサンドラ・マイコ(マイコ)とともにスカウトされました。


ちなみに一条先生は、4月毎日と5月初旬、夏休み明けの二週間と登校日に立番をします。夏休み明けは稀に化ける子がいるので、一応チェックしているそうです。もしかしたら同級生が増えるかもしれません。

モデルは読モではなく、ちゃんとしたモデルです。吉原も先輩達に教わりながら、ウォーキングを練習しています。ただモンロー・ウォークの癖がついているので、メッチャ怒られます。

先輩達はみんなオシャレです。同じ制服を着てるのに着こなし方でこんなに変わるんだと驚かされます。

もちろん服装違反なのですが、「芸術の歴史とは反抗の歴史」であるという一条先生の方針で「指導上等! 懲罰室? 遠足気分で行ってやるよ!」という先輩達なので、全く気にしていません。

私のブルマも今度履いてみたいという先輩もいました。懲罰ブルマも、「見たければ見れば?」という人達なので、懲罰が意味をなさず、島田先生と一条先生は犬猿の仲です。

あと、女性を売りにしているいう風に見えるようで、高杉先生とも犬猿の仲だそうです。でも、吉原の知る限り、そんなに仲がお悪いようには見えません。普通なら大人しくしておきなさい、となるのですが、「魅せつけてやりなさい」という方針ですし。

寮のA練にある「実習室」は、一条先生が吉原達部員のためにねじ込んだと先輩から聞きました。確かにあそこなら、ファッションショーのようなことが出来ると思います。

一条先生は今度あそこで、吉原とマイコに演技指導の時はストリップショーをさせようと計画中です。魅せ方の指導を兼ねるそうです。ダイエットが禁止なので、階段ダッシュしようかと思ってます。


ここだけの話ですよ? 誰かの挨拶が小さかったり、誰かがミスするとその日は全裸で活動です。全員が常にチームだという自覚を持つためです。芸術活動は一人では出来ないそうです。

こういった芸術活動はスタンドプレーになりがちなので、過激ですがありなのかなぁと吉原は思っています。

さっきも書いたように、A組が各クラスの精鋭なら、全校生徒から選びぬかれた特殊部隊です。先輩達は「本来A組に入るはず」でしたが、体育祭やクラスマッチのことを考えて、他のクラスに配置された先輩がほとんどです。

当然、美人だからとか、可愛いとか、スタイルがいいとか、女優であるでは、男性陣からの優遇もありません。一切の甘えが許されません。だって、一条先生がどう見ても一番美人で一番聡明です。

聡明というと、あれ? と思う方もいるかもしれませんが、『帝芸』に一般入試で、それも現役で入り主席で卒業した先生です。芸大は「実技」と「学科」試験があります。どちらか駄目なら合格できません。

一条先生は、バイオリンを美術室で週に一度弾いてくれます。吉原は音楽については知識がないのですが、とても艶やかな演奏をされます。「本物の芸術にふれる特別指導」だそうです。

他の先生達には内緒ですが、高杉先生の誕生日には一曲弾いてあげるそうです。

どうして内緒なのかとお伺いしたら、自分は美術教師であり、専門家ではない。本職の高杉先生を差し置いて、楽器を弾けるとアピールするのは失礼。高杉先生がバイオリン奏者が必要と困ったときに、依頼されて初めて、一条先生の出番が来るそうです。


芸術の世界で生きていくならば、『それぞれのプロフェッショナルに、最大限の敬意を』とのことでした。何気に深い言葉だと思いませんか?

吉原はほぼ毎週、総合芸術部が地域の幼稚園や小学校等で行っている、ボランティア演劇会を妹の送り迎えで見て興味を持っていましたが、「スカウトでしか入れない」と天野先輩から聞いていたので、一生懸命勉強して自分なりに自分磨きしてきましたが、こんなの努力のうちには入りませんでした。

オリエンテーションで、中学のとき妹同士が同級生ということで可愛がってもらっていた天野先輩の名前が出てきたときは驚きました。今は、無事、難関大学の経済学部を学ばれてますよ。

ちなみに、野村先輩は留年はされましたが、本来は総合芸術部の部員で、新体操部に臨時部員としてレンタル移籍していたため、3年生扱いです。表現力を高めるための武者修行だったそうです。

3年生として扱われていますが、芸能活動で忙しい中、いらしたときは、吉原と雑用などを積極的にこなされています。「初心忘れるべからず」だそうです。

売れっ子なのに立派だと思うといったら、そういう売れっ子とかは関係ないと、野村先輩に怒られました。「一条先生のように、本物になりたい」と仰っていました。

もっとも、とびきりの聡明な美人とイケメンで成績の良い男子、かつ他の部に入る予定のない生徒なんて、全学年でも数十人しかいないので、先輩も雑用に協力してくれます。


男子の先輩は雑用はしません。そういうのは女子がやった方が将来役に立つからという一条先生の方針です。勧誘のときにもちゃんとその方針は説明されているので、特に誰も気にしていません。

よっぽど忙しい時(文化祭の片付けとか、準備とか)は、総動員してやるらしいので。というよりも、めっちゃ優しい。もちろん指導は厳しいけど、理不尽なしごきとかはないです。

そんな暇はありません。成績を落としたら、部活動自粛と一条先生の「特別指導」が待っています。野村先輩も留年したとき、「過去最大の特別指導」を受けた&した、と双方が仰っていました。

内容は墓場まで持っていかれるそうです。どんな内容だったのでしょうか。

吉原は主務という名の要は「パシリ」ですが、どこの部もそんなもんだと思います。マイコさんと吉原は、新入部員として可愛がってもらっています。要らなくなったりサイズが合わなくなった服、自分で作った服などをくれる先輩もいます。

寮では基本全裸なので、外出の時だけ着ています。マイコさんとトレードしたりもしています。吉原達の冬服は改造すると仰っていました。ハードルは高いほど燃える人が多いです。どんな改造をするのでしょうか。お嫁にはいける体で卒業したいです。

一応、多めに購入しておこうと思います。部活の衣装など、洗濯物をすることもありますが、どうせペアの水野さん(男性もさんづけ)のもするから変わらないです。

ちなみに、水野さんは、強いこだわりがあるようで、パーカーだけは吉原達も洗ったことがありません。一緒に並んで洗います。


男子は雑用は免除とルールで決まっていますが、結城さんは一人だけ自分の洗濯をします。結城さんとはA組でも一緒なので、よく話します。いつも部の洗濯も手伝ってくれます。

「洗濯物なんて、ペアの子にやらせればいいのに」と一度言ったら、「ボク自身が汚れてるから、綺麗にするのが好き。それにあの二人は運動部のエリート。将来、オリンピックだって行くかもしれないよ??」

一瞬寂しそうな顔を浮かべた気がしました。

笑顔を見るのが好き。歌を歌うのが好きなのではなく、歌を歌って、それを聞いた人が喜んでくれるのが好きだそうです。演技も上手だと思います。

「頭もいいしカッコイイし、歌もうまいんだから、俳優さんになれば?」

「それは無理なんだよ。どうしてか。それはまだ言えない。多分、吉原さんにはいつか話すと思うけど、それがいつかはわからないし、もしかしたら永久に来ないかもね」

「将来は何になるの?」

「わかんないなぁ。ただ俺は多分普通の会社では働けないと思うんだ。光り輝くスポットライトを浴びることも無理」

え? と思いました。こんなにスポットライトが似合う人を、吉原は一条先生以外に他に知りません。


「だから、ボクが設計図を書いて、みんなにそれをやってもらうしかないかなぁ」

「脚本家とか?」

「名前が出るのはダメなんだよ。嘘じゃなくて、まだ本当に決めてないんだよ。演じるのも好きだし、お金も好きだから、なりたいものはあったけどボツになっちゃったし、卒業したら旅人にでもなるかもね」

「一条先生は知ってるの?」

「俺は正直に生きたいと思ってる。裏切ったりとかも嫌いだ。それでも聞きたい?」

「うーん。聞いてみたい」

「(耳元で)理事長と西郷先生と一条先生だけが知ってる」

「知ってるって何を?」

「だから、ボクがこんなに困ってる理由だよ。本当は言っちゃいけなかったんだけど、一条先生のスカウトしつこいだろう? 歌が好きで、人の幸せを願ってて、お勉強ができて、ルックスも良くて運動神経もいい。そんな人間がどうして入部しないのか。

聞くまでは今晩は寝かさないって言って、オリエンテーションの初日の夜と二日目の夜は、ボクはズーッと狭い特別懲罰室にいたんだから。たぶん、警察の尋問って、あんなぁかんじなんだろうな。こっちが話さないと、ズーッとの俺の目を見て黙ってるんだぜ。微動だにせず」

「たぶんそれ、目を開けて寝てたんじゃない? よく実習にして寝てるって先輩達が言ってたよ」

「今思えば、多分ね。ただ初対面でそれやられてもわかんないだろう? 仕方ないから理由を話した。あれは、しごきだよ。おかげでボクは1年の男子達から、オリエンテーション初日から二日も連続で特別懲罰を受けたヒーローだよ。何にもやってないのに、ひどいよな」

ここまで隠すのだから、吉原が追求するのはマナー違反だと思いました。いつか話してくれると良いなぁと思いますが、総合芸術部で鍛えて、どんな告白が来ても良いようにしておこうと思います。


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