投稿作品集 > 体育教師奈津子 番外編 第2章 p.15

このストーリーは、bbs にて、ロッキー 氏より投稿していただいた作品です。 この作品の著作権は ロッキー 氏にあります。



■ それぞれの新学期-2 1-A社会科担当 平賀 純 ■

(1)

入学式から二週間、ついにこの日が来てしまいました。昨日は緊張してほとんど眠れませんでした。1年A組の授業です。

というよりも、先週から、「夜、すごくうなされてるよ」と夫に言われています。校内の設備説明など色々なレクチャーが一週間あり、私は今日から正式な授業です。

なんで私(わたくし)がこのクラスの社会科なんですかねぇ……。特別進学クラスなんて、私には荷が重すぎます。廊下に鏡があったので服装を確認しておきます。

小さなメガネを掛けています。裸眼でも生活には支障はないのですが、こっちの方が若く見えると、夫に言われたのでつけてます。あまり自画自賛するのは気が引けるので、夫や卒業生たちの評価を箇条書きにします。

・腰まである長い黒髪は結ってある。
・細面の美顔、顔立ちは綺麗に整っている。
・身体のラインは引き締まっていて胸は大きい。
・いかにも落ち着いた雰囲気だけど、どこか危うい印象がある。
・声は人を安心させる柔らかい声。
・ムチッとした長い脚。
・細身なのに、不似合いな豊満なFカップの胸。(着やすせするタイプです)

沈んだ気持ちでA組の教室のドアを開けます。ドアが重いです。


「起立! 礼!」

ピッタリの赤い首輪をつけた吉原沙世さんが号令をかけます。他の女子は黒い首輪をつけています。なんでも、A組女子の制服だけが他のクラスよりも、とびきりスタイリッシュな制服だそうです。

真桑理事長の気まぐれにも困ったものです。他のクラスの生徒がうらやましがるレベルで、自分ももっと勉強しておけばよかったと言っていました。

「モデルばりにスタイルの良いA組女子だから、あれがセクシーでスタイリッシュに見えるけど、私が着たらただの変態」という声もありました。

カッターシャツって言ってますけど、スケスケのキャミソールの丈をお臍まで短くしたようしか見えません。袖はなく、脇の下は完全にくり抜かれています。

胸の部分も乳首以外ほぼ見えてます。ブラジャーが禁止されている子は、ピンクの乳首が透けてます。でも、あまりに堂々としているので、そういうもんなのかぁと年配の私でさえ思うので不思議です。もちろん、胸当てはあてていません。

丈は下乳5cmくらい。陸上の選手が競技のときに着てるやつのお腹まる出しのに似ています。お腹には黒い太マジックで名前と番号が書いてありますが、ファッションタトゥーと言われれば、まぁ見えなくはない感じです。

筆記体で格好良く書くというのは良いアイデアだと思います。校則で漢字で書くなんて定めてません。両肩と首筋にも数字が書かれていますが、数字もスタイリッシュにしてあります。


ロッカーにかかっているジャケットも、胸元が完全に繰り抜かれていて、谷間どころ胸の盛り上がりがハッキリ見えることでしょう。色も商売の女性が着るような、派手なピンク色です。丈も短く、カッターと同じ長さです。

袖はありません。ワイルドだろぉとかやりそうな感じです(女子はロッカーのドアがない。なぜなら、閉める必要がないから)。ピッチリしているので、胸の形もハッキリわかります。

背中もほとんどスケスケでビニールみたいですが、最新ファッションといわれて、ううんという感じです。確かに、このクラス以外ではできない服装だと思います。

スカートはチェックのマイクロミニスカートです。股下2cmくらいでしょうか。この子達下着つけてないような気がします。確かに中途半端に見えるから恥ずかしいのであって、穿かなければいいというのは逆転の発想ですね。靴は10cmの赤いハイヒールです。

業者は相当しごかれたんでしょうねぇ。体操服もブルマですが、変わったハイレグブルマだと聞きました。

『確かに恥ずかしいけど、あれなら来年の受験生が頑張って合格しよう』、また在校生も『来年のクラス分けテストではがんばろう』と女子が思うレベルだそうです。

私の時代には考えられないようなブルマなのですが、最近の若者は積極的なんだなぁと遠目で見てます。どう見ても細い細い褌にしか見えないのですが、A組のスタイルの良い子達が着ていると、「最新トレンド」になるそうです。

ビキニよりも細いです。お尻は丸出し、見せちゃいけないアソコなんて、ちょっと動いただけで見えてしまいます。ひょっとしたら動かなくても、気をつけしただけで見えているかもしれません。

サポーターショーツも履いていませんでした。というよりも、小さすぎて無いそうです。股間は常にツルツルに剃りあげていて、島田先生が逆に目のやり場に困ったと言っていました。なんで、教員側がしごかれてるんですか。

上もほぼ乳首だけが隠れたビキニのような感じです。背中も丸出しです。A組だってわかるから良いんでしょうけど。当然、こちらも全部オーダーメイドです。クラス委員の吉原さんは、すぐわかるように白いブルマを着用していました。


長年の経験から、女子全体にトラブルメーカー臭がプンプン感じます。私はてっきり、社会はスーパーエリートの湯川先生が担当してくれると思っていました。

A組女子は誰一人瞬き一つせず、私を凝視してます。「見るなら見れば? 先生には着れないでしょ? 着る勇気ある?」と挑発しているかのようです。ジーっと凝視するので、怖いので目をそらしたいです。

そうだ。最初に、私の簡単な自己紹介をしてみましょう。黒板に名前を書きます。ガリガリと鉛筆の音がします。こんなのメモする必要ないのになぁと思うのですが……。

もの凄いプレッシャーを感じます。どうして私がいきなり、初対面の生徒達からこんなにしごかれないといけないんでしょうか。この短期間でなにがあったんですか。

他の担当の先生達が授業後、あしたのジョーみたいになっていたので、「何があったんですか?」と聞いたら、「物凄いプレシャーだった。流石は選りすぐりエリート候補生です」と仰っていました。

私は真桑理事長率いるエンジェルズのメンバーの一人です。とはいえ、私は家柄も普通、中学から大学も普通の国立。大学で教職を取得。

就職先も一度、一般企業に就職しましたが、それも特に特徴の無い会社で、どこにでもある会社でした。特に暴力上司もおらず、セクハラもなく、なんとかぼんやりとすごし、なんとなくやめて教師になりました。

最初に赴任した私立高校で、夫と出会い職場結婚しました。同じ高校では働きにくいということで、この高校に来ました。いつ来たか? はて、もう忘れましたねぇ。

年齢? 女性に年齢を聞いてませんよ。美魔女ってことにしておいてください。永遠の33歳で、毎年若がえります。ね、普通でしょ。ドラマとかなら、翌週から別の人物に変わってても誰も気が付かない役です。

私のたった一つのポイントいえば、夫が真桑理事長の大学のときの先輩で、ギフテッドってことくらいでしょうか。

真桑理事長の昔話はしませんよ。殿方の秘密を告げ口みたいなことは、するつもりはありません。夫との馴れ初め、その他プライベートな質問も一切NGです。


(2)

「校則に、英語の授業以外での英語は一切禁止とあるのは、私のためのルールです。私ができない英語を覚えるより、みなさんが日本語に変換して喋っていただいたほうが早いのです。

そして、みなさんは自分が思ってるより遥かに優秀です。私には難しいこともたくさんご存知でしょう。ですから、私に話す時は赤ちゃんに説明するように、わかりやすく三行で説明してください。ただし失礼は許しません」

ガリガリガリガリというノートを書く音。視線は一切そらさず、ブラインドでノートを書いています。もちろん、女子は全員笑顔です。

「私は授業中、一切当てません。どうせ部活の先輩から聞くので、先に言っておきます。私は教師生活ん十年の経験で、過去に二度授業中、女子生徒に対し本気の土下座をしたことがあります」

このカミングアウトには、流石にちょっと変わりました。ほんの一瞬ですが。

「一度目。メソポタミア文明について、今2年生のとある女子生徒に知っていることを言ってくださいとお伺いしました。その方はとても優秀だと評判の方でした。地球誕生から四時間連続、つまりほぼ一週間、私の授業はジャックされてしまいました。

四時間目のとき、恐竜絶滅の説明でチャイムが鳴りました。『まだ、たりない。来週もやる』と仰られまして、「もう許してくれ。私が悪かった」と土下座いたしました」

佐伯遙菜と新垣希が、顔を見合わせて笑うのをこらえています。


「二度目。和同開珎について説明しておりまして、別のとある女子の方を当てました。ええ、貨幣の歴史を古代ローマからご説明いただきまして、こちらも二時間熱心な解説でしたので、土下座致しました」

ええ、源さんと藤原さんです。

「このように私は、A組とくに女子の授業に軽いトラウマを持っております。皆さんからみれば、情けない虫ケラ以下です。おそらく卒業後思い出も残らないでしょう。思い出は等しいレベルでしか成立しませんから。だから、今いる時間を大切にしてください。こんな優秀な人達が集められたA組であることを誇りに思ってください」

最初からありのままを伝えておいたほうがいいのです。特に女子には……。あとから知ってイメージダウンするより、遥かにマシです。

「校則を厳守。拡大も縮小もしません。書いてあるままで判断します。何故なら、口喧嘩をしても勝てないのは分かっているからです。ただのマニュアル人間だと思ってください」

一番前の吉原さんの手が、ピタッと一瞬止まり、「平賀先生、マニュアル人間」と書いています。

「しかし、多くの人はそうで、みなさんは天才です。しかし、多くの凡人に支えられて社会が成り立っていることを知ってください。どんなに天才で社会から必要とされいても、今は生徒と先生の関係です。だから、私は学校でものすごく威張ります。特に女子、若さへの嫉妬に溢れています。隙を見せないでください」

吉原さん、こんなことまでメモしなくて良いんですよ。


「そして、私を通じて、普通の人の痛みや不安だったりを知って、愛されるエリートであってください。もう一度言います。私は若さ、美貌、優秀さなどに嫉妬する完全な老害で女の敵です。

つまりA組女子は、教師としての権力を利用していたぶる絶好のカモということです。そして、みなさんの輝かしい人生に、一点のシミをどうやってつけてやろうかということを楽しみに、みなさんの授業をお引き受けしました。

私はみなさん、特に女子の人生を一年遅らせることになんの躊躇もありません。むしろ、積極的に遅らせて、学期末に床に這いつくばらせたいとすら思っています」

だから、吉原さん、こういうのメモしなくていいですよ。

「それでは、私の美人イビリ披露するために……。そこのあなた、渡辺さん? 筆箱を持ってきてください。あと鞄も」

鞄はスケルトン仕様で、生理用品などを入れていたら一瞬でわかるシロモノです。しかし、ここはわざと、教卓の上にぶちまけてみました。

「じゃぁ、一つ一つ確認してみましょう。まず、鉛筆が尖ってないです! 常にピンピンにしておくように! 懲罰3ポイント」

そりゃぁ、五時間目ですからねぇ。

「そして、歩くときモンローウォークのお尻の振り小さかったです。懲罰3ポイント。あら、もう懲罰じゃない。今日は軽めで許してあげます。上着を脱ぎなさい。あら、ペンシルテスト駄目だったの? 大きいのにね。ペアの男子にしっかり揉んでもらいなさい」

ちょっと強張った表情を浮かべています。


「返事がない。懲罰3ポイント」

「はい!」

「先生! 質問があります!」

佐伯さんが手を上げている。

「何ですか?」

「複数出しは禁止とオリエンテーションで説明を受けました」

「これは複数出しには当たりません。鉛筆と歩き方、別件です。他の先生がどう解釈されているかは、存じ上げませんがこれが本来です」

気をつけの姿勢で黙ってしまいました。

「教員に質問して回答がない、懲罰3ポイント! あと質問の前にさされたことに返事がありませんでした。懲罰3ポイント。ああ、言い忘れてました。このノートの入力された情報は自動的に送られていて、合計点は表示されいますが、私は言いませんので、優秀なみなさんは正直に行動してください。

まず上を脱ぎ、そのあと下を脱ぐ。それでも足りない時は、教卓の横で、マテの姿勢で立ってください」

「はい!」


おお、吉原さん優秀ですね。でも残念です。私はそれが容赦する人間ではないのです。慌てて他の女子も返事をしてますが、もう遅いです。

「返事が揃ってない! 全員懲罰ポイント3ポイント!」

何人かの女子が立ち上がって、上着を脱ぎ始めました。ちゃんと正座していたので、脚がしびれているようです。

「凡人の嫉妬を甘く見ないように。このように、あっという間に恥ずかしい特別懲罰になりますから」

私は前を向きながら、ノールックで渡辺さんの乳首を抓ります。まぁ、これも長い教師生活で培った技です。夫と話をしながら、ガスコンロをひねっていて思いつきました。乳首抓りって、いきなりきたらどうなるんだろうって。

ちなみに私は、小さい頃から薙刀をやっておりまして、反射神経とかは唯一の取り柄と言っても過言ではありません。思いっきりつねってやりました。不意をつかれた渡辺さん、ちょっと涙目です。

「ご指導ありがとうございました……」

でも、ちゃんとお礼がいえました。まぁ、声が小さいから、懲罰3ポイントですけどね。


「この時間に獲得したポイント×10、お尻叩きをします。私には、ポイント調整とかグレーゾーンなどは存在しないということを知ってください。あ、ポイントって英語で良いの? と思った人、全員懲罰3ポイント!

先生と生徒は同じではありません。私の世界では、私を頂点取る絶対専制君主制の一議会一院制一議席です。裁判も弁護士、検事、証人、裁判官、一切居ません。即、死刑です。民主主義や公正な判定など存在しません。みなさんは私の授業を経験し、無能が権力を持つとどういうことになるかを知ってください」

さすが優秀なA組です。女子が全員立ち上がって、全裸になりました。どう思っているのかなんて私にはわからないのに、正直な子たちです。やはり、下着は誰もつけていないようです。みんなで励まし合っているのかもしれません。

「クラス委員! 開始三分でこのザマということはどういうことですか!」

「申し訳ありません! 代表して、私に気合を入れてください!」

言い終わる前に、頬をハイキックで蹴ってやりました。後ろの女子のみかん箱(机)に突っ込みましたが、すぐに立ち上がりました。

「ありがとうございました!!」

ちょっと赤くなってますが、まぁこんなもんでしょう。だって私、凡人ですからそんな調整できないですもん。しごかれたって、私には調整なんて無理ですよ。


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