投稿作品集 > 体育教師奈津子 番外編 第1章 p.20

このストーリーは、bbs にて、ロッキー 氏より投稿していただいた作品です。 この作品の著作権は ロッキー 氏にあります。



■ 文化祭-1 女子バレーボール部 真田 優子 ■

壇上では鹿ノ倉先輩が全裸で立たされています。先輩とは全く接点がないので詳しいことは知りません。

「よぉ、ノッポ」

振り返ると毛利くんが立っていました。

「あの可愛い子誰だっけ?」

「鹿ノ倉先輩のこと?」

ドイツから編入してきて一週間ですが、物凄くスケベだということが既に知れ渡っています。

「それは真ん中の人でしょ?」

「あれ、他の二人は同じクラスですけど……」

「居た? あんな腰まで伸びた綺麗な黒髪のストレートヘアの子。目立つと思うんだけどなぁ」

「藤原さんだよ。授業あんまり居ないからかも、あの子ほら気まぐれに授業でてるから」

まずいです。この二人は並んだら美男美女。お似合いです。ええ。もう手が出せなくなります。


「説明してる子って、あの噂の変わり者?」
「ああ、MITだかハーバード出てるのにうちにきたお嬢様だよ」
「頭いいのに、結構可愛いよな」
「バカ、あの子は止めとけって。渋谷で声をかけたホストが、次の日の朝、東京湾で死んでたらしいぜ。顔はもうボコボコだったらしい」
「その噂、俺も聞いた。コンビニで絡んだ不良の家にヤクザ御一行が来たとか」

近くの生徒達が資料を手に談笑しています。

「どこまで本当なの? ていうか、日本の高校って凄いんだね」

この学校が特殊なのでスタンダードだとは思わないほうが良いと思うのです。

「美術部もなんかマン拓の掲示とかしてるし、新聞部は巨乳ランキングと凄いよね」

毛利くんがヨダレをしぐさをします。

「まぁ、これはエッチなことじゃなくて、科学的な実験だから……。最初はウチラも誤解してて、鹿ノ倉先輩とも色々あったんだけど……‥」

「色々って?」

「いや、だからその、見せたがってるっ的な。喜んでるんじゃないか的な? 露出症なんじゃないか的な?」

へぇぇと言いながら、資料をめくっている。真剣に見ている横顔は、やっぱりカッコイイです。


「鹿ノ倉高穂……、高校3年生です。バスト88cmCカップ、ウエスト57cm、ヒップ91cm、陰核直径9mm、長さ14mm、大陰唇の長さ8cm、幅5cm、深さ15cm、肛門の皺21本、陰裂長12cm……小陰唇幅1cm……」

「ノッポはなんでここにいるわけ? やっぱ興味あるの?」

「まぁ、体のことなんで……」

スクリーンには体育祭のマスゲームの動画が流れています。鹿ノ倉先輩が、猫が伸びをするようなポーズで腰を突き出していく。

「ノッポもこれやったの? マジ、編入する時期、間違えた! もっと早くすればよかった。親父が手続きミスんなきゃぁ」

チッと舌打ちし、指を鳴らす。本当に悔しそうです。

「マスゲームは3年生だけで~す。私達は二人羽織と片足ロープ相撲やったよ。ペア組んで」

ちょっと、お気に召さなかったようです。

「少なくとも、あと二回はマスゲーム見れるわけね。来年、どうするの? 野村先輩留年するし、谷間の世代じゃね」

2年のバレー部の先輩が睨んでるので、その話題止めてもらっていいですか?


「野村先輩とか、なんで知ってるかって? ああ、よくわかんないけど、留年するからっていうんで生徒会入ってって言われたから」

神木新会長はバトン部の新設を決定したり、色々革新派のようなので、また何か考えているのかもしれません。

「2年はなんかやるの?」

「ぐるぐるバットとか?」

ハァとちょっとキレ気味です。

「いたいけな青少年の夢をぶち壊しやがって! フラフープとか絶対やらせるからな!」

「それでは、性感帯の確認のため、希望の者の方に触って確認していただこうと思うですが、どなたか希望者の……」

言い終わるより早く、毛利君や男子が手を上げました。



■ 文化祭-2 3年A組 鹿ノ倉 高穂 ■

(1)

「最後の総仕上げだから、頑張って欲しい」

始まる前に小町様はそう仰っていました。

「私も盛り上げるために、あえてこういう演出にしてますから」

藤原政代はいつか地獄に落ちろと思ってます。彼女は完全に趣味で楽しんでいます。

島田先生の場合は、是か非かは別として、教師としての信念から私を指導してくれています。私ほどではないですが、多くの3年生女子が指導を受けましたが、受験のプレッシャーや圧迫面接やセクハラまがいな面接に打ち勝つ強い精神力を身につけることが出来ました。私達が思っている以上に、私達は守られていたのです。

だから、私の名誉を回復するためとはいえ、島田先生が落ち込んでしまったときは本当に心配しました。全校生徒の前で恥をかいた私にしか励ませないと思ったので、島田先生が校門の立番の日にわざと違反下着をつけていったこともありました。

でも、島田先生は、なかなか懲罰室行きを命ずることが出来ませんでした。「気合をいれてください!」と何度もお願いしても、なかなか懲罰室行きを命じないのを見かねた三井先生から、七回連続で違反したところで懲罰室行きを命じられました。

体のあらゆるサイズの情報、剃毛の時の様子、どう思ったかなどを打ち合わせ通り答えます。

「キチンと答えないと数学の単位出さないよ? もう部員じゃないからあんまり強くは言えないけど」

真桑理事長は、人気女優の野村愛花さんに数学の単位を出さないと通告し留年させた張本人です。私も推薦で大学が決まっているのですが、単位を落としてしまっては意味がなくなってしまいます。

島田先生との「絶対、偉くなろう。そのためにはどんな屈辱も耐えよう。辛くなったら同じ空の下にいるお互いを思い出そう」という約束も守らなければなりません。古臭いですけど、指切りしました。


(2)

懲罰室では色々な話をしました。島田先生とあんなに話したのは初めてでした。いつも怒られるばかりだったので。

実は島田先生のスランプが長かったのは、この留年騒動も一つの原因でした。野村愛花さんは人気女優ですから、当然、保護者やマネージャの方はもちろん、事務所から依頼されたトラブルを解決するプロフェッショナルの方達が多数いらっしゃいました。

オフィシャルな方もアンオフィシャルな方も交代でいらっしゃったそうです。担任の西郷先生と真桑理事長が対応されたのですが、島田先生も将来の勉強の名目で同席をさせられたそうなのです。

その場では、凄まじい暴言や脅迫としか思えないような発言も飛びしたそうです。二人は冷静に、真摯に、毅然とした態度で一つ一つ学校の方針とご本人の意志を説明されたそうです。

真桑理事長はどちらかというと売られた喧嘩は必ず買って、どんな手を使ってでも勝利するタイプだと思っていた島田先生はとても怖かったそうです。(私も、失礼ながら、そう思っていました)

しかし、毅然とした態度で説明を繰り返すお二人を見て、自分は何を見ていたのだろうとわずかに奮い立っていた気力も萎えてしまったそうです。

さらに、自分がもし将来そういう立場になったとき、冷静に話ができるのか不安になったとも仰っていました。島田先生は、自分のやり方が本当に正しいのか、わからなくなったと仰っていました。


「私が先生のやり方を証明してみせます! 男を利用してでも必ずのし上がってみせます」と宣言すると、先生は少し驚いた様子でした。

それからは、とりとめのない話をしました。お互いの将来の夢だったり、4月からのお互いどう感じていたかを話したり、ガールズトークなので詳細は内緒です。

私が小町様の側にいたいので、如月杏奈さんという小町様のお父様の会社の幹部候補の方の秘書のお仕事をインターンという名目で紹介していただいたこと。この方は産休に入られるそうで、私はまずは学業を優先する形で、会社と如月さん繋ぐアルバイトの雑巾がけからスタートすること。

挨拶にお伺いしたら、その日に、素手でトイレ掃除をさせられたこと。厳しい人だけど、私のことを気にってくれていて、もし四年間勤め上げれば卒業後は秘書として雇っていただけることをお話しました。どこかで聞いたことがある名前だと仰っていましたが、今は思い出せないとのでした。

もし偉くなって理事会などに呼ばれたら先生を校長にしてくれと仰ったので、「それなら、先生も教師を続けていてくれないと困りますね」と言ったら、「ちょっと元気が出てきた」と笑って仰っていました。

「私もさっき言ったように、真桑先生を利用して校長など上を狙いたかったけど、その器ではないのかもしれない」

いつもの先生の見る影もありませんでした。やはりすぐには回復しないのです。ゲームや小説ではありませんから。


それから、昔話をしてくれました。新任の島田先生は、一浪と就職のために大学のとき留年をしていたそうです。体育の先生というのは、よほどのことがない限り異動もしないので、ポストが空かなかったからそうです。

そんな先生でしたから、非常勤講師として前の学校に採用が決まった時は本当にうれしかったと、非常勤講師は一年ごとの契約なので不安定なのですが、それよりも念願の教師になれたことがうれしかったといいます。

そして、そこで生徒指導に取り組み成果が出始めた頃、来年度の契約はしない、と通達がありました。先生は前の学校の指導教員が手柄を全て自分のものとして報告していたことを、そのとき初めて知ったそうです。

信頼している指導教員だったのでとてもショックだったそうです。これからどうしたら良いんだろうと先生は迷ったそうです。そんなとき、ふと学生時代はあまり仲は良くなかった、むしろ、当時の島田先生は、正義感が強く純真無垢だったこともあり、若い頃はもっと絶対管理主義で厳しかった松任先生の顔が浮かんだそうです。

激しく反発する関係だったそうです。ちょうど、今の島田先生と私のような関係だったと笑いながら言っていました。

教育実習の時も熱心に指導はしてくれたのですが、『あの松任先生が昔、体育教師の免許も持っていて教えていた』という事実に驚きましたが、そこはまぁ乗り越えてくれと。学生時代の反発の負い目もあり、島田先生から積極的に関わることは無かったそうです。

松任先生に相談して引導を渡されたら、教師はもう諦めようと思ったそうです。久しぶりにあった松任先生は、穏やかに、親身になって話を聞いてくれたそうです。

そして『この学校の体育教師の正規雇用として理事会に推薦するので面接を受けなさい。それまで気持ちを切らさないように』と言われたときは、人目をはばからず泣いてしまったそうです。

自分も将来こんな風になりたい。例え在学中は伝わらなかったとしても、将来困ったときに手を差し伸べられるような立派な先生になろうと思ったそうです。

赴任してからは、正規の体育教師としてだけなく、新米教師としてこき使われたり、年下の一条先生からしごかれるのもそういうもんだと思っていたそうです。(一浪した先生は、体育大学でチアリーディング部をしていたバリバリの体育会系なので、年下の先輩というのがいらっしゃったそうです)

半年後に色々あって、真桑理事長から自分のチームに加わり右腕になってほしいと言われたときに本当にうれしかったと。もちろん、真桑理事長を利用して出世しようと思っていたのもあるけれど、初めて教師として認められた気がしたそうです。運命共同体という言葉にも惹かれたといいます。


(3)

真桑理事長の下で働くのはとても大変で、ミスをすれば懲罰されたそうです。しかし、ミスをしたら罰を受けるのは当たり前で、上手にできたときは「流石です」と笑顔で褒めてもくれたり、充実していたそうです。

罰として、毎日、陰毛を完全に剃ってくるように指導をされたこともあったそうです。お風呂に入って体を洗い、毛を剃るたびに「こんなことではダメだ! もっとしっかりやらないと!」とファイトが湧いてきたそうです。

しかし、1年A組の事件以来、もう毛を剃らなくていいです、と言われたそうで、理由を尋ねると「もう充分です。反省したでしょ?」と言われ、それ以上のことは何も仰らなかったそうです。

それ以降、小さなミスや大きなミスをしても一切懲罰をされていないそうです。懲罰する価値もない存在なんだ。大したこともないことで大手柄かのようにチーム(エンジェルズと仰っていました)の先生が褒めるようになったそうです。

『自分はみんなからもう見限られた……』

私が聞いた限りでは、島田先生は明らかに調子を崩しており、それを回復させるためにあえて褒めていると感じたのですが、島田先生にとっては、しごきは期待するからする。当然、期待を裏切ったから懲罰を受けるという構図なのです。

「私は恋人もいなければ、みんなライバルだと思ってやってきたので親しい友人も居ない。これはどうすれば良いのかしら?」

20代後半の女性のキャリアウーマンにとってかなりナーバスな問題です。結論からいうと、先生は教師としても女性としても不安になっているということがわかりました。


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