投稿作品集 > 体育教師奈津子 番外編 第1章 p.12

このストーリーは、bbs にて、ロッキー 氏より投稿していただいた作品です。 この作品の著作権は ロッキー 氏にあります。



■ 安心してください! 科学部です!-3 1年A組 藤原 政代 ■

私達は準備室から持ってきたホワイトボートの前に椅子を持ってくる。

「それでは、これから『安心してください! 科学部です!』の説明を行います」

またYouTubeでなにかお笑い動画を見つけたのかな? ついこの前まで、「今でしょ」にハマってたよね。

「あの、小町さん取材の話じゃなかったの?? 何その安心?」

小町は無視して、ホワイトボードに作戦名をかいている。日にちとメンバー。たぶん議事録のつもりなんだな。

目的:鹿ノ倉副会長の名誉回復など。
日時:今度の体育の時間。(三日後)
背景:科学部で不思議な実験を行っている。科学部への理解不足・PR不足・悪い噂。

「私達って、なんでここに連れてこられたんですか? ええっと生徒会の人ですよね?」
「いや、私達もまだ説明されなくて……」

現状:鹿ノ倉副会長は変態? 露出狂?
理由:いつもハイレグブルマを穿いて露出している。いろいろな実験に参加している。

小町さん? あの我々、凡人にもご説明をいただけませんかね? 私にすら、まだよくわかっていないのですが。新聞部の部長は、ほぉほぉと頷きながら、メモをとっている。え? わかるの? マジで?


解決方法:
1.生徒からの、科学部の評価を上げる。(新聞部)
2.科学部の実験や特訓は、医学的・科学的になんら問題がないと説明する。(新聞部)
3.いやらしく見えるのは、心にいやらしい心があるからと知ってもらう。
4.鹿ノ倉副会長は立派。
5.文化祭で研究発表。
6.こんなに貢献したなら推薦も当たり前。

今後のために:
1.裏サイトを改良する。科学部HPへリニューアル→新聞部興味を持った設定。
2.島田先生の機嫌をとっておく。

「やらせ記事のよいしょなんて、新聞部はしませんよ」

でたよ。ジャーナリズム宣言だよ。空気読めよなぁ。話長くなるだろう。

「問題無いです。そういう人物だから選びました。お二人には、目に写ったものを、客観的に感じたことを、事実に基づいて書いてもらって問題無いです」

ほらぁ~。木元静江はおろおろしている。私と鳴海聖子は何をすればいいんだろうか。

「HPリニューアルだけでは記事として弱いですねぇ。それで新聞部が動くのは不自然です」

部長さん、結構さっきから楽しそうじゃない? あんまり、友達居ないのかな。


「最初の記事は公式である必要はありません。一日で全部剥がしますから。ハンコなどは、似たようなハンコを政代ちゃんにPCで作ってもらえます」

バナーの要領で良いのかな?

「偽造ですが……、私、まだ部長なんですがねぇ」

部長さんは渋い顔。

「原点回帰だと思ってください。新聞の起源である瓦版は、個人が速報性のあるニュースを人々に知らせるためにありました。幕府の許可などはありませんでした。使うのは一度だけです」

「検閲のハンコを偽造してまで伝えたい速報性のあるニュースとは?」

「裏サイトはすべて実験だった。アクセス情報は当局に送られたらしい。鹿ノ倉副会長は校内にいる変態を、鳴海ちゃんは過激な思想の持ち主を、一網打尽にするため潜入捜査をしていた。アップされた画像には特殊な軍事用に開発されたコードが入っており、ネットを通じて全て記録されていた。主導したのは科学部と理事会。でどうでしょう?」

「理事会?」

「権力の監視は、新聞の役割でしょう?」

「しかし、理事会というのは……」

「そうですよね。学生新聞ですもんね。お遊びですもんね。プランを変えましょう」

小町がホワイトボードを消そうとする。


「私は自分なりに、この三年間、真剣に取り組んできました」

「先輩、ちょうど引退の時期です良いね? 巨大権力に立ち向かって勇退するレジェンドになってみませんか?」

なるほど、引退を勇退に変えるわけか。確かに、これなら悪い話ではない。

「一枚目は、生徒達の目の前で全部はがされるまでがセットです。まずは、一枚目の記事を書いてください。二枚目はそれが出来てからお話します」

「一つ質問があります。新聞部に迷惑は掛かりませんか?」

「鹿ノ倉副会長は誰も傷つけないことを望んでいます。そして、真桑理事長は必ずこの件を不問にします。全てが終わったら単独インタビューがとれますよ」

不問にする理由は、第二・第三の矢があって辻褄が合わなくなることを恐れてだと思う。でも全部が終われば懲罰になると思うし、そもそも一回だけ偽造する理由は? と聞こうと思ったけど、今日ははやく帰って見たいテレビがあるので止めた。



■ 安心してください! 科学部です!-4 体育科教師 島田 奈津子 ■

(1)

絶好のマラソン日和だ。体育教師が一人減ったこともあり、最近のんびりする機会が少なかったが、体育祭の後処理も終わり少し余裕ができてきた。

真桑理事長から、下着等を一切禁止されているので下半身がスースーする。これから冬になるのに、ちょっと心配ね。

白いジャージのサイズはオーダーメイドだから、近くで見れば食い込んで性器の形まではっきりわかる。後ろから見れば、お尻の割れ目も、下着をつけていないことも、はっきりわかるはずだ。

あくまでジャージということなので、ブルマのようにゴムなどがなく、Tバックの陰核を最小限に隠すだけのサイズにしたものといった方が早い。

長さもジャージとは異なり、ホットパンツよりも短くなっており、股下の部分は性器が隠れるか隠れないかというギリギリまでくり抜かれた代物だ。

通常の褌よりもかなり細い、陰核しか隠れない幅の生地の白い褌とどちらが良いか選ばされてこちらにした。そんなものを身につけて、体育の授業をできるはずがない。しかも、白いのでシミが目立つのである。

上もブラジャーの使用は許されておらず、Tシャツもかなり小さいサイズで、下乳どころか乳首の3分の1が隠れているかどうか。腕の部分もカッティングされており、タンクトップより短く、脇の下は繰り抜かれている。

背中と肩はビキニの背中のように、細い細い紐状になっているだけで、気持ち程度しかない。勤務態度によっては、夏は熱中症対策のため、もっと露出の大きい服にすると言われている。

真桑理事長いわく、生徒と同じ目線に立つことで、より効果的な指導やしごきができるようになるらしい。


女子生徒達がグランドをゆっくり走っている。

最近、生徒達から(特に女子生徒)に舐められている気がするのだ。女子の中には、私を真桑理事長のパシリであると陰口を叩いている者もいる。廊下で聞こえよがしに雑談しているのを聞いたときは屈辱だった。

しかし、こんな服装で授業や校門での立番をしていて、敬意を払えというのが無理だろう。この辺りで、私の恐ろしさを今一度叩き込んでおく必要がありそうね。

このクラスには、源小町と藤原政代がいる。藤原政代はぶっちぎりで最前線を走っている。ちんたら走っている大勢のクラスメートに半周分以上差をつけている。ウォーミングアップでこんなに走って大丈夫なのかというスピードだ。

誤解されがちだが藤原政代のことは嫌いではない。あの位天真爛漫な方が可愛らしいとさえ思うことがある。おそらく、私が学生時代もあんな感じだったんだろうなと思う。あそこまで成績は良くなかったけど。

ところで藤原政代は何故、ハイレグブルマを履いているのだろうか。伸びて透けない生地はそのままだが、改良前の小さいサイズである。

一方の、源小町は最後尾を走っている女子の背中を押している。運動が得意でない女子がいるのは承知している。できるのにやらないのが腹が立つのだ。

公然と懲罰を課すことは禁止だが、多少のしごきなら問題無いだろう。ちなみに彼女のブルマはもとのままだ。


(2)

「全員ちょっと来なさい!」

「「「はぁ~い」」」

たらたらしやがって、今に見てなさい。

「あなたたち、最近たるんでるじゃないの? 体育祭が終わったからって気を抜いてるんじゃないわよ」

「何をモチベーションにすればいいでしょうか?」

またおまえか、源小町!!! 屁理屈ばかり言って生意気ね。この腐ったみかんが!!! 気のせいか、他の女子達はニヤニヤ笑っているような気がする。

「理事長に言いつけんの?」と言っているような気がする。それに、以前なら気をつけの姿勢だったのに、今は休めどころか腕組みをしている女子もいる。

ここで、教師としての威厳を取り戻さねば! 三年間舐められる! 一クラス掌握できなければ、次々と反乱を起こすことは目に見えている。女子のネットワークはそれほど発達している。


「あなたバトン部の指導役でしょ? バトン部といえば、理事長の改革案の目玉です。しっかりやりなさい」

ううん、ちょっと無理があるかなぁと自分でも思った。バトン部の大会は、来年の夏休みである。

「また理事長かよ。すっかり飼い犬ですね」

背後からつぶやきが聞こえた。クスクスと笑う女子生徒達。慌てて振り返る。声の方を向くが誰もいない。この素早さは藤原政代に間違いないが、見えなかったのでしょうがない。

「源さん、腕立てしなさい!」

「理由はなんですか?」

「ウォーミングアップの手抜きよ」

「歳のせいか体が重くて。私の実力はあんなもんですよ」

源小町はテヘと笑う。

「源さんは、朝から体調が悪そうでした。朝から保健室で休んでいたんです。本来は見学のところを、島田先生の授業だけはどうしても受けたいと無理をしているんです」

「良いの、私が悪いの」

腕立て伏せの準備をする源小町。


「ひどい。女の子なら誰にでもあることなのに……」
「女捨ててる人は違うわね」

今日、なにかおかしくない?

「何回やればいいんでしょうか?」

「10回でいいわ」

首から踵までビシっと伸ばす。胸が張っており、お腹と背中に力が入っているのがわかる。恐らく私が背中に乗っても崩れないだろう。

顔は前方を向き、ゆっくり伏せる。腕は90度で、顎を地面につける。姿勢はそのままだ。立つときは重力に逆らうように、一気に力強く立つ。

完璧な腕立て伏せである。恐らく体育大学でも、ここまで完璧な腕立て伏せを出来るものは少ないのではないだろうか。あっという間に10回こなす。Tシャツは泥だらけだ。

「私、あと10回は出来まして、真桑理事長は就任挨拶のとき、生徒の力量にあった指導をすると仰っていました。しごきのためのしごきは禁止、生徒は自分の力量の限界までチャレンジして欲しいとも仰っていました。島田先生は、私の力量を把握していませんでした。これは職務怠慢なのではないでしょうか?」

「怠けてたら、どうなるんでしたっけ?」

この二人!! またやったわね! このために、わざわざ私を苛つかせていたのね。


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