投稿作品集 > 体育教師奈津子 見せしめにされた生徒会副会長 p.07

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【五】

「うわ~っ! スッゲェー人集まってんじゃん」
「何々、どこよっ?」
「あそこだよ、ほらあそこ! ……居るじゃん、一人だけブルマーのヤツがさっ!」
「ええっ? ……ああアレかぁ! ……って、おいマジかぁ!」

!!!!!

「えっ、エエ~ッ! ……わっ、ちょっ、ホントかよぉ!」
「なっ、言った通りだろっ」

ドヤ顔で指し示す先に見えるのは、紛れも無いあの鹿ノ倉高穂その人なのであった。下半身に纏っている物……それは、その男子生徒の言う様に、濃紺のブルマーしか見当たらないのである。

まあ指定のソックスに上履こそ履いてはいる。だが何度見直しても、スカートはおろかジャージの類さえ一切見当たらないのであった。

「うっわぁ~! ……野村のブルマー姿とは比べモンにもなんねぇ……」
「とても同じモン(本校指定品ブルマー)穿く女子の姿とは思えねぇな!」
「3年生にもなると、こうも違うもんかねぇ……マジ凄過ぎっ!」

「否ぁ、それはちょっと違うんじゃ……やっぱ先輩(高穂)の……特別なん……」


「あ! そうそうヤッパそうだよねぇ……先輩ってさぁ、どちらかといえばグラマーな方の部類だもんねぇ……」
「せっかくのグラマーボディも普段は制服でフル武装だろおっ! ……割りと、つか気付いてない奴多いんだよねぇ……勿体無い話だよっ」

「否だからぁ……」

「それにしたって、そうだとしてもさぁ……何ていうか……逝っちゃってる感? ……ハンパなくね、アレッ?」
「そうそう、それっ! 俺も同じ事思ってたわぁ。……光の加減か何なのか分んないけどさぁ、妙にテカテカ光ってるしぃ……」
「ウエストんとこ……あれ野村の半分もないんじゃねぇの?」
「否々、流石に半分ってのは言い過ぎだろうけど……ま、でも確かに見た事もない細さではあるなっ!」
「アレッ、絶ってぇー昨日穿いてたヤツ(生徒総会の時穿いてたブルマー)とは違うモンだよなぁ!」

「だぁ・かぁ・らぁ……それを特別だって言ってんの!」

端から『高穂の穿くブルマーそのものが違う物だ』と、そう指摘したかった生徒が、話を遮られ早合点する連れの男子生徒に対し少し苛立ち気味に言い放ったのであった。

「「ああっ、そういう事かっ……」」

成る程ねぇと納得する反面、新たな疑問も浮上するのであった。


「でもさぁ、周りには『普通のブルマー』とかって言ってるらしいぜっ」
「プッ! おいおいマジかよ? ……全然フツーじゃねぇのになっ」
「嘘だろぉ! ……鹿ノ……本人がそう言ってんのかよっ?」

「云、そうだよ。D組とF組の先輩が同じ事言ってたから、確かなんじゃないかなぁ? ……なんでも二時限目の終わり頃、突然ナッちゃんと串田先生に率いられて三人で現れたんだってさっ」
「あっ! その話俺も聞いたぁ。ここのクラス、一時限目メッチャ騒いでたらしくてさぁ、誰かが生活指導部にチクッったみたいなんだよね。んでぇ、先輩が責任取らされてぇ、謝って廻ってたらしいぜっ」

「「へぇ~……」」

「で、それと鹿ノ倉のあのブルマー、一体何の関係が有る訳よっ?」
「ほら、F組に変った先輩居るじゃん?」
「変ったってぇ……ああ! アイツの事ぉ? ……あれ只のブルマー窃盗犯だろっ!」
「バカ、大きい声で言うなって……あの人絶対この場に紛れ込んで居るぞっ! ……あの件限りなく黒って話だったけど、結局証拠不十分でお咎めナシに成ったんだからさぁ……面倒になるから蒸し返す様な事言うなよなっ」

「んで、アイツがどうした訳よっ?」
「ああ、云……先輩のブルマーについて質問したらしいんだよねぇ」

「「「マジかっ!!!」」」

「やるなぁ、アイツぅ! ……ヤッパ本物のブルマーマニアなんだぁ!」
「流石ブルマー泥棒っ! ……否マジ凄ぇわぁ!」
「だからソレ言うのやめろってぇ!」
「確かにあの人も凄いんだけどさぁ。昨日の今日だぜぇ、そんな質問したら女子全員から大ブーイング必至……」

「「だろうなぁ……」」


「だろっ! 普通そういう流れに成るよなぁ? ……でもなにも、何事も起らなかったらしいんだよねぇ……それって凄い事だと思わない? ……つまりぃ、女子もあのブルマーには興味深々だったって、そういう事らしぃんだよねぇ。……でね、例の先輩に対する鹿ノ倉先輩の回答がぁ……」

「「「普通のブルマー!」」」

声を揃える男子生徒達。

「その通りぃ! ……ナッちゃんも先輩の話す事を黙って聞いてたって話だしさぁ……」

噂になっている高穂の穿く“えぐいブルマー”について、実物を目にした男子生徒達による実もない討論会が、其処彼処で繰り広げられているのであった。

教室内に立ち入る事こそ叶わぬものの、廊下にはその噂のブルマーを一目見てやろうと掛け付けた男子生徒達でごった返しているのだ。中には心配のあまり訪れたのであろう、女子生徒の顔も少なくなかったのである。

『清楚で美人なあの鹿ノ倉先輩が何故……』
『副会長に限って、そんなまさか……』
『皆の前で、ブルマー廃止を宣言したばかりだというのに……』

憧れのヒト(女性)であると同時に、厳格なあの鹿ノ倉高穂が一体どうして……そう思う生徒は、なにも女子だけに限った話ではなかったのである。


だが態々他のクラスまで見に来るくらいなのだ。やはり半数以上の生徒達は、生徒会副会長の穿く噂の“えぐいブルマー”が目当てである事に間違いなかったのであった。

「あっ! 居たぞっ、あそこだっ」
「えっ、どれどれっ……うわぁあっ!」

次々と集まって来る生徒達。特等席ともいえる最前列へ、お鉢が回って来た者は逸早く高穂の姿を捉えると、感嘆の声を漏らすのであった。

「アッ居た、あそこの席だっ! ……て、ちょ……イイのかよアレぇっ!」
「ウワッ! ……あれって、ホントにブルマー? ……えぐいも何も、もうパンティーそのモノじゃん!」
「他の女子共、あれゼッテェー惹いてるだろぉっ!」
「そりゃ目の前で、堂々とパンティー姿見せ付けられれば幾ら同性でも惹くわ!」

高穂の机の周りには、数人の女子生徒が集まり話をしている。一見普段と変わらぬ光景ではあるが、その男子生徒の言う様に、何処かぎこちないのもまた事実なのであった。

平静装う高穂をよそに、女子生徒の目には、引っ切り無しに訪れる高穂目当ての男子生徒達の姿そして声を如実に捉えている事に違いない。

その目的の対象物たる高穂を遮らない様、まるで配慮でもするかの如く一定の間隔を空け高穂の周りに立っていたのである。


“配慮”それを裏付ける理由は他にもあった。高穂の廊下に面した側に立つ者、つまり高穂の盾と成りその痴態をイヤらしい視線から遮ってくれる者……それが誰一人として居なかったのであった。

まあそのお陰で、廊下からでもバッチリ高穂の痴態が拝める寸法と相まった訳なのではあるが……。しかし当の女子生徒達にしてみれば、高穂に対する悪意や一切の悪気など持ち合せていないのが実情なのであった。

一時限目、串田にあれだけのモノを見せ付けられた後なのだ。無意識のうちに高穂との間に距離を置いてしまう……それが素直な態度そして行動として表れてしまったに過ぎないのである。

今尚、高穂の下半身にはあの疑惑のブルマーがキリキリと噛み付く様にその存在を誇示している。例え高穂が席に座っていようとも、否応なく目に飛び込んで来るその光景に、何事もなかった様に振舞えという方が酷な話なのであろう。

「ぷっ……何だよアレっ!」
「何っ? 態とキツキツのブルマー穿いちゃってる訳っ?」

その間にも、興味本位の生徒達が次々に押寄せて来る……否、ブルマー廃止を掲げたお偉い生徒会副会長さんの穿く“えぐいブルマー”とは一体どの様なモノなのか、確認せずにはいられないのであった。


「好きなんじゃない? ブルマーがさっ」
「それも小っさいブルマーがお好みねっ! ハハッ」
「それじゃブルマーだけじゃなく、根性も“えげつねぇ”って事だぜっ?」
「てか、それって……もう只の変態じゃん!」

「「「ハハハハッ、言えてるぅ」」」

「あんなの穿いて、ブルマー廃止ぃ! なんて良く言えたもんだよなぁ」

あるグループの遣り取りを聞いていた、他の生徒達の笑いもをも誘った。

「本人満更でもなさ気なとこが痛いよなぁ!」
「(他の)女子も精一杯気ぃ遣ってるっぽいし……なんか見てて可哀相になるわっ、あっ! 勿論周りの女子の方ねっ」

「「ククッ……ブププッ……ウヒャハハハッ……」」

「可哀想過ぎっ……誰も副会長に同情しねぇのかよ! ……ってアレじゃ当たり前かぁ? ……ブププッ……ヒャハハハッ……イイ気味っ」

生徒会副会長の身なりを酷評し嘲笑うものの、視線だけは決してその嘲笑する対象物から外される事はない。その行為は、その場に訪れていた女子生徒とて同じであった。ただ男子と異なる唯一の点は、心の底から高穂の身を案じてのものなのである。


【生徒達でごった返す廊下。その主たる原因が、自身の穿くブルマーであると認識している高穂もまた、何時もの様に、否何時も以上に笑顔を作り、気丈に振舞っていたのである。

だがその行為こそが、返って生徒達に誤解を招く結果と成っていようとは、露にも思わない高穂なのであった】

「何がブルマー反対だよっ。笑わせんなよっ!」
「ブルマー反対っ! ブルマー廃止ぃー! なんて、女子達の前威勢の言い事言ってはみたもののさっ、実はゴリゴリのブルマー肯定派なんじゃねぇの?」

「見ろよっ、あんな恥しいの穿いて、あの笑顔だぜっ。それがイイ証拠だよなぁ! ……本心はさぁ、ブルマー賛成ぇー! むしろ大賛成ぇー! とか大声で叫びたくてウズウズしてんじゃねぇのっ」
「ブルマー廃止を廃止ぃー! 本校はこれからも永久にブルマー継続ぅー! ってかっ」

「「ギャハハッ、それ良いっ!!」」

「ククッ、ウケんねそれっ」
「そうならマジ傑作! ……女子達の前、颯爽と現れた正義の使者が、実は敵対する教師の手先……否、手先というよりその実態は……ブプッ、実態はぁ……只の教師の遣いっパシリってかぁ?」

「「うわぁ、何かそれリアルぅ~!」」


「否だって、じゃなきゃ、昨日の今日であんなブルマーをフツー穿くか? 穿く意味が分んねぇよ」
「何にしてもさぁ、巻き添えくらって個人のブルマー趣味押し付けられる女子は堪ったもんじゃねぇよ……超悲惨過ぎぃ~……」
「女子じゃなくてホント良かったな……俺達っ!」

「「「ククッ……ブププッ、ギャハハハハ……」」」

悲惨と言う言葉とは裏腹に、男子生徒の顔に悲壮感などはない。むしろ、悲惨と称した女子の境遇を面白がっている様な顔付なのであった。

そんな男子生徒の偏見に満ちた発言を、偶々近くで耳にしていた女子生徒達は、目に大粒の涙を浮かべ立ち去って行ってしまった。

それは、高穂を思い慕う純粋な心から出たものなのか、それとも心無い言葉を吐き棄てる男子生徒に対する怒りからくるものであったのか……はたまた、生徒会副会長鹿ノ倉高穂に失望し、自分達の真っ直ぐな思い、心を踏み躙られた悔し涙だったのであろうか。

もはや本人達はこの場に居ず確認の術もないのであるが……。

「あ~あっ、可哀想に泣いてちゃってたよアノ子達ぃ……未来ある1年生だぜぇ」
「フン、あの副会長じゃぁ、どっちみち未来なんかなくね?」

「でもさぁ、ちょっと寂しいよな……凛としたイメージが崩れたっていうかさっ……大勢の男子が居る前で、恥し気もなくあんなモン穿いて平気な顔してんだぜぇ……しかも笑顔っ……何ていうか、ガッカリだよなぁ……」

仲間が盛り上がる中で、一人センチに浸る男子生徒が居た。


「なぁ~に甘い事言ってんだかぁ……噂を聞いた途端、早く見に行こうって落ち着きなかったのは何処のどいつだよっ!」
「そっ、それはそうだけどさっ」
「言いなさんなぁ。何てったってコイツ……実は、鹿ノ倉高穂にゾッコンなんだからぁ!」
「ばっ、バカッ……今そんな事言うなよ」

「はぁ? そんな事一言も聞いてないぜっ……お前なぁ、鹿ノ倉ごときに幻想抱き過ぎっ! ……所詮オンナなんてその程度のもんなんだからっ。

特に副会長の肩書きを笠に着た鹿ノ倉なんて最低ぇの腹黒下衆女そのもの……普通、ブルマー廃止を打ち出した翌日に、テメェからあんなブルマー穿いたりするかぁ? もう濃紺のパンティーそのモノじゃねぇかよ! ……悪い事言わない、早く目を覚ませっ、なっ」

「ほらぁ~、こういう奴が出てきちゃうから。それも身近に……だから早く行動に移さないと駄目なんだよぉ~」
「だなぁ! ……鹿ノ倉の隠れ信者って、まだまだ(他の男子でも)大勢居るんだろうなぁ?」
「一刻も早く、生徒会副会長なんて正義ヅラした仮面をひっぺがして、うす汚いメスの、腹黒下衆女の本性を曝け出してやろうぜっ!」

「「賛成ーっ!」」

「ブルマー廃止運動なんてふざけた事、二度と口に出来ない様に粉々にぶっ潰してやろうなっ!」

そう話すこの男子生徒達のグループ。噂の高穂の穿く“えぐいブルマー”を見にやって来た事自体、他の男子生徒達と変りはないのであるが、何やら良からぬ事を企んでいたのであった。


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