投稿作品集 > 体育教師奈津子 秋のイベント パレード 中編 p.06

このストーリーは、bbs にて、KRE 氏より投稿していただいた作品です。 この作品の著作権は KRE 氏にあります。

(ご案内)
この作品は『嗚呼 青春のトロンボーン 番外編 小窓からの風景』とのコラボ企画となっております。



「このボタンでメニューを出して『全画像消去』ですよ、先生」

黒田の指が顔の前に割り込んできて、奈津子は顔を上げた。

「ああそう。これね。じゃあ、消しますからね」

ピッ。

確認画面が表示された後、黒田の渾身のコレクションはすべて消え去った。

奈津子は画像表示で何も表示されないことや、画面に「画像はありません」とエラーが表示されていることを、黒田自身にも見せると、再度注意してデジカメを返却した。


黒田が退出してから、奈津子はふと考える。

そう言えば、月曜日の放課後の練習以降、メンバーたちが妙に明るかったような気がした。月曜日の朝はあれだけ抵抗した三人だったが、その後のメンバーはそれに比べるとおとなしかった気もする。

(初めての懲罰レオタードなのにね。あれ効くんだけどな。私も学生時代に先輩にいじわるでされた時は寮で悶々として苦しんだんだけど……。明日は金曜日で最終か。念のため、一応、確認しておこうかしら……)

奈津子は懲罰室を後にすると、職員室に戻っていった。



黒田は不自然なほど早足で学校を後にした。

(なっちゃんがメカ音痴で助かったぜ。まだ神は俺に味方している!)

校門を出て、商店街を抜け、表通りに出ると人通りが一気に増える。その雑踏の中で、黒田はケータイを取り出して、アドレス帳から悪友の名前を選択した。

『……あ、俺、黒田だよ。いま良かったら調べてほしいことがあるんだけど』

相手に有無を言わせない勢いで、話し始める。

『お前パソコンとかプロだろ。学校でもそうとうやってんだろ。ちげーよ。お前にも死ぬほどメリットあるって!』

なんとか会話を続けられる状態にすると、黒田は用件だけを伝え始めた。


『あのさ、デジカメのメモリカードなんだけど、間違って全画像消去しちゃったんだよ。でも、それからは全く撮ってないし、何も記録してない。そういうのって、プロだと復活できたりするんだろ。データ……リカバリー……だっけ?』

会話に夢中になって、途中、何度か赤信号を渡りそうになったり、放置自転車にぶつかりそうになったりしながらも、ケータイを耳に当てて歩いて行く。

『ああ、消しただけだって。まあ、とにかくカード渡すから、復活の呪文お願いするわ』

何とか交渉を成立させると、電車の駅が目の前にあった。黒田は自宅とは反対方向へ向かう電車に飛び乗った。



翌日、金曜日の放課後。

職員室の奈津子のところに懲罰レオタードを着たバトン部の三人がやってきた。3年の吉原沙世、2年の高桑みのり、1年生は飯田香緒里。15人の懲罰メンバーの最後の3名だった。

奈津子は席を立つと三人の姿をよく見た。別に変わった様子は見られなかった。顔を少し赤くさせ、もじもじとする仕草は、奈津子には当たり前に見えた。

しかし、奈津子はこれまでの12人のように更衣室で通常のレオタードに着替えるようには指示を出さない。

「では更衣室に行きましょう。普通のレオタードに着替えたら、今日もグラウンドで練習します」

三人は一瞬、おやという表情を見せたように思えたが、黙って後を付いてきた。


女子更衣室に入ると、奈津子は三人にレオタードを脱ぐように言った。だが、三人はなぜかなかなか脱ごうとしない。

「あの……先生、その……あそこが、恥ずかしく、なっているので……」

沙世が言いにくそうに下を向く。

「あ、私、トイレに行ってから着替えますので……」

香緒里が更衣室内のトイレに行こうとする。奈津子は確信した。

「待ちなさい」

香緒里を制止すると、

「あら、同じ女性の顧問なんだから、いいじゃない。罰の成果も確認できます」

言いながら、すっと指を沙世の股に伸ばす。


股布をぐっと押してやる。指先に違和感はあった。確かに懲罰レオタードであることは間違いない。

「あうっ!」

沙世が悲鳴を上げる。

これは奈津子も予想していた。本当の狙いは沙世ではない。その横で少しぼーっとしているお嬢様のみのりだ。もう片方の手もさっと出して、みのりの股ぐらを撫でる。

「……?」

みのりは一瞬、何が起きたのか理解できなかった。

横の沙世を見ていて自分の体には注意を払っていなかったのだ。だから咄嗟の「演技」ができなかった。奈津子が手を脚の付け根から両胸へと素早く移動させて、ふにふにとおっぱいを揺らす。


「うん……? あ、ああっ……きゃあ!」

ようやく気がついたみのりは慌てて声を出した。それは誰が見ても下手くそなバレバレの芝居だった。

「ふーん。どうもおかしいわね。あなたたち、ここで全部脱いで裸になりなさい。今すぐです!」

奈津子の命令に三人の顔色がさっと変わる。沙世たちは追い込まれた。



部活動の時間で多くの運動部で賑わうグラウンド。

商業地域を避けて作られた学校のため、かなりの広さが確保されたそこには、野球にサッカー、ラグビー、ソフトボール等、かなりの種類の練習スペースが、ひしめき合っていた。

そして、それら運動部の部室が並ぶクラブハウスの前。運動部員たちが特に大勢行き来するスペースの前に、バトン部メンバーは集合していた。公開練習になってからの集合場所はここに決められていた。

彼女たちの可憐なレオタード姿は、クラブハウス前で雑用をする1年生を含むあらゆる運動部員たちの目を楽しませる役割を果たし、同時にそれが度胸付けの一環にもされていた。

「みのりんたち、遅いなあ……」

由真がぽつりとつぶやいた。


今日懲罰を受ける三人以外のメンバーは全員揃って待っている。いつもなら、もうとっくに練習がはじまっても良い時間だったが、顧問の奈津子の姿も見えなかった。

さらに10分ほど経過した。

その時、陸上部の男子3年生が全力疾走でクラブハウスに向かって走ってくると、周囲の運動部員に向かって叫びだした。

「おい、おいっ。お前ら、すっげーぞ! 裸!! バトンの子まっぱだぜ。なっちゃんが久しぶりに大噴火して特別懲罰だってよ。はあ……はあっ……。しかも3年は、あの吉原だぜ。これは見ないと一生損するって……」

言うなり、息を切らしてまた校舎の方へ走って戻って行く。周囲が急にざわつき出す。

「ちょっと、いまの……」
「裸って、まさか!」

バトン部メンバーの間にも衝撃が走る。


陸上部の子が走っていった方を見ると、グラウンドの反対側、校舎の横辺りにはすでに人が集まり始めているのが見えた。

遠いのと人が邪魔になるのとで、ここからではよく見えないが、人垣は増えつつあり、ゆっくりとグラウンドの縁に沿って、こちらの方へと向かって移動している。

「行ってみる?」
「……うん」

遙菜たちはみんなで人だかりの方へと走っていった。

そこには衝撃的な光景が待ち構えていた。

「……そんな!」
「沙世先輩……。ああ……」
「ひっ、ひどいッ」

遙菜たちが人だかりをかき分けて前に出ると、奈津子に連れられてグラウンドを歩いている、沙世、みのり、香緒里の三人の姿があった。


歩いているというより、歩かされている。いや、そんななまやさしい状態ではない。彼女たちはまるで刑場へと送られる極悪人の受刑者のように扱われていた。

レオタードはおろか下着一枚身につけていない。三人全員が何ひとつ衣服を着ていない全裸である。

しかもただの裸ではない。受刑者たちは連行中どんなに見られても、恥ずかしい部分を少したりとも隠すことができないように、両手の自由を奪われていた。

三人の両手は背中の後ろに回されていて、肘から先を重ねるようにして、体育で使用する縄跳び用の縄でぐるぐるに縛られてしまっている。

そのため、羞恥に俯く顔も、はち切れそうな太腿も、若くて瑞々しい胸も、柔らかそうなお尻も、三者三様に毛並みと濃さの異なるデルタも、その奥のクレバスさえも、女の子にとって見られたくないところはすべて、好奇心たっぷりの観客たちの目に360度あらゆる方向から鑑賞されていた。


特に24人の中でもトップクラスの美女である沙世は、先頭を歩かされておりひときわ注目を浴びていた。

女優のようなスタイルの良さに加えて、形の良い乳房とつんと盛り上がったヒップは余すところなく披露されている。長い黒髪を持つクールビューティーは普段の落ち着きを失って、全身をほんのりと朱に染めて俯いていた。

つづくみのりはあまりのことに呆然としている。ドレスを脱いだお嬢様そのものの雰囲気で、両脚をきれいに揃えて目を伏せじっと耐えている。

最後の香緒里は顔を真っ赤にして、ただ右に左に体を捩って逃げるようにしている。その動きは観客たちを余計に楽しませることになってしまっているのだが、まだそのことが理解できるような年齢ではないのだ。


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