投稿作品集 > 東山友紀の集団行動 p.01

このストーリーは、bbs にて、のりぞう 氏より投稿していただいた作品です。 この作品の著作権は のりぞう 氏にあります。



■ 集団行動 ~協調性を養う糧となれ~ ■

(1)

今日、新学年になって最初の全体行動の授業がありました。

全体行動と言うのは、私の通う櫻葉女子高等学校の教育理念である「調和」と「協調」のうち、協調性を養う目的として週に一回行われている特別授業の事です。

全体行動の流れは、まず、私たち生徒は制服姿で全体行動のスタートを告げる放送が流れるまで自分の席で座って全体行動が始まるのを待ちます。

「これより、全体行動を行う。全員、朝礼台前に集合」と全体行動のスタートを告げる校内放送が流れると、私たちは一斉に椅子から立ち上がって着ている制服を脱いで体操着に着替えます。

制服から体操着に着替えて朝礼台の前に集合するまで私たちに与えられた時間はたったの三分。たった三分の間に体操着に着替えて運動場に出ないといけないのです。

全体行動の日は制服の下に体操着を着て、制服を脱ぐだけにして着替えの時間を短縮させるのです。

櫻葉高校の制服はセーラー服タイプの制服なので制服を脱ぐのに時間はかかりませんが、脱いだ制服はきちんと折り畳んで机の上に置かないといけないから、どちらかと言うと制服をたたむ方に時間が掛かってしまいます。

机の上に制服を置く順番は、スカートの上に上着を置いて、運動場に出られる準備が整ったサインとして最後に制服の一番上にスカーフを載せるのです。

全体行動の授業は裸足で受けるので、この時、制服と一緒に上履きとソックスも脱いで裸足になります。


半袖シャツにブルマ。私たちが全体行動の授業を受ける時の姿です。

担任の先生は、机の上に綺麗に折り畳まれた制服の上にスカーフが置かれているのを確認すると、半袖シャツにブルマ姿の私たちを見渡しながら「身なりを整えて駆け足」と指示を出します。

身なりを整えると言うのは、体操シャツの裾をきちんと伸ばしてブルマの中に仕舞う事と、ブルマの裾のラインが脚の付け根のVラインに当たるようにブルマをギュッと上に引き上げる動作の事を言います。

ブルマを引き上げるとブルマの裾ゴムが太ももの付け根を締め付けます。

こんなことを思うのは私だけかも知れませんが、この締め付け感が気合いが入ると言うのか、『よし、やるぞって!!』っていう気分にさせて、気持ちを高ぶらせるのです。

シャツの裾を伸ばしてブルマの中に仕舞ってブルマを引き上げるまでの一連の動作を終えると、両腕の肘を直角に曲げて両脇を締めて教室の前の扉に近い生徒から順に駆け足で教室を出ていきます。

制服から体操着に着替えて朝礼台の前に三分以内に集合する。

毎週行われる全体行動の授業を受けているうちにこれらの動きは出来るようになってきますが、まだ、勝手の判らない新入生は初めのうちはかなり手間取ってしまいます。

去年の私たちがそうでした。一学期の半ばから終わりごろまでは三分以内に集合できた事は一度もありませんでした。


時間内に集合できない時は、「毎週の事なのに、時間通り出来ないあなた達に罰を与えます」と言われて、罰が科せられます。

私たちに科せられる罰は腕立て伏せです。一分以内の遅れなら20回。一分~二分未満なら30回。二分以上は40回と腕立て伏せをやらされるのです。

二分以上の腕立て伏せ40回と言うのは、女子高生のベストの平均回数は35回前後と言いますから、ベストの平均回数を少し上回る回数の腕立て伏せをさせられるのです。

1年生で40回の腕立て伏せをクリアできるのは、私みたいに中学時代から運動系の部活でしごかれてきた子ぐらいです。

私から言わせれば40回なんて回数は腕立て伏せをやったうちには入りません。運動系の子からすれば余裕でクリアできる回数ですが、運動が苦手な子にとってはかなり厳しい回数になります。

それでも、二学期、三学期と季節が進んでいくうちに自然と体が鍛えられてクリアできるようになっていくのです。

腕立て伏せも全体行動の一環なので、当然、腕立て伏せも朝礼台の先生の号令に従って行わなければいけません。

腕立て伏せが出来ずに途中で潰れると、見回りの先生からわき腹を蹴られたり、お尻を踏みつけられたり、酷い時だと股間を蹴られます。

股間を蹴られた子は悲惨です。蹴られた股間を股布の上から両手で押さえて運動場の上を転げまわるのです。中には股間を蹴られた衝撃でお漏らしをする子もいます。

失禁しても着替えることは出来ません。おしっこに濡れたブルマを穿いたまま、全体行動の授業に参加しないといけないのです。

失禁したり、股間を蹴られた痛みで悶えながら運動場を転げまわっている子の姿を見ていると少し可哀想な気がしてきますが、私たちに同情は出来ても学校の方針に疑問を挟む余地はありません。

たとえ先生から厳しい指導を受けたとしても、それを受け入れなければいけないのが私たちに科せられた義務なのですから。


(2)

全体行動で行われるのは、右を向いたり左を向いたり、回れ右をしたり行進したりと単純な動作の繰り返しです。私たちは先生の号令の下で、全生徒がタイミングを合わせて気持ちと体を合わせて動くのです。

やっている事は単純な動作ですが、聞くとやるのとでは大違い。全生徒が気持ちを一つにして統一感を持たせて動くのは慣れないと出来ないものです。単純な動きだからこそ誤魔化しが利きにくいので難しさが際立つのです。

例えば、「右向け右」で右を向くとき、右脚を後ろに引く時の足の幅とか、足を後ろに引くタイミングとか体を右に向けるタイミング。行進するときの膝を曲げる角度や腕の振り方。

動きにバラつきがあると、腕や太ももを鞭で叩かれながら、細かな動作一つひとつをチッェクされるのです。鞭で叩かれるので、注意ばかり受けていると腕や太ももが赤く腫れて何本も蚯蚓腫れが這う事になるのです。


(3)

体育の授業は雨が降れば体育館で行いますが、全体行動の授業は雷が鳴っている時とか暴風雨の時みたいに生徒の身に危険が及ぶ程の天気の崩れがない限りは運動場で行います。

土砂降りの中でも雪が積もっている中でも半袖シャツにブルマ、素足で授業を受けるのです。

雨の日の全体行動で嫌なのは、雨に濡れる事よりも雨水でぬかるんでいる運動場の上に腰を下ろしたり、腕立て伏せの代わりに腹筋をやらされること。

また、先生も私たちの気持ちを知っているから、雨の日は「座れ」の指示が頻繁に出るのです。ドロドロになった運動場の土の上にお尻をつけると、ブルマが泥水を吸って下着を汚します。

「立て」の指示で立ち上がると、お尻は泥まみれ。泥水を吸った分、ブルマは重くなって動いているうちにずり下がってくる事も。

全体行動の時は、指示以外の動きはご法度です。ブルマの裾がずれてお尻や下着が見えても直すことは許されないぐらいですから、ブルマがずり下がっても先生の指示が出るまでブルマを引き上げる事が出来ないのです。

泥水で汚れたブルマを穿いている気持ち悪さとブルマがずり下がってお尻が見えてしまっている恥ずかしさで、雨の日の全体行動はテンションが下がります。

雪の日の全体行動は冷たさや寒さとの戦いです。雪の日の全体行動は「気を付け」や「休め」といった動きの少ない指示を出される事が多いです。

私たちは雪の積もった運動場に素足で立っているのです。全体行動の時に許されている着衣は半袖シャツにブルマだけ。防寒なんてものは一切考慮されてはいません。

いくら寒いから、冷たいからと言ってガタガタと体を震わせると「気合が足りない」と鞭と共に注意を受ける羽目になります。

冷たい風にさらされた肌に鞭を受けると、いつもよりも数倍痛みが増します。鞭を受けてヒリヒリと痛む肌に北風が当たると飛び上がるぐらいの痛みが走ります。

雨の日にドロドロになるのも雪の日に寒さや冷たさに震えるのも嫌ですが、こうした悪天候の中で全生徒がツライ気持ちを共有する事によって、私たち櫻葉女子で学ぶ生徒としての連帯感を生むのです。

この連帯感こそが、協調性を育む心の糧となるのです。


inserted by FC2 system