投稿作品集 > 裏合宿 p.03

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■ Episode3 筋力トレーニング・1 ■

リカはグラウンドへ出た。ハルトの姿は見えない。きっと小屋の中で授業を受けているのだろう。

教官からトレーニングの説明がある。

教官「うちのトレーニングは一日おきだ。毎日行わないことで筋肉を休める日を作っている。部活でなかなか筋肉がつかないのは中途半端な練習を毎日ダラダラやってるからなんだ。

ここではトレーニングの日に限界の200%出し切って一日しっかり休む。それを繰り返すことで完璧な体に最も効率よくなれるシステムになっている」

教官「最初のうちは筋トレのみをやらせる。俺たちはフォームの指導はするがペースは自分たちの好きなようにしていい。どれだけ遅くなってもノルマさえクリアすれば今日は終わりだ」

ノルマが決まっているのはリカにとって気が楽だった。いつ終わるかわからない方がつらいと思ったからである。

教官「お前は短距離が専門か。まずは腹筋からはじめよう。メニューを発表する」

リカ「はい」

~腹筋~
  ・上体起こし 100×3セット
  ・V字腹筋  50×3セット
  ・足上げ腹筋 50×3セット
  ・逆さ腹筋  30×3セット

普段のトレーニングの何倍もきつい。気を引き締めて始めるリカ。

最初の上体起こしは仰向けで寝て足を軽く曲げ、教官に支えてもらいながら体を起こすのを繰り返す。一般的な腹筋のトレーニングだ。

一定のペースで上体起こしをするリカ。まだ余裕はありそうだ。5分ほどで100回を終えるとすぐに次のV字腹筋をはじめる。

教官「じゃあ次。足を伸ばし少し地面から浮かせて。それで背中も少し地面から離して」

リカ「はい!」

リカは言われた通りの体勢をとる。

教官「その状態で手をまっすぐ頭の後ろへ」

リカ「はい! …………んっ」

指先から足先まで一直線のきれいな姿勢だが、少し辛そうになった。手をあげたことで重心が頭の方に移動し、その分腹筋にかかる負荷が大きくなったのだ。

教官「それが基本の姿勢だ。そのまま手と足をあげていって指先と足がついたら基本姿勢に戻す。その繰り返しだ。ちなみに膝が曲がっていた場合などフォームが悪いときはカウントしない。

また、途中で足や背中が地面に着いたときはイチからやり直しだから注意しろよ」

教官「では、始め!」

V字腹筋は1セット50回。さっきの上体起こしより難度が高く、普通の女子高生なら1セットもできないほど負荷の強いトレーニングだ。

それに加えて、上体起こし100回やったあとで疲れがたまっているはず。さすがのリカも30回あたりからペースが落ちてきた。

リカ「はあ、はあ、はあ……ふんっ! さんじゅうに! はあ、はあ……ぐっ! さんじゅうさん!」

リカはこのトレーニングで最もやってはいけないことをわかっていた。

教官はプロだ。楽をすれば必ずばれる。きれいなフォームでやると腹筋だけに負荷がかかりかなりきついが、カウントされない腹筋をして無駄な回数をさせられる方が後々大変ことを理解していた。

まして、背中をつけてイチからなんて絶対だめだ。このトレーニングはセット間の休憩は自由のため、終わってからゆっくり休めばいい。

リカ「はあ、はあ、はあ……よんじゅう……きゅううう! はあ、はあ……はあ、はあ……」

あと一回、しっかり力をためるリカ。

教官「あと一回、もう終わりかー?」

リカ「はあ、はあ…… ううううんんっ!! ごじゅうー」

バタッと手と足を地面に落とすリカ。結局ノーカウントもやり直しもなしでやり遂げた。

リカ「はあ、はあ、はあ……」

教官「なかなかキレイなフォームでやるじゃないか。お前見込みあるかもな」

リカ「あ、ありがとうございます」

教官「次は足上げ腹筋か。そこの鉄棒にぶらさがれ」

リカ「はい!」

本音を言えば少し休みたかったが、まだ1セット目だ。こんなところで休むわけにはいかない。

教官「ぶら下がった状態から足を額につけるのが次のトレーニングだ。ところでお前、体は柔らかいか?」

リカ「硬いほうです」

教官「とりあえず足がどこまで上げられるかやってみろ」

リカ「はい!」

腹筋に力を込めて足をあげる。やはり額までは上がらない。体と足の角度が60度くらいのところで止まった。

教官「そこが限界か?」

リカ「うっ、はい」

すると教官はリカの足を押しズルをしていないか確かめる。本当にそれ以上曲がらないことを確認すると、

教官「3kgだな、少し待ってろ」

しばらくすると教官が持ってきたのはおもりだ。3kgのおもりを両足につけられた。

教官「足は今あげたところまででいいが、額まではつかないからお前には3kgのおもりで負荷を調整する。ではそれで足上げ腹筋はじめ!」

両足6kgのおもりはだいぶ堪えるようで、一回一回全力を出さないと上がらない。20回を越えるころには体中びっしょり汗をかいていた。

リカ「はあ、はあ、はあ……ぐっ! ふん!」

22回目、必死の思いで足を上げるも90度からなかなかあがらない。

教官「それじゃまだ届いてないぞー。もう限界か?」

リカ「まだ……やれます……。はあ、はあ、ううううううううんんっっ!!!」

まるで一日の最後のトレーニングをしているかのようだ。

教官「ようし、22回目だ」

その後、ペースは遅かったが一度も失敗せずに足上げ腹筋をやりとげた。

鉄棒から降りたリカはうずくまりお腹を押さえている。かなりきつかったようだ。

教官「よし、次は逆さ腹筋だ」

リカ「はあ、はあ、すいません。少し休憩していいですか?」

教官「なんだ、もうへばったのか。まあ勝手にしろ(女でここまでやり直しなしだったのは初めてかもな)」

5分ほど休憩した後リカは逆さ腹筋をはじめた。

逆さ腹筋は足を紐で鉄棒にくくりつけられ、逆さまにつるされる。指先でつま先をタッチするのを繰り返す。

足より重い上半身を真下から真上まで持ち上げるため、先ほどの足上げより腹筋にさらに負荷がかかる。1セット30回に設定されている。

リカ「ふっ! ううっ。んんんんんん!! いいいいいいいちっ!!! はあ、はあ、はあ」

体をプルプルと震わせ、顔を真っ赤にしながらやっと一回。力を抜き、一気に逆さの状態に戻りシャツがめくれる。

すでに腹筋はパンプアップし、六つに割れた腹筋が浮き出ている。筋肉がつきにくい女の子でここまで鍛えるには相当きついトレーニングを長期間してきたはずだ。

そんな彼女でも限界を超えるノルマが与えられているのがこの合宿。

ただ、リカのこの合宿への気合はすさまじい。この程度のつらさは当然覚悟している。諦めるつもりは全くない。

リカ「はあ、はあ……。ぐううううううっっ。ふんんぎいいいいいいいい!!」

教官「2」

二回目。全身から汗が噴き出し、ポタポタと地面に汗がたれている。目をギュッとつむり、体中の筋肉を腹筋に集中させ腹筋を続ける。

リカ「ぐっ……ふん! ううううううあああああああ!!」

教官「15。あと半分だ」

リカ「はい! ふううううんんん!! ぐっんんっうううっ」

16回目。途中まで体があがるも指が足まで届かない。全身の力を振り絞り体を持ち上げようとする。

だがついに、

リカ「あああああああああ!! はあ、はあ、はあ、はあ……」

教官「16回目。やり直し」

もう少しというところで体が落ちてしまった。ここまでノーミスでやってきたリカだったが限界が来たようだ。

一度あがらなかったものを次で成功させるのは難しく、その後何回か挑戦するもやはり手が届かない。

リカ「くそう。はあ、はあ」

教官「おいおい。まだ1セット目なんだけど、もう終わり?」

教官もそうはいうが、今まで合宿に参加した生徒に比べればリカが体力も根性も持っている生徒なことはわかっていた。この子の心がどこで折れるのかを楽しみにしていた。

リカ「まだやれます。はあ、はあ」

リカはつるされたまま5分ほど休憩し、逆さ腹筋を再開した。

20分後、

リカ「はあ、はあ、はあ、ぐううううううううおおおおおおおお!!!」

教官「30」

最後は叫び声をあげながら逆さ腹筋30回(やり直しこみで40回程)を終え、腹筋1セット目が終了した。

午前7時。

リカはトレーニングをやりきることができるのだろうか。


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