投稿作品集 > バレー部の躾 patience p.01
このストーリーは、bbs にて、KRE 氏より投稿していただいた作品です。 この作品の著作権は KRE 氏にあります。
「はあっ、はっ、ランニング! 終わりましたあ!!」
汗だくになって50周を走り終えた俺たちは、パンツ一丁のまま部室の前で大声を張り上げた。全力で走り続けたため息も絶え絶えで、はあはあと荒い呼吸が肩まで上下させる。
中からは何の返事もない。
それでも1年生は全員が直立不動で待つ。先輩から返事があるまではこうして何時間でも待つのが礼儀とされている。合宿などでは本当に何時間も待つこともあった。
しかし、今日に限っては強い思いがこみ上げてくる。
(早く中に入りたい)
パンツ一枚の格好が恥ずかしくて早く中に入りたいのではない。もちろん恥ずかしいには恥ずかしいが、パンイチにされるのは何回かあったし、上下関係が厳しい運動部ではどこの部活も同じで諦めていた。
それよりも、中で『気合い入れ』を受けているであろう桜木先輩のことが気になって仕方がない。
意図的に軽いチェックを受けるだけで『気合い入れ』を回避しようとしたと断罪されてしまった先輩が、ごく普通の指導だけで許されるとは思えない。
『いちから根性叩き直しだな』と言った時の上級生たちの顔には、それこそ嗜虐に満ちた表情が浮かんでいた。ひょっとしたら先輩たちは、桜木先輩を陥れるためにわざと遅く来たのかもしれない。
桜木先輩と言えばバレー部ナンバーワンの美人だ。今回のような機会は滅多にないから、男子にとっては誰だってチャンスだと思っているに違いない。
俺たち1年以上に権力を行使できる上級生が与える罰とはいったいどんなものなのか。
0年の立場は本当に最低で奴隷同然の扱いだ。3年生からすれば奴隷に堕とされた同級生の美少女にはどんな命令だって下せるはずだ。あの桜木先輩が恥ずかしくて、理不尽で、到底納得できない指示を次々と受ける。
『ああっ、そんな……。これ以上は、無理です……』
俺の妄想の中の桜木先輩は、すでに最後の一枚になってしまったパンティーすら下げられてしまっている。よよと身を崩し、こぼれる胸を片手で押さえながら、もう片方の手を太腿に挟み込んで下腹部をしっかりとガードする。
涙目になって俺を見上げてこう言うのだ。
『もう……許してください。お願い……』
架空の桜木先輩の『お願い』を想像しただけで、心臓がバクバクするほどの破壊力だ。このドア一枚隔てた向こう側では、現実にそれが行われているかと思うと、俺はいても立ってもいられない気持ちだった。
ガチャ。
不意にドアノブが回った。
少しだけ扉が開いて、中から2年生が顔を覗かせた。俺はすごくうれしそうな顔をしていたのかもしれない。2年生は俺たちをチラリと眺めると、興味なさそうに言った。
「お前らちゃんと全力で走ったのか?」
「「「はいっ」」」
「あ、そう。じゃあ次は、腕立て、腹筋、スクワット各200回。この裏でやっとけ」
バタン。
それだけ告げると、ドアは無情にも閉じられてしまい、鍵の落ちる音が聞こえた。
「「「はいっ」」」
誰もいない扉に向かって、1年生は返事だけはしっかりと返す。妙な脱力感に襲われながら、俺たちは部室裏に回った。
部室のコンクリート壁と土手に挟まれた地面はところどころが草むしている。ゴミも散乱していてとても快適とは言えないが、ここは見慣れた練習場所のひとつだった。
どの部にとっても、部室裏は1年生が使用するメイングラウンドのひとつとして機能しているのだ。シゴキや罰の執行の場にされることも多い。
裏手だからと言って、特別に閉鎖された空間というわけではない。校舎が傾斜地に建っているため、部室の裏手側は高い土手になっていて、道路や民家は遙か上の方に位置している。
片方が天然の壁になっている場所の正面が部室棟で遮られているだけで、広さもそこそこあるし横方向からは丸見えだ。
部室も並んでいるため、他の部の1年とも一緒に練習しているような雰囲気があり、1年生にとってはある種の居場所のようなところだった。
バレー部ではほとんど行われていないが、テニス部では1年女子はここが更衣室代わりになっており、頻繁に着替えさせられているのを見かけた。
運が良いことに男バレの部室は女子部の建物に近く、女子テニス部は三つ隣だったので、はっきり言ってよく見えた。
グラウンド方向から見えないだけであって、土手の上の道路からもフェンス越しに簡単に見下ろすことができるため、それを目的としている通行人もいるようだ。
テニスはなぜか女子には人気がある。見た目を気にするような女っぽい子は特にその傾向があるように思える。先輩たちもよくわかっているのか、1年生をふるい落とすためにも羞恥罰は盛んに実行されているようだった。
毎日ではないが、平均すれば週に一度は人目がある時間帯にきれいどころがぞろぞろと集まって着替えさせられている。
せっかくだから俺たちも同級生のストリップを楽しませてもらっているが、テニス部の女の先輩たちは綺麗な顔してみな性格が悪そうだった。ライバル意識が強いというのか、他人を蹴落とそうとしているように思える。
テニス部でも1年はユニホームなんて当然着られない。練習は普段の体操服と変わらないシャツとブルマだった。にも関わらず着替えをさせられるのだ。
制服から体操服になるのではない。体操服から体操服になるだけだ。着替えとしては全く無意味だから、下級生を外で裸にすることだけが目的なのは間違いない。
徹底しているのは着替えの手順が決められているということだ。クラスで仲が良いテニス部の女の子から実際に聞かされたので確かな情報なのだが、着替えは「リストバンドをはめてこい」という口実で行われるらしい。
指示を受けた1年女子はリストバンドを手にして部室裏に移動する。脱ぐ順番は最初にブルマ、次が上着のシャツ、そしてパンティー、ブラと決められているそうだ。必ず全裸になってからリストバンドをはめなくてはならない。
そして再び同じ体操服を着るのだが、その時にはブラ、シャツ、パンティー、ブルマの順番らしい。もし順番を間違うと、その日はブルマなしとか、ひどいと全裸で練習しなければならないそうだ。
この指示の何が残酷かと言って、上の道路からも見えるような場所で着替えるのに、必ずいったん裸になって恥ずかしいところを全部さらけ出さなくてはならない点だろう。
特に下を先に脱がせたまま、最後まで穿かせないところに女の陰湿さを感じる。
部室裏に来たテニス部女子は、脱ぐ必要のないブルマを下ろし、パンティーも下げて、おっぱいを晒してすっぽんぽんになったまま、そそくさとリストバンドをはめていく。
どんなに急いでもつるつるの生尻も露出した胸も見られることは確実だ。股間だけは少しでも見られないように、両足をクロスさせた極度の内股姿勢で、唯一視線が来ない部室の方を向いて身をくねらせたりしている。なんとも卑猥な光景だ。
『ぶっちゃけ、ありえないって。最初の頃はホント泣きそうだったよ。あんたにモロ見られた日なんて、本気で口封じ殺人考えたらね。あっははは……って、今度ガン見したら、マジで執行するから!』
というのが犠牲者であるクラスメイトの弁である。ちなみにその娘もけっこう可愛いから、クラスの男子には人気があったりする。
最初に着替え罰を目撃してからは一週間は目も合わせてくれなかったが、このガン見事件以来、変なことで話をするようになり、今ではまあ友達関係は維持できていると思う。
一応、弁解しておくと、俺はガン見していたわけではない。
脱いだ衣服は丁寧にたたんで同じ場所に重ねておくというルールもあるそうで、女の子たちはぱっぱと脱ぎ捨てることはできないのだ。
ブルマを脱いではたたみ、パンティーを下ろしてはまたたたむ。着る時も同様に一枚ずつ服を取って身に着けていく。
俺がたまたま見た時には、その娘はちょうどブルマを下ろしたところだった。クロスした足のつま先から緑のブルマを抜き取る際には、白いパンティーが貼り付いた可愛いヒップが揺れているのを見ることができた。
しかし次に、少ししてからつい無意識に確認してしまったクラスメイトは、とんでもない格好になっていた。最後のブラを外し終えてたたむところだったのだ。
女子部室の向こうのグラウンドでは、休憩中のサッカー部が彼女たちの着替えを眺めていた。
サイドからの視線を避けているうちに、俺が見ていないと思った彼女はこちらに完全に背を向ける状態で前屈姿勢になってブラを置き、リストバンドを取り出しているところだった。
立った状態から膝を曲げることなく、思い切り生尻を突き出しての前屈。そう言えば、着替えている子がしゃがむところはみたことがない。おそらくはそれも禁止事項なのだ。
女同士だから、ありとあらゆるカード策を知り尽くしていて、防御をさせない規則を作り上げているのだろう。
ほとんどの子は身体がそこまで柔らかくないので、両足を揃えての完全な前屈は無理で、そのために左右に軽く足を開いて身を屈めている。それは彼女も同じだった。
肩幅以上に開脚しての立位体前屈。彼女のすべてが鮮明に目に飛び込んできた。
当の本人は見られていることに気がついていないから、そのまま衣服をたたんでいる。その間、ずっと晒されたあそこは丸見えで、時折お尻までもが軽く左右に振られている。
頭に血が上って、ぼーっとしたままでその光景を眺めていた俺は、自分でも気がつかないうちに声を出してしまっていた。
『すっげー……。丸見えだ………………』
前屈した彼女の動きがピタッと止まった。首が動いて、足の横から覗いた顔が、俺の視線とばっちり合う。彼女は素早くお尻の間に手を回すと、跳ね起きた。
『いやあっん!!』
悲鳴だけは可愛かった。部室の壁際まで飛び下がった彼女は、両手を身体に巻き付けるようにして、おっぱいとあそこを完全に隠す。
俺を睨む目は心底怖かった。呪い殺されてもおかしくないような視線。この時、どんなに見た目が可愛くても、この女だけはだめだと俺は心に誓った。
彼女は俺がずっとその瞬間を狙っていたと勘違いいるようだ。見てくれが良いと自意識過剰になる気持ちもわからなくはないが、その誤解は今も本当には解けていないだろう。表面上は許してくれているようだが、言葉の端々に毒を入れてくる。
いまでは逆に俺を陥れようとしているのではないかという言動を取る時もあり、俺から彼女への恐怖心は消えていない。
『お前は本質的にMなんだよ。気が強い女が好みだし、言い寄ってくる女は昔から性格悪いしな』
悪友のユージにはそう言われたことがあるが、自分ではただの面食いだと思っている。
あれを見ているとバレー部はまだ配慮があるように思えてくる。かわいい女ほど意地が悪いと言うか、女子の怖い部分を見せつけられるようで複雑な気持ちだ。
幸いにしてかどうかはわからないが、本日はテニス部は罰を受けていないようだ。部室裏はがらんとしていて、バレー部以外には誰もいなかった。
1年生は草と埃にまみれた地面に手を付けて、まず腕立て伏せを始めた。
「「「いーち」」」
「「「にいーっ」」」
部室のすぐ裏だから、手を抜くことはできない。少しだけ開いている部室の窓から、いつ先輩が覗いて監視するかもしれないのだ。見られていなくても大声だけは張り上げて、中にいる先輩たちに文句を付けられないように気をつけながら腕立て伏せを続ける。
「「「50」」」
「「「51」」」
地面と向き合って黙々と運動を続ける俺の耳が、何か違和感のある音を聞きつけたような気がした。
「「「75」」」
「「「76」」」
『……ますっ!』
「「「77」」」
「「「78」」」
最初は気のせいかと思っていた。別に聴力が特別良いというわけでもない。しかし、何度かその音を耳にするうちに、どうやらそれが女性の声ではないかと認識できるようになった。
『あッ……』
『……ぁう!』
短いくぐもったような声。切羽詰まったような響きにも思える。
(もしかして、桜木先輩?)
直感したのはやはり0年に堕とされている美人先輩のことだった。彼女はいまもこの壁の中で、執拗な取り調べを受けているに違いないのだ。
さっき2年生が部室のドアを閉めた時に、聞こえた鍵の音が耳に残る。密室となったミーティングスペースで男子部員に囲まれて、ただひとり尋問を繰り返される美しい女子部員。牢屋に囚われている姫君の姿を連想して、俺は集中力をなくしていく。
『お願いします……!』
今度のははっきりと聞き取れた。間違いなく女の人の声が部室の中から聞こえた。ほぼ確実に桜木先輩だろう。腕立て伏せをしながら、隣の奴と顔を見合わせる。
(なんか、聞こえないか)
(ああ。桜木先輩じゃないかな)
他のチームメイトも気がついているようだ。カウントは続けながらも、壁の中から聞こえてくる声に耳をそばだてる。
『……うぐッ』
『……とうござ……ます!』
押し殺したような我慢する声と、ハキハキとした受け答えの両方が、一定の間隔で漏れてくる。
(あーーーーー! 気になる。気になる。すっげー気になる!!)
「「「98」」」
「「「99」」」
もっと声を聞きたくて、ついカウントの音量が下がってしまう。
「おーい。声出していくぞー!!」
真面目な部員が気がついて、みんなにハッパをかけると、再び大声の合唱に戻る。そんなことが何度か繰り返されていた。
「「「120」」」
「「「121」」」
回数が100を越えて少し経った時だった。誰の耳にも明確に聞き取れる、一際大きな悲鳴が、バレー部室の中から聞こえた。
『ああぁぁぁーーーーーーッ!!』
1年生は思わず顔を見合わせた。0年生、桜木真衣の悲鳴。今度こそ間違いなかった。何の前触れもなく、先にも後にも打撃音などの懲罰を思わせるような音は何も聞こえなかった。
『……指導……とう………………ございます!』
半ばやけになっているような、嫌々言っていることがよくわかるお礼の言葉の音量も大きくなっている。
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