投稿作品集 > バレー部の躾 before p.01

このストーリーは、bbs にて、KRE 氏より投稿していただいた作品です。 この作品の著作権は KRE 氏にあります。



(1)

先輩に呼ばれて体育館に入った俺たち1年生は、ただならぬ緊張感が漂うピリピリとした空気に圧倒された。監督やコーチが怒っていることは容易に想像がついたが、その怒りのレベルが尋常ではないことも同時にうかがえた。

「男子1年、マットと跳び箱を持ってこい!」

男子部の監督からいきなり怒声が飛んできた。

「はいっ!」

俺たちは大声で返事をすると、体育倉庫に向かってダッシュした。倉庫の中に置いてあるマットと跳び箱を協力して持ち上げる。張り詰めた空気に反して、俺たちの表情はどことなく緩んでいた。

「……なあ、これって?」
「ああ。0年降格だろう」
「だよな。今日は楽できそうだし、ツイてるな」

マットと跳び箱。バレー部の練習には関係なさそうな二つの用具が要求される時は、それが厳しい懲罰に使用されるためだとだいたい決まっていた。


0年生への降格。

1年以下の身分として基礎練習はおろか態度まで徹底して鍛え直される、バレー部では一番重たい罰である。そして、マットと跳び箱が必要とされるのは、降格されるのが女子部員である場合に限られていた。

つまり、今日は俺たち男子は安全であるだけでなく、女子部への体罰を手伝う立場にあることを意味しているのだ。

「誰だろうな、何をやらかしたんだろう?」
「レギュラーは大会で優勝したばかりだから、2年か1年じゃないな」
「俺は2年の平原先輩がいい!」
「そうだな。個人的には同じ1年がいいな」
「1年っていうよりも、柳瀬菜那香……とか?」

「なんだよ、バレてる? けど柳瀬ってけっこういいと思わないか。あいつが0年にされたら俺、マンツーマンで指導したいよ」
「否定はできないな。1年の中じゃ柳瀬はかなりいいよ。可愛いし、バレーでは珍しいパイの持ち主だし」
「そうそう。夏前の時は惜しかったな。柳瀬も落とされれば良かったのにギリギリで課題クリアしてさ、パンツ一枚で許されて……。おっぱいは見れたから良かったけど」

「言われてみれば、柳瀬ってまだ一度も降格なしか。プレーも優秀なんだな」
「そういう娘が降格するからいいんじゃないかよ」
「お前は柳瀬と同じクラスだろ。想像してみろよ。あいつが平原先輩みたいに、マッパで三つ指ついて『しごいてください』って言うんだぜ?」
「教室の中で『チェック』することもできるんだぞ。クラスのみんなの前で小っ恥ずかしいケツ丸出しにされるくらいなら、何でも言うこと聞いてくれるんじゃね?」
「まあまあ、いいじゃないか。すぐにわかるんだから。そろそろ行くぞ。グズグズしていたらとばっちりが来る」


倉庫からマットと跳び箱を運び出した俺たちは、体育館のど真ん中にそれを設置する。床にマットを敷いてその上に跳び箱を置くのだが、踏み切り板などは設置しない。

また、跳び箱の段数も3段しかなく、小学生が飛ぶ段数よりも低い。さらに、一番上の段には柔軟運動用の柔らかい小型マットを拡げずに丸めたまま乗せておく。

本来の使い方からすれば全くおかしな設置方法だが、これで良いのだ。いま組み上げているのは跳び箱ではなく、女子部員たちを震え上がらせる恐怖の受刑台なのだから。

その証拠に、壁際に整列して俺たちの動きを見守っている女子たちの顔は、一様に凍り付いている。

俺は話題に上った柳瀬菜那香の姿を探した。白い半袖シャツに緑色の学年色のブルマ。1年だから練習用のユニホームさえ着ることが出来ず、普段の体育のままの姿で正座をしている柳瀬は、両手を膝に当てて神妙に俯いている。

別の方向を見て設置作業を進めていた仲間が、驚きの表情でこっそりと俺に肘打ちをしてきた。

(お、おい。あれ……)


壁際に並んだ部員たちとは90度ずれた舞台下の床に、六人のレギュラーメンバーがユニホーム姿のまま正座させられていた。3年生が四人、2年生が二人である。

(まさか。降格するのは全員レギュラーなのか!?)

予想外のメンツに、俺も驚いた。六人だけが列とは別に座らさせているところを見ると、今回の罰を受けるのはおそらくこの六人なのだろう。

にわかには信じられない。今年のレギュラーは対戦成績も良く、つい先日の夏の全国大会では優勝していた。

優勝は俺たちの学校では『当然の結果』であり、特に評価されるようなことではない。反対にもし優勝できなければ、それこそ『異常事態』なのであり、即日から血を見るような特訓が繰り返されるのだという。

実は昨年度春の前回大会では、女子部はベスト4に甘んじている。先輩から聞かされた話だが、この時のレギュラーは通常なら大会後は引退にも関わらず、全員が0年に降格。卒業式の前日まで特訓されていたそうだ。

その恐怖を身近で体験している今年のレギュラーは、手堅く試合を進めてストレート勝ちで優勝。罰を受ける心配はないはずだった。


「全員、起立!」

準備が整った体育館の中央で女子部の監督が大声で命令すると、俺たちを含む男女全部員が一斉に立ち上がってビシッと気をつけになる。

「いいか、お前ら。今から我が校の恥さらしどもを紹介する!」

ジャージ姿に竹刀を持った監督は、担当するのが女子部というだけで監督本人は男性である。

うちの学校はコーチや監督は男女の区別なく指導に加わっている。現在のチームでは監督は男女ともに男性で、比較的名が知れた名将と言われる人が率いていた。

「3年は知っていると思うが、今日はうちの練習について報道陣の取材があった。ところがだ。前で正座している一部の部員は、先の大会で優勝したことに浮かれて、へらへらと気のないプレーをして紅白戦で負けた。

それだけでも恥ずかしいのに、こいつらはテレビのインタビューでなんと言ったと思う? 『みんなで頑張って優勝できたので、努力が報われて良かったです』だ」

監督はここで竹刀を大きく振り上げて、床に叩きつけた。

「馬鹿か!」

怒声が体育館に反射してこだまする。


「優勝は当たり前だ。お前たちの目標は、ひとりひとり違うと思うが、日本代表とかオリンピック金メダルとか、もっと高みを目指すのと違うのかっ!」

内容だけを聞くと、そんなに激怒することのほどでもないと思えるが、監督の目には優勝して浮かれているように写ったのかもしれない。

「さらに、だ。こいつらは俺に恥もかかせやがった」

怒りが収まらないといった風情で、監督は続ける。

「取材の中で『強さの秘密』とやらを聞かれたから、俺は『日頃の鍛錬だ』と答えた。ついでに、こいつらにも目立つ舞台を用意してやろうと思って、報道陣の前で筋トレを見せてやったんだ。バッチリ決めれば格好良くてヒロインだな」

突如として、手に持った竹刀が正座している六人に向けられた。

「で、どうだったんだ。加賀ぁ!?」

呼ばれた加賀先輩はレギュラーの中でもキャプテンだ。いわば女子部のトップ。超高校級と言われる高速サーブに強烈なスパイクを放つ先輩が、いまは子猫のようにおとなしい声で答える。


「動きが揃いませんでした」

「声が小さいぞ!」

監督に怒鳴られて、加賀キャプテンは叫ぶようにして繰り返す。

「動きが、揃って出来ませんでしたッ!」

監督は無視して、壁際の部員を睨み付ける。

「小学生か。1年以下だよな……」

今度は竹刀が1年女子に向けられた。

「おい、そこの1年。お前だ」

指されたのは柳瀬菜那香だった。顔面蒼白で返事をする。

「は、はいっ」

「返事は短く一回」

「はいィッ!」

よほど緊張しているのだろう。声がうわずっている。無理もないが。


「お前らは先輩から注意されているだろう。例えば、足上げ腹筋は何を気をつけるんだ?」

監督の問いに、柳瀬は合成音声のような声で答える。

「はい。手足は、まっすぐに伸ばすこと。全員の、角度を揃えること。正確な、角度に合わせること。上げ下ろしの動作も、揃えること、です!」

「ほらな。できないとどうなるんだ?」

「はい。罰トレを、受けさせていただきます」

監督は正座しているキャプテンを振り返る。

「加賀。1年でも知ってるぞ」

加賀さんは苦虫を噛みつぶしたような表情で言葉を絞り出した。

「申し訳ございませんっ!」

「……それにだ」

キャプテンの言葉が終わらないうちに監督はそっぽを向いてしまい、また柳瀬が睨まれる。


「さっきの1年。お前おかしな返事をしたな? 返事もろくに出来ない奴がバレーなんて100年早いぞ」

「はいっ。申し訳ありませんっ」

「立て。前に出ろ」

静かな落ち着いた命令だったが、柳瀬は完全にびびっていた。声だけでなく、動きもロボットだ。監督のすぐ隣に呼ばれた彼女は、そのまま背中を押されるようにして、反対側に並んでいる俺たち男子の方へと押しやられた。

よろけるようにして出てきた柳瀬は、ブルブルと微かに震えている。

「罰トレだったな」

独り言のようにつぶやく監督だったが、柳瀬は過剰に大きな声で反応した。

「はいっ。1年、柳瀬菜那香。罰トレご指導、ありがとうございます!!」

「うむ」

監督は大きく頷くと、とんでもないことを口走った。

「ブルマを下ろせ」


男女両方の部員がはっとした表情を浮かべる。この程度の体罰はうちではよくあることだったが、それはシゴキの一貫の中で自然に行なわれるものであった。

1年全員が脱がされることも珍しくはなかったが、全部員が注目する中でたった一人だけが脱がされるという状況は、そうそうあるものではない。

「はいっ」

しかし、柳瀬は即答した。ロボットの動作のまま、緑色のブルマに手をかける。前から男子が、後ろから女子が見ている中で、ブルマはあっけなくスルリと下ろされてしまった。

シューズを履いたままの足首から、緑色の布が取り除かれる。直立の姿勢から膝を曲げないままで一連の動作を行なっているため、男子の方からはそうでもないが、女子の方からは突き出されたお尻が丸見えになっているだろう。

そのせいか、1年の何人かが罰を受ける仲間の姿を見ないように視線を逸らす。

白の無地。何の色気もないスポーツ向きのパンツを見せたまま、気をつけの姿勢に戻った柳瀬に、すぐさま次の命令が出される。

「それも脱げ」


ちょっとジュースでも買ってきて。パシリにお買いでもさせるような素っ気なさで、深刻な指令が下された。

年頃の女の子にとって到底承諾し得ないばかりか、そんな命令を受けること自体耳を疑う内容だが、柳瀬は聞き返しもせず明瞭に受け入れる意思表示をした。

「はいっ」

ブルマの時と同様に、何の躊躇もなく、白いパンティーに両手がかかる。

(ああ……)
(ひぇーー)

1年女子の間からは思わず動揺の吐息が漏れる。

(ゴクッ。マジかよ……)

俺の隣で呻くようにつぶやいたのは、さっき倉庫で柳瀬の0年降格を期待していた奴だ。

練習ではミスが少なく、こいつを悔しがらせてきた柳瀬菜那香だったが、その最後の一枚は絶対権力によって思わぬところで、いとも簡単に失われようとしている。


柳瀬が上体を前に倒した。

両手が太腿に沿って下がるのだけが見えた。肝心なところは頭で隠れている。正面に立っている女子部員たちの表情が、一足先に動揺するのがわかった。彼女たちからはいままさに、あそこが丸見えになっているのだろう。

柳瀬が起き上がった。ようやく俺たち男子部員の番だ。

頬が緩む動きを押さえつけるのに精神力を使ってみるが、どうしてもヒクヒクと動いてしまう。よく知っている同級生。バレー部1年では一番見目麗しい女子高校生の下半身が、男子全員の前で露わになっていた。

(おおうっ)

隣の奴が唸る。往生際の悪い抵抗など認められるはずもない。柳瀬の両手はしっかりと体側に付けられて指先まで伸びており、前を隠そうという素振りは全く窺えなかった。

だが、それは柳瀬がまったく羞恥を感じていないということではない。


やや内股になって懸命ににじり合わせされた太腿は震え、何よりも人気を集めるその美貌が恥辱に苦悩している。頬に朱が差し、眉は折れ、唇はきつく結ばれていた。

よく鍛えられた程よい太さの両脚。形良くすらりと並んだそれは張りがあって滑らかだ。

白いシャツの裾は肝心なところを覆うにはあまりにも短すぎた。ウエストの下から股間へと続く女性特有のなだらかな丘は、幕を上げられてしまったように余すところなく見えてしまっている。

やや小高い下腹部の先、足の付け根には、柳瀬の愛らしい顔からは想像しにくいほど濃くて密度の高い陰毛が茂っている。

しかし、それは幸運とも言えた。意外性に人目を惹いてしまってはいるが、黒い森林のガードは彼女の女の部分を完璧に守っていたからだ。少なくとも立っているところを前から見るだけでは、花園を垣間見ることは出来ない。

「次はシャツだ」

監督の指示はまだ続く。おそらく決死の覚悟でパンティーを下げたに違いない美少女に、まだ終わっていないとばかりに無神経な命令が降りかかる。

「はい」

下を晒したことで吹っ切れたのか、柳瀬は淡々と上着を脱いでいく。


それでもその作業をしている間は下半身はずっと無防備なままだ。男子からは股間に熱い視線が、女子からはお尻を避けるようにしながらもチラチラとした盗み見が投げかけられている。

女の子の核心部分を早々にさらけ出させて人目に晒すような順序の脱衣指示は作為的で、明らかに指導以外の悪意があるとしか思えないが、それを抗議する者は皆無だ。

「最後だな」

「はい」

ここまで来てブラジャーが許されるはずはない。大きな胸をしっかりと押さえつけるスポーツブラが上に捲り上げられると、締め付けから解放された女性の象徴がぷるんとこぼれ出た。

スポーツタイプのブラは首を通して取り払う必要があるため、柳瀬は両腕を上げて引き上げる。ことさら強調される格好になった乳房に、男たちの視線が猛然と襲いかかった。

(やっぱデカいわ。乳首も綺麗なピンクだし、無駄にジャンプとかさせたくなるね)

仮に両手で隠したとしても腕からこぼれ出てしまうことが確実なくらいのサイズ。スポーツ選手としては珍しいかもしれない。小さめの乳首に大きな乳輪が目立っている。

ブラが外された反動でたぷんと揺れる様子を見ているだけで、マシュマロのような実の柔らかさが伝わってくる。


全ての衣服を失った柳瀬菜那香が直立不動の姿勢に直る。胸も股間もガードできない彼女は、まともに前を見ることが出来ない。

彼女の視界には左から右までずらりと男子部員が映っていて、その誰もが自らの肢体を鑑賞していることがわかるのだから酷である。それでも下や横を向いてしまえば監督から怒られることは必至なので、柳瀬は目を泳がせて視姦に耐えている。

恥ずかしいところには常に複数の視線が注がれっぱなしになっているのだが、それ以上に柳瀬を苦しめているのは可愛らしい顔を見られることだろう。

パンティーを剥ぎ取られたとは言え、濃く茂った陰毛にガードされた中身を確認することが難しいとわかった男どもは、主なターゲットを見事なおっぱいと赤面する顔へと変更していた。

首筋まで真っ赤になって必死に恥辱に耐えている可愛い女の子を目で追い詰めるのは、『辱めていたぶる』という黒い男の本性を存分に充足させてくれるゲームだからだ。

(どこも隠せなくて、恥ずかしいでしょ?)
(その立派なおっぱいをよく目に焼き付けておいてあげるよ)
(顔真っ赤にして可愛い!)

1年生ではナンバーワンと言われる美貌の柳瀬は、どっちを向いても必ず自分を観察する男の顔と鉢合わせになってしまい困窮していた。


体を一切動かすことが出来ない彼女は、首から上だけを落ち着きなく左右に動かして目線の直撃を回避している。

それでも数秒に一度くらいの割合で誰かと目が合ってしまうと、逃げるように視線を外すしてそっぽを向く。しかし、その向いた先にも無数の犯す目が存在するため、つぶらな瞳は一時も止まることがない。

右、左、上、下。あらゆる方向に逃げてもどうしようもないことを自覚する。

それでも堪え忍ぶしか方法がないんだと思い知らされると、両手の指がきゅんと握りしめられた。健気な仕草に、俺もついつい辱めに荷担したくなってしまった。

(足は白くて綺麗だよな。毛が濃いのは意外だけど手入れはしているみたいだし、これはこれで良いか……。どっちかっていうと、ややモリマンの方が気になるな)

同級生の肉体を下からじっくりと吟味していく。

(腰のくびれもいいな。お臍の形はちょっといまいちか)

上半身は顔と一緒に楽しむ。

(柳瀬はなんと言ってもこのおっぱいだよな。さすがのボリュームにピンクの乳首。恥ずかしがり方も可愛いけど、それって余計に注目されちゃうよ。もっと堂々としていた方がいいんじゃないかな)


男は残酷な生き物だ。恥ずかしがったり、嫌がっている女の子は余計に見たくなってしまう。

眉をハの字、口をへの字にして睫を揺らす様子は『お願いっ、見ないでぇ』と大声で叫んでいるかのようだ。それこそが見たい男子にとっては最高の見世物だった。

胸と顔を交互に眺めているうちに、ふと視線がモロに合ってしまった。

(よっ、柳瀬!)

俺は軽く挨拶でもするようにニコッとした。悪気はなかったが、柳瀬にとっては逆効果だったようだ。

「やだッ!」

大きく目を見開いて、咄嗟に左方向に目を逃す。しかし、逃げた方向の男に視姦されると、すぐにまたこちらに逃げ戻ってきた。その瞳を余裕を持って捕まえる。

「うう……っ」

柳瀬はまた逃げる。そんなことを数回繰り返す。羞恥で口が乾くのか、ちろっと出された舌がリップを軽くなぞる。下唇が噛みしめられる。そして、とうとう目尻には涙が滲むのが見えた。


「空気椅子だ」

さんざん時間稼ぎをされたあげくに、監督から不必要に重い刑が言い渡された。

「はい……」

がっくりとうなだれながら、柳瀬の腰が低く落ちる。両脚を肩幅まで開いて膝を曲げ、両手をまっすぐに前に突き出して、スクワットの途中のような格好で静止した。

腰を落として真正面に向かって両脚を拡げてしまえば、もう陰毛のガードも意味をなさない。

(すっげー。けっこう綺麗な色だぜ)

黒い茂みの中に、淡い色をした肉襞がちらりと見えていた。

スケープゴートにされてしまった話題の柳瀬は、0年に降格せずとも、全部員にその秘密を知られてしまうことになった。明日からは胸やあそこの形や色が話題に上るのだろう。


監督は柳瀬が完璧な空気椅子の姿勢になるのを見届けてから、加賀キャプテンの方へ向き直る。

「おい、加賀。1年でもしっかりできてるぞ。お前らは……何だッ!!」

今までで一番大きな怒りが爆発した。ビリビリと空気を揺るがすほどの怒鳴り声に、正座したままのレギュラーたちもすくみ上がる。

「も、申し訳ありませんでしたっ!」

六人全員が頭を下げるが、監督は収まらないようだった。

「ごめんで済んだら、どのチームでも優勝できるんだよ。一回のミス、一回の気の抜けたプレーが致命傷になるんだ」

体育会特有の無理な屁理屈で追い込んでいく。

「特に桜木。貴様は脱ぐのも遅れたな。記者の前でブルマを脱ぐのは恥ずかしいのか。色気づいたのか。覚悟がないならやめちまえ!」


俺は二度びっくりした。ひとつは報道陣がいる前で、監督が女子選手のブルマを脱がせようとしていたこと。確かに練習ではあり得ることだったが、まさか人前でさせるとは。躊躇しない方がおかしいだろう。

もうひとつは、脱がされることを指示された選手が、あの桜木先輩だということだ。女子バレー部のエースで超美人。プレーも素晴らしいので、めったに罰を受けることはない人だった。

(まさか、桜木先輩が降格メンバーに含まれていたなんて)

そんな重大なことにいまさら気がついた俺の心臓は、とたんに鼓動を早める。柳瀬には悪いが、恥部を晒して空気椅子をしている同級生への興味は、急速に薄れていった。

(あ、あの、桜木先輩が……罰を受ける。それも0年降格……ということは、これから、俺が持ってきた跳び箱で……!?)

もうすぐ目の前で起こるであろう光景を想像するだけで、俺は平常心ではいられなくなっていた。


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