投稿作品集 > 鬼姫 001 鬼姫登場 p.01

このストーリーは、bbs にて、hiro 氏より投稿していただいた作品です。 この作品の著作権は hiro 氏にあります。



あれは、3年生になって、初めての体育の授業でのことだった。

「また、ブルマー、忘れちゃった」

ペロッと舌を出しながら、佳奈は言った。

今までも、佳奈は何度もブルマーを忘れ、その度に仮病を使って体育を見学していた。これまで体育を担当していた佐々木先生は、男性と言うこともあってか、女子生徒には甘かったので、特に何も指導されることはなかった。

「佳奈、大丈夫? 今年から、噂の鬼姫だよ?」

「まぁ、忘れた物は仕方ないし、まさか、パンツで授業を受けろなんて、言わないだろうしね」

心配する私を余所に、佳奈は悪びれる様子も無く答えた。

ジャージの着用が禁止されている私たちは、半袖体操服とブルマーに着替え、駆け足でグラウンドに移動した。そんな中、佳奈はセーラー服姿でグラウンドに向かった。


グラウンドに到着すると、まずはグラウンドを走る。男子は五周だが、私たち女子は三周。続いて、屈伸や伸脚、手足のストレッチなどの準備運動を行い、綺麗に整列して担当の先生が来るのを待つことになっている。

私たちは、いつものように会話をしながら準備運動をしていると、授業の開始を告げるチャイムが鳴り響いた。

ふと、グラウンドの隅を見ると、鬼姫こと姫野夏樹先生の姿があった。他の先生は、チャイムが鳴ってから職員室を出るので、こんなに早く来ることは無いのだが……。

「貴女たち、何をチンタラ走っているの!! もうとっくに、授業時間は始まっているわよ!!」

いきなりの先制パンチに、私たちは動揺していた。

ようやく準備体操を終え、私たちは先生の前に集合した。勿論、その中に佳奈の姿もあった。


「貴女だけ、どうしてセーラー服なの?」

「昨日から、少し具合が悪くて、見学させて貰おうと思って……」

「どこが、どのように悪いの?」

「お腹が、差し込むように痛くて……」

今までの佐々木先生なら、こんな質問は無かったのだが、佳奈は躊躇することなく堂々と答えた。

「お腹が痛いだけなら、授業は受けられます。体操服に着替えてきなさい」

「えっ?」

「聞こえなかったの? 体操服に着替えてきなさい!!」

「今日は見学させて貰うつもりだったので、体操服は持っていません」

佳奈は、ここでもうろたえることなく堂々と答えていた。そんな時だった。


バシーーン!!

鬼姫のビンタが炸裂した。

「具合が悪いなんて言って、本当は体操服を忘れただけじゃ無いの?」

さっきまでとは違う、少しきつい口調で鬼姫は佳奈に質問した。流石の佳奈も、動揺しているようだった。

「体操服を忘れただけなんでしょ!! はっきり言いなさい!!」

何も答えられない佳奈に、鬼姫は更に質問を浴びせた。

「朝から具合が悪くて、見学させて貰うつもりだったので、持って来ませんでした」

蚊の鳴くような小さな声で、佳奈が答えた。

「まぁー。いいわ。まずは、体操服を忘れた罰として、お尻叩き100発。準備して!!」


抵抗する気力を失ったのか、佳奈は素直にお尻を鬼姫に突き出した。次の瞬間、鬼姫が佳奈のスカートを捲ったのだ。

「きゃー!!」

佳奈は、急いでスカートの裾を押さえた。

「何をやっているの!! お尻を叩くって言ったでしょう!! 早くスカートを捲って、準備しなさい!!」

「先生、そんなの、あんまりです」

「何が、あんまりなの!! 早くしないと、男子の前に連れて行って、叩くわよ!!」

『男子の前』この言葉を聞いて、佳奈は素直になった。自分でスカートを捲って、鬼姫にお尻を突き出した。


「貴女のパンツの色は何?」

「ピンクです」

素直に答える佳奈に……。

「私を、馬鹿にしているの!! ピンクぐらい、言われなくても見れば分かります!!」

「でも、先生が下着の色を聞いたので……」

馬鹿正直に答える佳奈。そんな佳奈に……。

「校則で、中学生らしい下着を着用することって、決まっているよね。なのに、どうしてピンクのパンツを穿いているのか、私は聞いているのです」

「そ、そ、それは……」

佳奈は、何も答えられなかった。


『中学生らしい下着を着用すること』と校則で決まっていることは、私たちも佳奈も充分に理解してる。でも、中学生らしい下着って、どういう下着なんだろう……。

佳奈は、学校の後に俊輔君とデートの約束をしていた。まだキスもしたことは無いようだが、もしもの時の為にオシャレな下着を穿いていたのだろう。

「今から下着検査を行います。全員、ブルマーを膝まで下ろし、よく見えるように体操服の裾を捲りなさい!!」

鬼姫が怒り口調で私たちに指示をした。

身体測定や内科検診など、私たち女子も男子と同様にパンツ一枚の姿にさせられた。だから、女性教師に下着を見られるくらいは慣れていたが、グラウンドの真ん中でパンツを見せろと言われても、素直に従えるものでは無かった。

だが、鬼姫の噂や、佳奈に怒っている光景をみると、恥ずかしくても素直に従うしかないことは私にも分かった。

私は、ブルマーのウエストゴムに手をかけたが、やっぱり脱げなかった。隣を見ると、沙紀ちゃんがブルマーを膝まで下ろしていた。前を見ると陽子ちゃんも有紗ちゃんも、ブルマーを膝まで下ろしていた。


私も、慌ててブルマーを膝まで下ろした。

既に桜も散ってしまったが、まだまだ寒かった。時より吹く冷たい風をお股に受けると、たった一枚の違いのはずが、とても冷たく感じた。

全員がブルマーを膝まで下ろしたのを確認すると、鬼姫がチェックを始めた。前だけではなく、後ろも念入りにチェックされた。

「貴女のパンツ、水色でしょう。パンツは白!!」
「貴女のパンツも薄いけど黄色ね。パンツは白!!」

鬼姫が中学生らしくないと判断した生徒が、注意を受けている。私は、不安になりながら順番を待った。

そして、遂に私の番になった。鬼姫がチェックをしている。同性とはいえ、じろじろと見られるのは、とても恥ずかしかった。

「田中由真さんね。貴女のパンツも校則違反ですよ。ベースが白でも、ここまで苺の柄が付いてると駄目だよね」

やっぱり注意を受けた。でも、純白無地の下着なんて、小学生の頃でも穿いていなかったかも……。その後も……。


「貴女、色が白でも、こんな小さなパンツは校則違反ですよ!!」
「貴女も貴女も、小さいパンツを穿いているわよ。こんな小さなパンツが中学生らしいパンツと言えるわけ無いでしょう!!」

鬼姫の怒りが頂点に達していく。私たちは、ブルマーからパンツが食み出ないように、体育のある日は小さめのパンツを穿いて対策しているのだ。そんな乙女に気持ちを察することなく……。

「今日は初めての授業だから大目に見るけど、次も、こんなパンツを穿いていたら、分かっているわね!!」

意味深な言葉で鬼姫は締めくくったが、逆に意味深な言葉だけに、私たちには動揺が広がっていた。

「授業に戻るわよ。ブルマーを穿きなさい。でも、その前に、貴女へのお仕置きね」

そう言うと、鬼姫は佳奈に近づいて行った。

「貴女の名前は?」

「本岡佳奈です」

「そう、覚えておくわね。じゃあ、始めるわよ。きちんと数を数えておきなさいね」


バシーーン!!

「い、いたぁーいい!!」

「痛くなかったら、お仕置きにならないでしょう!! カウントが聞こえなかったわよ!!」

「1」

「遅い!! もう一度、一から!!」

バシーーン!!

「1」

バシーーン!!

「2」

バシーーン!!

「3」

 ・
 ・
 ・


バシーーン!!

「きゅうじゅううよん……」

バシーーン!!

「きゅうじゅうほおお……」

「ちゃんとカウントが聞こえなかった。もう一度、95!!」

バシーーン!!

「きゅうじゅうご……」

 ・
 ・
 ・


バシーーン!!

「きゅうじゅきゅう……」

バシーーン!!

「ひゃく……」

痛かったのだろう。佳奈は、すぐにお尻に手をやった。そして、スカートを整えた。

「誰が、スカートを戻して良いと言ったの? まだまだ、反省が足らないみたいね。でも、今日は初日だし、許してあげるけど、今度、今みたいな勝手なことをしたら、お仕置きを追加しますよ!!」

「はい……」


「今日は、本岡さんのせいで授業が潰れてしまったわ。後の時間は、全員でグラウンドを走っていなさい。分かっていると思うけど、さっきみたいにチンタラ走っていたら、男子の前でお尻を叩くわよ。パンツも脱がせてね」

私たちは、固まってしまった。

「貴女も、セーラー服で走りなさいね」

そう言って、鬼姫は佳奈の背中を押した。佳奈が走り出したのを見て、私たちも走った。『パンツも脱がせて』という言葉が効果的だったのか、私も含め全員が一生懸命だった。

五周ぐらい走った時だった。

「ちょっと、ちょっと停まって!! 全員、STOP!!」

鬼姫の指示が飛んだ。私たちは、急いで鬼姫のもとに集まった。

「そこ!! 今、何をした!!」

「えっ?」


「今、何をしたと聞いているのよ!!」

「下着が汗でくっついて、気持ち悪かったので直しました」

紺野陽子ちゃんが、素直に答えた。

「前任の先生に言われなかったぁー? 体育の授業中にブルマーを触らないようにって?」

「言われました」

「だよねぁー、じゃぁ、なんで触るのかなぁー?」

「す、すみません……」

「次、触ったら脱がすよ、ブルマー!!」

「えっ!! あっ、はぁ、い……」

陽子ちゃんは、俯いてしまった。


「他の人も同じね。次に触った人は、誰であってもブルマーを脱がせるから、そのつもりでね」

この言葉が刺激になったのかどうかは分からないが、その後の授業でブルマーを触る者は無かった。

そして、授業の終わりを告げるチャイムが鳴り響いた。私たちは鬼姫の前に集まった。

「本岡さん、次に体操服を忘れた場合は、分かっているでしょうね。それと、今日は下着で注意を受けた人も、次に穿いているのを見た時は、知らないからね」

ここでも、意味深な言葉を鬼姫は発し、授業は終わった。


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