投稿作品集 > 静香と香澄 p.33

このストーリーは、bbs にて、鳳仙 氏より投稿していただいた作品です。 この作品の著作権は 鳳仙 氏にあります。



お尻叩きに浣腸、成人女性として、恥辱極まりないお仕置きを受けたばかりだが、彼女は頗るご機嫌である。それはやはり、静香の秘密を二つ握ったからに他ならない。

そんな上機嫌な範子だが、昼休みには来るべきものが来た。彼女は控え室に呼び出され、歩美、友美、そして未来の前で正座させられた。

「おい範子、お前のせいで皆迷惑したのに、詫びの一言も無いのかよ?」

特に、お尻に落書きされ、笑われながら小娘にお仕置きされた歩美の怒りは大きかった。

とはいえ、メイド長のおかんむり、これは無理ないものだ。

例えば友美と未来、この二人は、お仕置き後は真っ先に歩美の元へときた。そして、お嬢様の指示とは言え、歩美を辱しめた一因について、言い訳もせずに土下座して謝罪を繰り返した。

それに引き換え、範子はそもそもの連帯責任の原因である。それが詫びもせず、のうのうとしていたのだから、歩美の怒りが彼女に集中して当然である。


尤も、範子に苛ついているのは長ばかりではない。

「ねぇ、アンタのせいで私ら全員お仕置きされたんだよ? それを何? 鼻歌で仕事してたよね?」

友美もそう指摘して、憤りを露にした。唯一の後輩、それも仲良しの未来でさえ、口は開かないものの、明らかに冷たい視線を注いでいる。

範子はこれを完全なる失策と覚り、床に額をつけて詫び入る。繰り返し繰り返し、涙声で三人に謝罪した。しかし、歩美は冷淡に顔を背ける。

「いいよ上っ面の謝罪なんか。謝る気がないから、私らをスルーしたんだろっ!?」

口撃は激しい。しかし、範子には返す言葉もない。彼女はひたすら、謝罪を繰り返した。

「ねぇ、それに遅刻の理由は何っ? それもまだ聞いてないけどっ!」

範子を無視する長の横で、さすがに憐れを思ったか、友美がそう聞いた。が、やはり内心の怒りは収まりそうになく、自然に口調は乱暴である。


「……理由ですか……?」

事実、つまり主筋の秘密を話せば、穏便に済むのではないか? 範子には一瞬、そう思えたが、昨夜の話を村岡に聞かれていた事を忘れてはいない。もしかしたら、今も立ち聞きしている恐れがある。

また、ご立腹中の三人に打ち明けたところで、これもまた危険である。万が一信じて貰えねば、いや仮に信じて貰えたとしても、いつどこで主筋や村岡の知るところとなるとも限らないのだ。

つまり、事実は語れない。窮した彼女は、静香の時と同じ理由を述べた。

「す、すみませんっ、うっかり寝坊してしまいましたっ!」

「寝坊~!?」
「お前、ふざけんなよ」
「何すか、それ~?」

先輩二人ばかりか、未来も苛立ちを露にした。範子は再び、低頭伏身、詫び入る他ない。


「おいっ、もう土下座はいいから、誠意を見せろっ!」

こう言ったのは歩美である。すると友美も未来も、同意とばかり頷いた。

「せ、誠意を……ですか?」

「そうだよ誠意だよ。それとも何か? 謝意は口だけか?」

つまりこれは、長からの罰を受けろという事である。拒否すれば無論、孤立は免れない。

「わ、分かりました……。いかなる罰も、お受けします……」

それから間もなく、全裸の範子が、四つん這いでお尻を三人に向けている。だけでなく、左右の臀部に反省とマジックで書かれ、∞の尻文字を空に書かされ続けていた。

無論、足も開いた状態でのそれであるから、秘処も肛門も丸見えである。

「謝意を表すんなら、これくらいは当然だよな? な、範子?」

笑いを含んだ声で、歩美がそう詰る。勿論、友美も未来も笑顔でいた。


「……あい……」

一方で、返事をした範子は茫沱の涙である。これは正しく、今朝のお仕置き以上の恥辱であったろう。

「ほら、動きが鈍いですよっ、範子先輩っ」

ビシィッ!

「ひぐうぅっ! ず、ずびまぜんっ……」

おまけに、尻文字も動きが鈍かったり止まったりすれば、下っぱの未来からの尻打ちが待っていた。これも、範子により屈辱的な思いをさせる為と、歩美の人選によるものだった。

叩き手に未来が指名された時、範子は屈辱を感じつつも、ちょっと安心していた。何故なら未来は後輩であり、日頃助けてやったりしているだけに、手心を加えてくれると思っていたのだ。

ところが暗に相違し、懲擲は手加減ない。おまけに、ちょっと動きがぎこちないだけでも、容赦なく打ってくる。


「何か動きにスムーズさがないねっ。未来、ちょっと喝入れてやってっ!」

「はいっ、友美さんっ!」

必死にお尻を踊らすも、先輩の気紛れな一言で懲擲が見舞われる。しかもそれが笑われながらなだけに、範子の恥辱も苦痛も、半端ではなかった。

『これもあの淫乱のせい……』

範子は自分を罰し辱しめる三人でなく、その無念からくる怒りを静香へ向けた。

八つ当たり、とは満更言えないかも知れない。遅刻の理由を述べられず、この憂き目に遇うのだから、少なからず静香と祐輔にも責任はあろう。

『今に見てなさい……。今に、思い知らせてやるからっ……!』

範子の尻文字ダンスは、昼休み終了五分前に終わった。お尻は見るも無惨な有り様で、彼女の頭の真下の床には、涙と鼻水で小さな水溜まりが出来ていた。

「よし範子っ、お前の誠意はしっかり見せてもらったっ! これで私も水に流してやるからなっ」


元より、イジメではない。あくまでも礼儀知らずに対する制裁なのだから、歩美は長として彼女を許した。そして長は範子を労りながら、友美と未来にも念を押した。

「お前達もいいな? 範子がこうまで頑張ったんだ、許せるよな?」

友美は異存ないが、未来は少々叩き足りなく思っている。自分が松尾に受けた辱しめ、それを思うと、まだまだ範子に泣きながらダンスをやらせたかった。が、長の意に反せば、次は自分が同じ目に遇う。

「「「はいっ、異存ありませんっ」」」

未来は心ならずも、友美に合わせた。

「範子、午後は暫く休んでていいからさ。よしよし、お前、言い訳もせずよく頑張ったよ」

さすがにやり過ぎた。と感じたのだろう、歩美は慈母の表情で、範子を抱き締め慰めた。

「うん、私らに任せて休んでなよ。お尻、ちゃんと冷やしてね?」
「範子先輩、お薬、私が塗りましょうか?」

未来が小癪に障ったが、先輩二人の優しさに範子は安堵した。


午後6時。本日の商談や諸々の採決を済まし、祐輔は、帰宅途中の車中で浮かない顔をしていた。

『いよいよ明後日か……』

悪妻の退院がである。それは、一波乱起きるであろう厄介事でもあった。

『心配なのは、静香と香澄……。僕の留守中に壊されなきゃいいが……』

彼の言う留守とは、例の偽装入院の事である。

この期間、間違いなく静香母娘は、晴美に虐められる筈であり、その証拠を村岡が収める。義母や義妹をいたぶった事実を盾に、『晴美狂乱』として精神病院に送り込む。

予てよりの計画であり、この件そのものは問題ない。が、彼の心配は静香と香澄が精神を病む程虐められはしまいか、という事である。出来るならば、今のままの二人でいてほしいのだ。

『ああ、いっそ晴美に慰謝料渡して、穏便に済ますか……? 静香が見えないとこで虐められるなど、不安でしょうがないっ』


彼は最早、静香の存在そのものが最重要となっていた。いっそ名誉も財産もいらない、静香と寄り添って生きていけるなら、庶民として暮らしてさえいいと思う。

彼は頭を振って、その理性は常に戻った。

『村岡に頼むか……』

明るい未来の為、やはり計画は進めるべきだ。そう思い直し、自分の不在中は極力静香母娘を庇ってやるよう、村岡に頼む他ないと考えた。

『静香、香澄、暫く我慢してくれよな』

彼は帰宅するなり、書斎に村岡を呼び出した。そして、計画の最終的打合せと、静香母娘をくれぐれも頼む、と付け加えた。村岡はお辞儀をし、主を安堵させるべく応えた。

「旦那様、しかと承知致しました。奥様に歯止めが効くよう、既に手回しは済んでおりますので、ご安心ください」

「そうか、いやさすがだ村岡っ。お前の口からそう聞くと、本当に安心出来るっ」


「因みに旦那様、旦那様をご入院させる予定の加害者なる者ですが、藤原家の身内に御座います」

「何っ?」

「つまり、奥様の身内でもあらせられます。ですので奥様とのお争い、激しくおやりになればなるほど……」

「晴美が裏で画策したように見えるわけだっ」

「だけでなく、藤原の実家も体裁がお悪くなります。また、奥様をお除きなさる場合も、事は容易にお運びになるかと存じます」

祐輔は心底感心した。成る程、自分の入院を晴美の身内が因を為したとなれば、単なる事故では済まなくなる。

『あれは晴美がやらせたのではないか?』

その疑惑を内外に知らしめれば、尚効果的である。グループ内でも藤原一門は肩身が狭くなるだろう。それも喜ばしい。そして何より、静香と香澄の安全が、ある程度は保証される事になる。


「村岡、僕の気持ちだ」

祐輔は嬉しさの余り、500万の小切手を彼に差し出した。

「いえ旦那様、そのような事をしていただくと、罰があたります。そもそも私めが二階堂様より受けた御恩は、まだお返ししきれておりませんのに……」

「いいから取っておけ。お前に報いなければ、僕こそ罰が当たる。……な、静香の事、頼んだぞ」

村岡は深々とお辞儀をした。

「畏まりました、旦那様。お気持ち、有り難く頂戴いたします」

祐輔の機嫌は頗る麗しいものとなった。

「村岡、そう言えばメイドのお仕置きはどうだった?」

「はい、その件に関してご報告致します」


彼はまず、歩美のお仕置きを裕美が執行した事、そしてその理由を述べ、他の三人の時は静香と裕美が見学した事。更に、お仕置きの内容と松尾を病院送りにした事を告げた。

「松尾の躾ですが、少々やり過ぎました。旦那様、申し訳ございません」

「いや、気にするな。昨日の事もあるから、妥当な躾だ。……で、静香が見学したって? どんな様子だった?」

あれだけお仕置き不賛成を唱えていた彼女である。それが自らメイドのお仕置きを見学したとなれば、気になるところではある。

村岡は、詳細に静香の様子を話した。

「はい、静香様は大変ご満悦の様子で……。……そう申されて、仮眠をお取りになられました」

「ほう、さては静香、Sにも目覚めたかな? ……実はな村岡、僕は昨夜静香にお仕置きされたんだ」

祐輔は、やや照れたように言った。プライベートは喋りたがらない彼だが、この時はかなり上機嫌だったのだろう、また、信頼している執事なれば聞かせたと思われた。


「なんとっ!?」

「久しぶりに泣いたよ。そして久しぶりに思いっきり甘えたよ……。まるで本当の母親みたいだった……」

村岡は驚くどころじゃない。そもそも、親しい叔父などにすら甘えた事もなく、対等に渡り合う主なのだ。それが一女性にお仕置きをされ、甘えたとは、正に驚天動地の出来事である。

そして村岡は、主の為に心で祝福をした。

『旦那様……よろしゅう御座いましたな……』

幼くして慈母を失い、厳父の躾によってのみ育った当主。そのせいで、いつも張り詰めたような表情をしていたのが、今、静香の話をする彼の表情はなんとも和んでいるのだ。

『お優しいお顔をなされてますよ、旦那様……。静香様に感謝ですな……』

祐輔に一つだけ足りなかったもの、それは心の安らぎである。村岡は、常に彼が考え事をし、日常を忙しなく過ごすのを哀しく思っていた。


人生は時に張りつめ、時に緩むからこそ生を謳歌出来る。彼のように張りつめたままなら、やがて糸が切れてしまうであろう。そこで主を案じ、娯楽など薦めたのだが、一向に見向きもしなかった。

それが覆されたのだから、彼の安堵も当然であったろう。

『静香様が申された膝枕……。成る程、成る程……今やっと分かりました』

……

その夜。波乱の前の会瀬を楽しむべく、ピアノの部屋に入る祐輔と静香の姿がある。

静香が望んだ浣腸なのか? それとも祐輔が甘えるのか? 部屋の外からは窺い知ることは出来ないが、情事を重ねる事も間違いないだろう。

『旦那様と淫乱が睦まじく部屋に入るところ、無事ゲットぉっ!』

二人を注意深く監視していた範子は、村岡の目をかわし、自身のスマホにその様子を動画に収める事に成功した。

『……でもこれじゃ、まだまだ証拠不充分よね……。ま、一応収穫としとこうっ。さて、村岡さんに見つかる前に戻らないとっ』

今日、主筋と村岡にお尻叩きと浣腸、メイドの先輩後輩からは尻文字ダンス。尋常ならざる恥辱を受けたであろうが、範子は自分だけが知りうる秘密にご機嫌であった。


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