投稿作品集 > 静香と香澄 p.22

このストーリーは、bbs にて、鳳仙 氏より投稿していただいた作品です。 この作品の著作権は 鳳仙 氏にあります。



「特別だからな? その代わり、お仕置きの時は素直にしてるんだぞ?」

明らかに好色を内包した祐輔の言葉だが、香澄は素直に喜んだ。彼には既にお尻も見られ、叩かれているだけに抵抗は少ない。村岡やメイド達に見られない叩かれないだけでも、遥かにましである。

「はいっ、素直に言う事聞きますっ。お義兄さんっ、ありがとうございますっ」

「なに、礼には及ばん。お義母さんとの約束を守るだけの事だ」

ここら辺り、さすがに彼である。静香との約束を強調した事で、実は香澄にも約束事の履行を遵守させるつもりなのだ。

そして皆の前でやらないというのも、彼が香澄の感触を堪能したい下心なのだが、それを特別扱いと表現した事で、香澄が受け入れ易いようにした。

『やはり母親の血というのは大事だな。香澄もお転婆ぶりが目立ったが、中身は素直で静香と変わりがない。さて、晴美の娘はどうだ?』

その晴美の娘、裕美は、どこにそんな体力があるのか、と疑いたくなる程抵抗を続けていた。無論、口も休む事なく騒がしい。


「うわぁぁぁぁぁぁぁんっ! 歩美ぃっ、お母さんが帰ってきたら、あんたは松尾にお仕置きさせてやるからぁっ! 絶対っ、絶対っ、わんわん泣かしてやるぅ~っ!」

歩美はチラと主を見た。

「子供の戯言だ、気にするな。とは言え今の裕美の発言、追加罰に相当する。歩美、数の制限は無しにして、僕が止めと言うまで叩け」

小娘の躾の許可ばかりか、カウント無しで叩ける事になり、歩美は満足そうに頷いた。

『ありがたい御言葉ですわ、旦那様っ』

懲擲のテンポが早くなった。カウント無しなら、少しでも多く叩けるようにとの思惑である。

「いたぁいっ、痛いってばぁっ! うわぁぁぁぁぁぁぁんっ、やだやだやだぁっ! お父さんも歩美も、だいっきらいっ!」

まだ幼児である。裸を見られる羞恥など皆無に近く、代わりに叩かれる恐怖や痛みは嫌という程ある。毒を吐くのも最初だけで、後は泣き声のフルコースとなった。


「ひぎゃあぁぁぁぁぁぁ~っ。いだいよぅ~っ、いらいょぅ~っ」

涙、鼻水、涎、それらで顔を濡らしまくり、少女は不様すぎるくらい泣きじゃくった。子供だから当然であるが、その醜態はメイド達の失笑を誘う。

『ふふっ、小娘がいい気味っ』

馬鹿にされ、嘲笑われた彼女達に、少女に対する同情心は依然としてない。そして、不様な小娘が必死に許しを乞う姿を、早く見たいと心待にしていた。

およそ30の懲擲。本来、最初の数の宣告を大きく上回っているが、依然として裕美の口からは謝罪も哀願もない。ただひたすら、泣きわめくのみである。

その大した根性に、逆に歩美は不安に駈られた。謝らないという事は、少女が自分を曲げない意思の現れであり、つまり報復の念も強く持っている事になる。

そして彼女が怖れたのは、主が根負けして小娘を許してしまう事にあった。そうなれば、反省の為のお仕置きとはいえず、結果、裕美は自分に害意を抱いたまま終える事となる。

その後は、裕美の害意は夫人の晴美に伝わる事となり、些細なミスでも、重罪扱いとしてお仕置きの執行が待つだろう。その場合、執行は最下層が務める事も容易に想像がつく。


『松尾なんかに……じょ、冗談じゃないっ!』

小娘の意地に、歩美も意地になった。とにかく、小娘に泣く以外の意思表示をさせねば、後難が空恐ろしい。懲擲は、厳しさを増した。

「お嬢様っ、旦那様にお謝りなさいませっ! でなければ、お仕置きが終わりませんよっ!」

わずか6歳の子供に、容赦ない平手打ちをする歩美。しかし当然ながら、周囲から見ると余りに大人げなく映る。そして、歩美が怖れた一言が、村岡の口から出た。

「旦那様、如何で御座いましょう? 裕美お嬢様をお許しになられては?」

『ダメっ! まだダメよっ!』

歩美は中断しない。執事の言葉を聞こえない風を装い、祈るような気持ちで小さなお尻を叩きまくる。

「歩美さん、中断しなさいっ。いくらなんでも、やり過ぎでしょうっ!」

主の返事を待つ村岡は、部下である彼女を叱りつけた。こうなれば、歩美も止めざるを得ない。焦燥感を滲ませ、村岡と共に主の返事を待った。


「そうだな……。歩美、ご苦労だった。僕も裕美が謝るまで続けるつもりだったが、これ以上やっても甲斐はあるまい」

遂に祐輔も折れた。いや、折れざるを得ない裕美の根性を認めるべきであろう。彼は娘を抱き上げて、頭を撫でてやった。

「裕美、痛かったか?」

「うわぁぁぁぁぁぁぁんっ! 痛かったよぉ~っ!」

「だったら、何でごめんなさいしなかったんだっ。そしたら、こうまで叩かれなくて済んだぞ?」

「……うっ、うっ、お父さん……。ごべんなざいっ……!」

「よしよし、反省したか? 歩美達にもごめんなさいは?」

「いやっ、歩美は嫌いっ! お父さんっ、ごめんなざいっ! いい子になりまずっ!」

祐輔は、仕方なさそうに苦笑すると、それ以上の追求はしなかった。裕美の頑固が、身に染みて分かったからである。そして歩美に向かう。

「まあ、取り敢えず反省したようだし、お前達への謝罪は言って聞かせておく。皆、今日は終わりだ。解散っ」


村岡、メイド達は、一列に主の前に並ぶ。

「「「畏まりました、旦那様っ。では、旦那様、香澄様、裕美お嬢様っ、お休みなされませっ」」」

揃ってお辞儀をし、そして退出していく。

「ああ、未来、すまんが裕美のお尻、ちゃんとケアしてやってくれ」

「あ、はいっ、旦那様っ。……裕美お嬢様っ、では参りましょっ」

歩美は裕美の様子が気になるのか、チラッと探るように窺った。

すると、裕美は自分を真っ直ぐ見据えていた。およそ無邪気とは程遠い、憎しみの光を瞳に宿し、微笑むように笑っていた。

「歩美さん、どうしました?」

「えっ!?」

少女の悪意と対峙していた彼女は、不意に声を掛けられ驚いた。振り返れば、佳美の姿がある。


「……ねえ歩美さん、ちょっとお話あるんですけど……」

そう言われた事で、裕美の傍から自然に離れる理由が出来た。

「ええ、いいわよ」

立ち去る歩美の背後で、少女の声が追いかけてくる。

「未来、笑ったりしてごめんねっ。私もいっぱい叩かれたから、おあいこにしてねっ」

自分に対しては、あの憎悪とも呼べる眼を向け、未来には素直に謝った。歩美は、これを小娘の宣戦布告の意思表示と受け止めた。

さて、祐輔であるが、裕美の始末をメイドに一任させたのには理由がある。様子見という名目で、静香の寝室を訪れる為だ。彼は足早に廊下を進み、義母の部屋へとノックもせずに入った。

「あ、祐輔さん……!」

静香はベッドにいた。が、明らかに休んでいた感じではない。突然の闖入者に、慌てふためいたように布団で体を覆った。その一瞬ではあるが、祐輔は彼女の着衣がはだけていたように見えた。


『!? ……さては静香っ!』

祐輔は、静香の戸惑い紅くなった顔、そしてその狼狽ぶりに、自慰行為をやっていたと気付いた。

「静香、大丈夫か? 見たところ、顔色もよさそうだし……」

「あ、は、はい、ご心配お掛け致しまして、すみません……。も、もう大丈夫ですっ」

「起きれるか?」

「えっ!?」

起きれまい、彼はそう確信しつつ、尚も起きるよう促した。

「大丈夫そうなら起きてくれ。君にちょっと話がある」

静香の表情がみるみる内に強ばっていく。端正な顔が、今にも泣き出しそうになった。

「あ、あの……明日じゃダメ……ですか?」

「いや、今話しておきたい」

意地悪な祐輔の言葉に、静香は首筋まで紅に染めて項垂れた。


「では着替えますから、祐輔さん……。少しの間だけ、外でお待ち頂けませんか……?」

「着替え? いいよ、パジャマのままで。そんな畏まる話じゃないし」

「ああっ……!」

静香はそう喘ぐと、彼が今の自分の姿を確認しようとしている、と気付いた。

そう、パジャマの胸元はおろか、ブラまで外した上半身。そして、下半身に至っては、辛うじてショーツのみ、それも片足首に掛かった状態である。当然、布団から顔だけ出したまま、すがるように祐輔を見つめていた。

『可愛い仕草だな、静香っ』

彼は心とは逆に、心配そうな表情で静香に近付く。

「何か顔赤いぞっ。熱でもあるんじゃないのか?」

そして彼は布団に手を掛けた。勿論、捲る為である。

「ああんっ、ダメっ! 祐輔さんっ、ダメですっ!」


口ではそう言うも、静香は羞恥で萎縮し、抵抗らしい抵抗は出来ずにいた。そして身体が外気に触れると、自分の浅ましい姿を晒した事を実感した。

「おおっ、静香っ。お前裸じゃないかっ! ……しかも何だって脱ぎかけ……」

「いやっ、おっしゃらないでっ! ……ああ……恥ずかしい……」

祐輔の言葉を遮り、静香はせめてとばかりショーツを履こうとした。が、そのか細く綺麗な腕を、祐輔の欲情した手が掴む。

「静香、何でこんな格好なんだい? 説明してくれよ」

改めて説明を求められるも、彼女は俯いたまま顔をあげれない。そして、余りな羞恥に、小刻みに震えていた。

『自分の自慰行為を、義理の息子に知られる』

これはある意味、全裸を晒すより情けなく恥ずかしい事だ。静香の反応は当然だといえた。


「僕が言おうか? 静香……メイドがお仕置きされるの見て、自分も罰っして欲しくなったんじゃないのか? だから僕が来ると承知で、わざと淫らな真似をしてたんだろ?」

祐輔の言葉に、静香は驚いたように顔をあげた。

「えっ!?」

敢えて自慰行為を指摘せず、彼は優しくもそう言ってくれた。

他人のお仕置きに興奮し、自慰行為をした。自ら罰を求め、お仕置きの理由を与えた。

両者を比較すれば、まだ罰を求めたが聞こえがいい。無論、本音を話したところでこれまたお仕置きなのだから、彼女にすれば返事は一つしかない。

「……は、はい、その通りです……」

照れたように俯く静香に、祐輔はニヤリと笑った。


「では静香、先程皆の前で、『お義母さんはこの後所用がある』と言ったのを覚えてるか?」

「はい、覚えてます……」

「なら良かった。だったら、今から静香が外出しても、誰も怪しみはしない。タクシーを手配するから、繁華街近くの帝国ホテル、そこで待っててくれ。そこでお仕置きだ」

事も無げな祐輔の言葉だが、静香はむしろ救われたように返事をした。

「は、はいっ」

「僕も一緒だと不自然だから、時間をずらして後でいく。ラウンジでお酒でも飲みながら、時間を潰しててくれ」

「わ、分かりました……祐輔さん」

「よしよし、素直ないい子だ」

祐輔は、手配を済まし、静香を見送ると、足早に香澄の部屋へと向かった。そう、静香抜きで、彼女をお仕置きする為である。


「香澄、いいか?」

義兄の訪れに、香澄は戸惑いながらも入室を認めた。

「え、えっと……。お義兄さん、どうかしたの……?」

薄々来訪の理由を察したものの、一応訳を訊ねてみた。

「ああ、香澄のお仕置きに来たんだ。お前も早い内にがいいだろ?」

『やっぱり……』

彼女は緊張で固くなった。なるほど、お仕置きを受けるとしたら、早いに越したことはない。が、先程のメイド達の恥態や、裕美の醜態が鮮明に残っている今、自分も同じようにお尻を叩かれるとなれば、心の準備が必要であった。

「お義兄さん、……お母さんは……?」

それに、母の姿がないのは不安でもある。約束では、自分のお仕置きに静香も立ち合う事になってる筈だ。義兄とはいえ、二人きりはやはり怖くもある。


「香澄、お前はお義母さんがお仕置きされるのを見たいか?」

「えっ? いや、嫌だよっ!」

「お義母さんが立ち合う時は、お義母さんもお仕置きを受ける。これは約束事だったよな?」

「う、うん……」

「だからお義母さんには知らせてない。あの律儀な性格だ、お前が自分一人受けると言っても、自分もお仕置きを受けると言って利かないだろう。分かるな、香澄? 僕が言わんとする意味?」

「う、うん……」

「お前がこの前お義母さんを庇うのを見て思ったんだ。お義母さんに、余計な恥を掻かせたくないってな……。お前もそのつもりじゃないのか?」


香澄は俯いた。そして不思議な事に、安堵に似た安らぎを感じた。義兄は母を気遣っている。その労りと気配りが、彼を誠実な男性として映していた。

「香澄、僕は皆の前でお前をお仕置きしたくない」

沈黙を続ける義妹に、彼はとどめを刺した。無論、これは多分に脅しの意味がある。が、彼の労るような物言いに、脅迫の匂いは感じられない。

『そうだ……本来お仕置きは皆の前……。お義兄さんは私達を気遣い守ってくれてるんだ……。それに……素直にするからってお願いしたのは私っ』

香澄は顔を上げると、祐輔の目を見つめながら応えた。

「お義兄さん、か、香澄にお仕置きっ、お願いしますっ!」


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