投稿作品集 > 静香と香澄 p.15
このストーリーは、bbs にて、鳳仙 氏より投稿していただいた作品です。 この作品の著作権は 鳳仙 氏にあります。
感心した彼は、ふとハッとした。
香澄をお仕置き出来るという事。それは必然的に、身代わりとなった静香をお仕置きする根拠が無くなる事なのだ。
『これはいかんっ!』
平静さを取り戻しつつあったのが、一転して激しい焦燥感へと変わる。
『静香っ、お前は何て事してくれたんだっ!』
そう喚きたかったであろう。が、間違っても口に出来る事ではない。一方で、祐輔が喜ぶであろうと思った静香は、粗か様に表情を曇らせた彼に戸惑いをみせた。
「あ、あの……祐輔さん……? どうかなさいましたか?」
「いえ、大丈夫ですっ……」
彼は慌てて答えると、皮肉とも取れる言葉で返した。
「では、お義母さんもお仕置きを受ける理由がなくなりましたね。あれだけ反対してた香澄へのお仕置きを決断なされたのですからっ」
事を急ぎ過ぎた、と思う。晴美を除く罠が意外な形で跳ね返り、計画そのものが無意味になった。挙げ句、静香の裸身すら拝めなくなる。
そして静香は、当然ながら彼の不機嫌が分からない。分からないまま、言葉を重ねた。
「あの……そのお仕置きの事で、祐輔さんに提案……。いえ、お願いがあるのですが……」
「……何でしょう……?」
彼は気がない返事をした。
「香澄へのお仕置きは、祐輔さんだけでやって貰えないでしょうか? 叩き手がいるなら、私がやりますから……」
「ほう、僕一人……ですか? そりゃまた何故ですか?」
「香澄と一緒に、晴美さんの見舞いに行ってるんですが……」
静香の話では、一週間くらい前から晴美の様子が変わったらしい。笑顔でこそ応対してくれるものの、目付きが明らかに怪しいという。静香に対してもだが、事、香澄を見る目が異常なくらい険を含んでいる。
静香はそれにより、祐輔の言葉が真実であると確信を深め、事情を知らない香澄はひたすら怯えているとの事。故に、晴美には立ち合いすらしてもらいたくない、という静香の願いである。
「……難しいですね……。晴美は家長である僕の妻ですから、無視も出来ません。それに、香澄の躾に立ち合いさえ出来ないとなると、益々良からぬ事を考えるでしょうから」
それは静香にとって、予想内の回答であった。
「祐輔さんっ、そこでお願いなんですっ! どうか香澄への恨みを忘れてくれるよう、晴美さんを説得してくれませんかっ? その為だったら、私はどのようなお仕置きでも、甘んじて受けますからっ!」
「えっ!?」
「そして香澄へのお仕置きですが、あの娘が罰を受ける時、まず私を罰してくださいっ! そうすれば、か、香澄もお仕置きを受け入れると、思うんです……」
語尾が掠れたのは、実の娘の前で自らお仕置きを受ける恥辱を想像した事によるものだろう。親として、子供に尤も見られたくない姿であり、情けない事この上ない。
「お、お義母さん……」
正に今この時、彼の目には、静香に後光が射したように見えた。
彼女の決断は、単に香澄へのお仕置きを認めただけでなかった。おそらく、娘にとって受け入れ難いであろう罰を、まず自ら受ける事で納得させようというのだ。
そしてその場には、静香母娘の二人と、自分だけの三人だ。彼にすれば、願ってもない状況である。
また、それにより苛立ちを募らせるであろう晴美の悪意を、彼女は自ら生け贄となる事で収めたいという。
これは『晴美が必要で、彼女と争う訳にはいかない』と言った祐輔の立場を慮んばかってくれた静香の意思であり、香澄の為、家の為、グループの為と、自己犠牲の覚悟の現れでもある。
『な、なんて素晴らしいんだっ、静香っ! ああ、今すぐにでもお前が欲しいっ!』
彼は踊り出したいような歓喜の中、改めて義母の人格に尊敬を抱いた。そして、彼女が愛娘のお仕置きを彼にのみに許した姿勢に、彼女が寄せる信頼の程が如何に大きいかを理解した。
祐輔は、感に打たれたように瞑目し、静香の歓心を買うように助け船を出した。
「お義母さんっ、そのお気持ち、とても嬉しく思いますっ……! ですが、それでは貴女が余りにも酷い目に遇いますよっ? ……如何でしょう? 僕が全てを手配しますし、金銭的な援助もしますから、父と別居という形を取られては……? そうすれば、少なくとも晴美と顔を合わせる事もなし、その悪意もかわせますが……?」
これは、静香との仲が改善された後の、彼が思い付いた一つの案である。父と正式な離婚をしない限り、静香は二階堂の一員である。
当然の援助を名目に、かつて父がそうであったように、自分が足しげく彼女の元を訪れ、やがて彼女を我が物とする。香澄がいるものの、この家にいるより遥かに障害は少なく済むだろう。
静香は、微笑み、軽く頭を下げた。
「祐輔さんっ。貴方のお心遣い、大変嬉しく思いますわ……。ですがそれをやると保身の為、祥一さんを裏切るような事になります……。まして、体が動かなくなったあの人をそのままに、この家を出る気にはなりません……。お気持ちだけ、ありがたくいただきますわ……。それより私のお願い、聞き届けてもらえないでしょうか……?」
静香の一言一言は、祐輔の心を洗うように響く。彼はまたしても、深く感嘆すると、敬意を込めて彼女にお辞儀をした。
「お義母さんっ、分かりましたっ。晴美は僕が必ず納得させますっ!」
内心一抹の不安がなくもない。静香の提示した条件を、果たして晴美が納得するのか……? が、高揚した気分そのまま、勢いにまかせて承諾をした。彼の返事に、静香も丁寧にお辞儀で返す。
「ありがとうございます……。……祐輔さん、お時間、まだ宜しいですか?」
「え? ……ええ、構いませんよ」
「なら、ピアノのお部屋、お借りして宜しいですか? そして祐輔さんには、そこでお待ちしていただきたいのですが……」
「? ……。ああ、いいですよ」
「では、私は香澄を連れて来ます……」
静香はそう呟くと、僅かに頬を染めて席を立った。彼女が何を言っているか、分からぬ祐輔ではない。彼は思いがけなくも、これから静香母娘のお尻を叩ける事に、一途に喜んだ。
……
ピアノの部屋。
一足先に着いた祐輔は、既に欲情気味である。
『香澄がいる、落ち着けっ。香澄がいる、落ち着けっ。香澄がいる……』
そして、その興奮を抑えようと、一応の努力はしていた。
「お待たせしました……」
彼に遅れる事、ほんの数分後、静香母娘はやってきた。
「ほら香澄、早く来なさいっ」
香澄は、何があるのか聞かされたのであろう、俯いたまま、入口で愚図っている。それを静香は促し、部屋へと誘った。
「祐輔さん、お忙しいところ、ご無理を言ってすみません……。……今日は、香澄へお仕置きをお願いしたくて……」
「やだっ!」
静香の言葉を遮るように、香澄は声を挙げた。
「お尻叩きなんて、やだやだやだぁっ! ね、ね、お義兄さんっ、これからは、ちゃんと勉強するから、許してぇっ!」
「香澄っ!」
どうやら、完全に説得しきれてはいないようだ。祐輔は、さもあらんとばかり二人を見つめている。
「まあまあ、お義母さん。どうやら香澄へお仕置きしてほしいとの事らしいですが、今日は大目に見て次回から、でも構いませんよ」
「ほらっ、お義兄さんもそう言ってるわっ。だから、お仕置きは次回からっ!」
彼の助け船に便乗した娘をよそに、静香はペコリとお辞儀をした。
「祐輔さん、香澄の我が儘、すみません……。じゃあ香澄、あなたは次回から必ずよっ? 今日は、お母さんだけお仕置きを受けるから」
その言葉に、香澄は驚き、祐輔は息をのんだ。
「えっ!? な、な、何でお母さんがっ!?」
「香澄、あなたにお仕置きするって話をしたけど、一人辛い思いはさせないように、お母さんも一緒にお仕置きを受ける事にしたの……。分かった? 分かったら、よく見ておくのよ?」
静香は、気負った風でも、自棄になった風でもなく、淡々と言った。そして驚き覚めやらぬ香澄の前で、スカートに手を掛けた。
「ちょ、ちょっと待ってよ、お母さんっ! そんなのおかしいよっ……」
「いい? 私はね、この家に来て、祥一さんや祐輔さんに甘えていたの。この家のしきたりを曲げていたのよ。そして今もまた、祐輔さんに晴美さんや使用人が立ち会わない約束をいただいたのっ。だからね、あなたの為だけじゃなく、私も我が儘言った罰を受けなければならないの。分かるよね?」
何か言おうとした娘を抑え、静香は断固とした口調で言った。香澄は沈黙したが、それは静香の理にも依るが、晴美の名前が出た事もあると思われた。
『……どうやら、香澄には晴美の悪意を話したみたいだな……。それにしても静香っ、君は本当に素晴らしい女性だよっ』
祐輔は咳一つすると、心にも無い言葉で返した。
「……お義母さん……。話は伺っていましたが、やはり貴女をお仕置きするなど憚られます。考え直しませんか?」
これは静香に向けてではない。事情を知らぬ香澄に聞かせる為だ。あくまでも紳士的に装い、香澄の警戒心を解く狙いがある。
「いいえ祐輔さん、お仕置きは私から是非、お願い致します。今までも庇ってもらってて、これ以上甘える訳にはいきません。今日は香澄の分まで、静香のお尻を打ち据えてくださいっ」
顔が紅潮したのは、羞恥によるものか? それとも、期待によるものか? 祐輔は、その両方だと推測している。
「……貴女がそこまで仰るなら、僕も引き受けざるを得ません……。ではお義母さん、お尻叩きは初めての経験でしょうから……」
彼は、言葉途中で、我ながら白々しいと思ったのであろう、微かに苦笑した。が、それも一瞬、表情を引き締めると、
「道具は使わず、平手で膝の上で行います。回数は、香澄の分も入れて80、宜しいですか?」
数の宣告をし、静香の反応を見た。
「はい、お願い致します……」
恍惚となった彼女は、返事と共にスカートのファスナーを開けた。
『静香っ、やはりお尻叩かれたいんだなっ! お前のその顔、楽しみにしてた感、ありありじゃないかっ!』
彼は、彼女の脱衣を見つめながら、心で喝采を叫んだ。
ショーツを足から抜くと、静香は股間を隠しながら直立姿勢をとる。
「お、お母さん……」
母親の裸の下半身、それを目の当たりにして、香澄は今にも泣きそうな顔で呟いた。そして何か言おうとしたが、声にならずにいる。祐輔は、椅子を手に、彼女の側まで行くと、その場で腰掛けた。
「お義母さん、そのまま前にどうぞ。辛くもありましょうから、何も仰らなくて結構ですよ」
これも、如何にも静香を気遣うと言わんばかりの小技であり、その無毛となった秘処を香澄の目に極力触れさせない為の配慮であった。
「お心遣い、ありがとうございます……」
静香は一礼し、目の前の膝へと身を預けた。
「香澄っ!」
「は、はいぃっ!」
「そこに立って、見ていなさいっ! そしてお義母さんの気持ち、しっかり受け止めるんだぞっ」
祐輔は、静香の頭の方を指さし、そう叱咤した。これも言うまでもなく、静香の粗相や無毛が見えないようにである。
「す、すみませんっ……」
気を使ってくれた、という事で、静香は羞じらうようにお礼を言った。に対し、祐輔も申し訳なさそうに返す。
「……いえ、僕の方こそ、失礼しました」
彼が詫びたのは、静香の下腹部に密着した分身の隆起である。さすがの祐輔も、生理現象だけは儘ならなかったのだ。当然、このやり取りは香澄には理解不能である。尤も、そんな些細に注意が向く程の心の余裕は無いであろう。
彼女の耳に、お尻を打つ音、彼女の視界に、顔を歪める母の姿が映った。
ぱぁんっ! ぱぁんっ! ぱぁんっ!
「くふっ……いぃっ! ……はうっ!」
ゆっくりと一定のリズムで、静香は呻き声をあげる。やがて、声に涙がまじり、赤みを帯びたお尻が踊りだす。
「お、お母さんっ……」
その光景に、香澄の瞳が潤み出す。そして彼女は、母の哀れな姿を黙って見てられる程、身勝手では無かった。
「お、お義兄さんっ、やめてっ! 私、お仕置き受けるから、お母さんを許してあげてっ!」
その声は、祐輔の興を醒ますと共に、彼に新たな世界を魅せる前兆となった。
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