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このストーリーは、bbs にて、のりぞう 氏より投稿していただいた作品です。 この作品の著作権は のりぞう 氏にあります。



それは、私が高校2年生の時のある日の出来事。いつもの様に小学生時代からの親友である朋美と一緒に登校している時だった。

「ねぇ、千紗、これ見てよ。懐かしいよ」

朋美はニコニコしながらスマートフォンの画面を私に向けると動画を再生させた。

「ガンバレー、イッケー。負けるな」

動画に映っていたのは二年前の私。動画で流れてくる二年前の自分自身の姿を見ると、懐かしい気持ちと一緒に体中が熱くなってきた。

「もう、なんで、こんなのがあるのよ」

「うちのお父さんがビデオカメラで撮影してくれた動画をスマホに落としたんだ」

私はジンジンとする顔を朋美に向けて文句を言うと、彼女は悪戯っぽい口調で返してきた。

「まぁ、まぁ、そんなに怒らない。それに、応援団長をやっていた千紗はとても格好良くて素敵だったよ」

朋美はうっとりとした表情を浮かべながら動画を見続けていた。

中学3年生の時、私は体育大会で赤組の応援団長をやっていた。応援団長として、赤組の勝利を信じてみんなの前で運動場に響くぐらいの大声を張り上げていた。

そのこと自体はいい思い出だし、私自身誇りに感じる思い出ではあるが、問題は動画に映し出されている私の格好にある。正確に言えば、〝私たち“のと言うべきかな。


動画に映っている私の姿は、赤色の長鉢巻を額に巻いて、両足をがに股に広げて腰を落として、ブルマに包まれた股間を突き出すように長たすきを締めた上半身を後ろに倒して大声を張り上げて声援を送っていた。

それだけでは普通の応援スタイルだが、私が問題にしているのは、この時の私はブルマ一枚しか身に着けていないという点だ。上半身は裸で決して豊かとはいえないオッパイを丸出しにして、恥ずかしい気持ちを殺すように一生懸命応援をしていた。

裸になって応援しているのは私だけではない。赤組の女子全員が私と同じ、ブルマ一枚の半裸姿で応援しているのだ。

なぜ、私たちが恥ずかしさをなげうって、ブルマ一枚で声援を送っていたかと言えば、この格好で応援したとき、赤組の優勝が決まるかどうかの瀬戸際だったから。

何も、私たちは開会式からずっとブルマ一枚で過ごしていたわけではない。みんな、最初は体操シャツにブルマと言うちゃんとした体操着姿で体育大会に参加していた。

赤組の代表として、中学生生活最高の思い出として私は精いっぱいの力を振り絞って応援団長を務めていた。

そんな私の想いが通じたのか、白組相手に一進一退の攻防を繰り広げて、決着は体育大会最後のプログラムである男子1500メートルリレーまで持ち越された。

1500メートルリレーは、一周300メートルの運動場を五人の選手でバトンを繋ぐ競技の事だ。この1500メートルリレーでアンカーの選手が白組より先にゴールを切れば赤組の優勝が決まることになる。

お膳立ては整った。必然的に応援にも力が入るというものだ。そんな最後の決戦を前にして女子の応援団員達が私のもとにやってきて、こんなことを言い出した。

「ねぇ、千紗。男子たちが頑張れるように一肌脱いでよ」

そう提案したのは応援団員の一人として私を支えてくれた朋美だった。


「一肌脱ぐって、何をすればいいの?」

朋美の提案が呑み込めなかった私は彼女に尋ねると、「上の体操シャツを脱いでオッパイ丸出しで応援すれば、男子たちに気合が入って全力で走れるって」と、朋美は頬を赤らめながら私の疑問に応えた。

「団長さんがウンと言えば、私たちも裸になるからさ。お願い、ウンと言って」

女子が人前で裸になる。これは決して不思議な事ではない。

例えば、小学生時代、体育の時間は季節を問わず、男子も女子も上半身裸で授業を受けていたし、中学校に入っても気合い入れと称して部活や体育の授業で裸にさせられることもあった。

そんな事情があったから、人前で裸になる事は特異な事ではないにしろ、すすんで裸になる事でもなかった。

「でも、そんなことをしたら先生に怒られるよ」

裸にさせられる時は先生から大目玉を食らったときと決まっているから、裸になって先生から怒られるというのはいつもとは勝手が違う。

「大丈夫だって。先生から許可を取ったからさ」

朋美は私の心配を払拭するように先に手を打っていた。

「ねぇ、千紗、私たちで白組の連中の度肝を抜こうよ」
「絶対にウケるって」

普段であれば絶対に拒否する話だが、朋美達の熱のこもった説得と、応援団長として赤組の勝利に貢献したい気持ちと高揚感が相まって、私は朋美の意見に賛同した。


「そうだよね、朋美の言う通り、私たちが恥かしいのを我慢して一肌脱いで応援すれば、男子たちが頑張れるよね」

私は朋美の提案に乗ると、長たすきを解いて体操シャツを脱いだ。

みんなの見ている前で体操シャツを脱いで、ブラジャーを外していく女子の赤組応援団員達。朋美のように積極的に裸になる子もいれば、私のように朋美に押し流されて裸になる子もいる。

とはいえ、人前で裸になる事への興奮や高揚感で裸になる悲壮感と言うものはなくて、恥ずかしいという気持ちは薄らいでいた。

「みんな、千紗のオッパイを見ているよ」

私と同じようにオッパイを丸出しのブルマ一枚になった朋美が悪戯っぽい笑みを浮かべながら私をからかった。

「もう、朋美のオッパイだってみんな見ているんだからね」

親友にからかわれた私は恥ずかしさと悔しさ紛れに言い返した。

私たちが裸になると、俄然赤組は盛り上がった。オッパイを揺らしながら一生懸命声を張り上げる私たちに触発されたのか、赤組の女子全員が率先して体操着を脱いで裸になった。

赤組の女子全員がブルマ一枚の格好になると、今度は男子たちの応援に熱が入り、その熱はリレーに参加する選手たちに気合を入れた。

「女子たちが頑張っているんだ、俺たちが頑張らないと恥ずかしいぞ」

リレーに参加する選手たちは私たちの想いに応えようと気合を入れた。

そんな赤組に対して白組と言えば、「女子が裸になるなんて卑怯だぞ」と言う声が聞かれたが、私たちを真似てブルマ一枚になろうとする女子生徒は居なかった。


最後の競技である1500メートルリレーのスタートを切ると、私たちはオッパイを上下左右に揺らしながら声援を送った。

声援を送るときも、「イッケー、行け行け勇樹。オッセー、押せ押せ押せ押せ勇樹」と、走っている男子の名前をコールした。

オッパイ丸出しの同級生や下級生、それに、先輩女子生徒たちに応援されて頑張らない男子なんて居やしない。第一走者がスタートした段階で勝負は見えていた。

リレーに参加した男子たちは普段以上の力を出し切って、バトンを繋いでいったのだ。

そして、アンカーの選手がゴールを切ったとき、私たちは嬉しさのあまりに同性異性構わずに、その日一日私たちと一緒に戦ってきた仲間同士抱き合って勝利の喜びを分かち合った。

男子にしてみれば、裸の女子生徒に抱き着かれて嬉しかったに違いない。

勝利に喜ぶ私たちに白組の応援団が声を掛けてきた。

「ブルマ一枚で応援する赤組女子に敵うわけないよね。悔しいけど、私たちの負け。優勝おめでとう」

白組の応援団は私たち赤組の健闘を讃えてくれて握手を求めてきた。ギュッと握りしめられる手と手。今日一日お互い的同士で戦ってきたが、体育大会が終われば同じ学校の仲間たち。

動画に映し出されているのは、そんな私たちの中学時代の忘れえぬ思い出。恥かしくもあり甘酸っぱくもある思い出でもあるのだ。


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