投稿作品集 > 松本 豊 第9章 追記2『佐々木さんへの罰』 p.02
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――佐々木さんの回想――
あれは、期末テストを目前にした12月のことだった。朝から肌寒く、制服を着ていても“寒いね”と皆で話しをしていたぐらいだった。
今日の理科の授業は、科学の実験。科学の実験は、制服の袖やスカートの裾が器具などに絡まったりして危険とのことで、体操服に着替えることになっていた。
男子はジャージを着用できるのに対し、私たち女子は当然のように半袖体操服にブルマー姿。なんか罰を受けているみたいな気持ちだ。
私たちは、嫌々体操服に着替えていると……。
「えっ、うそ!! 私の、私のブルマーが無い!!」
安達さんが、叫んだ。
「無いって、どう言うことよ。午前中の体育の時、穿いていたじゃん」
「そうよ。私、忘れたりしてないもん」
「探そ!! みんなで探そ!!」
沢井さんの提案で、クラスの女子全員で安達さんのブルマーを探すことになった。ゴミ箱や掃除用具入れのBOXまで、ありとあらゆるところを探した。
だが、無情にも時間だけが過ぎていき……。
キーンコーンカーンコーン・キーンコーンカーンコーン……
授業の始まりを告げるチャイムが鳴り響いた。私たちは諦め、仕方なく科学室に走った。
セーフ!!
ギリギリ先生より早く着いたようだ。だが、安達さんは半袖体操服にスカート姿。たぶん、いや、間違いなくスカートを脱がされるだろう。
遂に先生が入って来た。
「おい、安達!! お前だけ何でスカートを穿いているんだ。スカートを脱げ!!」
当然の指示だった。
「ブルマーが無くなったんです。体育の時まであったんですが、無くなったんです。
「ブルマーが無くなったとか言って、本当はブルマーを忘れただけだろ!!」
「違います!!」
「分かった、分かった。でも、スカートで実験は危ないから、スカートを脱げ」
「そ、そんな……」
安達さんは、項垂れてしまった。
「ぬーげ!! ぬーげ!! ぬーげ!! ……」
男子からの“脱げ”コールが科学室に響き渡る。
「そうよ!! 盗ったのよ!! 男子が、盗ったのよ!!」
安達さんが言った。
あぁー、いっちゃったぁーー。
正直、私は思った。これで、彼女への追加罰が確定したことも悟った。
「お前のブルマーなんか、誰が盗むんだ? それに、そんなことをしても、ずぐにバレるんだぞ」
「で、でも……」
安達さんは、俯いてしまった。そんな時だった。庵野さんが、入って来た。
「遅れてすみません。横山先生に呼ばれていて遅くなりました」
「あぁ。聞いているよ。席に着け」
「ありがとうございます」
庵野さんは席に戻るのかとおもいきや、安達さんの方に向かって歩き出した。
「これ、横山先生に預かったから、渡しとくね」
そう言って、庵野さんは鞄の中から何かを取り出すと、こそっと安達さんに手渡した。
「何だ、それ!!」
「ぶ、ぶるまーです」
「そんなこと、見れば分かる!! 先生が言いたいのは、さっきお前は、男子にブルマーを盗られたと言ったんだろ!! それが、どうして、そこにあるのかと言うことだ」
「さぁー」
安達さんには、状況が理解できていない。そんな様子だった。
「庵野!!」
「はい」
「安達のブルマーを、どうして横山先生が持っていたんだ?」
「落し物として、届けられていたみたいです」
「そうか、分かった」
安達さんには、不利な状況になった。
「そらみろ!! 盗まれたんじゃ無かっただろ!! っていうか、誰が着替えても良いといった!!」
「えっ?」
安達さんは、いつの間にかブルマーを穿き、スカートを脱いでいたのだ。
「ブルマーを脱げ!! 今日の授業は、パンツで受けろ!!」
「嫌です!!」
「嫌かどうか、俺は聞いていない。もう一度、言う。ブルマーを脱いで、今日の授業はパンツで受けろ!!」
「ブルマーを忘れたんじゃありません」
「ブルマーを忘れたかどうかは問題じゃない。ブルマーを紛失したのは、お前の管理不足だろう!! つまり自業自得。授業が始まるまでに着替えを済ませていなかったお前に対する罰を、俺は言い渡しているんだ。だから、さっさとブルマーを脱げ!!」
「で、でも……」
「中田!! 横山先生を呼んで来い」
目の前に居た男子に指示を出した。
「脱ぎます。脱ぎますから、それだけは、許して下さい」
「駄目だ。中田、早く呼んで来い」
「先生、お願い。なんでも言うことを聞くから……」
安達さんは、涙目だった。
「分かった。だったら、中田に気合を入れて貰え!!」
「えっ!! そ、そんな……」
「中田!! 横山先生なら、こんな時、どんな罰だと思う?」
「そうですね。連帯責任で、女子全員がパンツ一枚とか?」
「じゃあ、松本先生だったら?」
「女子全員が、ブルマー没収ってとこですかね?」
「わ、分かりました。中田君に、気合を入れて貰います」
安達さんは、ボロボロと大粒の涙を流しながら中田君の前に行った。
「お……、ひゃ……、こ……、触り……、きああ……、きあああやいれ、お、おねがいしあむあ……。きゃっ!!」
「何を言っているのか、全く分からん。唯一、分かったのは、先生がお前の汚いケツを触ったときに言った“きゃっ”だけだ」
先生の言葉に、みんなの視線が安達さんのお尻に向いた。すると、先生は今も安達さんのお尻を鷲掴みにしていた。
「さぁー、早く気合を入れて貰え!!」
「中田君、オメコ触り気合入れをお願いします」
安達さんの言葉に、今度は、みんなの視線がお尻から前へと移った。
「仕方ないなぁー」
中田君は、そう言いながらも本心では喜んでいるのが丸見えだった。
「役どくぅーー!!」
中田君が、ブルマーの中に手を入れた。女子たちからは同情の視線が、男子からは羨ましいといった様子が窺えた。
「そ、そんなとこに、指を入れなくても……」
小さな声だったが、静まり返った教室では、充分に聞こえた。中田君は、千載一遇のチャンスを満喫しているようだ。
「よし、もういいだろう」
ようやく、安達さんは解放された。時計を見ると、わずか五分。だが、安達さんにとっては、一時間にも二時間にも感じたことだろう。
「安達!! お前の体操服とブルマーは、暫く先生が預かる」
「暫くって??」
「そうだな? まぁー、考えておくよ」
「……」
安達さんは何も言わず、半袖体操服を脱ぎ、ブルマーを脱いだ。そして、先生に手渡した。
「よし!! じゃあ次に、安達が先生に楯突いた罰として、連帯責任を与える」
「ちょっと、ちょっと、待って。連帯責任は与えないって言ったじゃないですか」
安達さんが反論した。
「そんなこと、ひと言も言ってないぞ!!」
確かに言っていない。だが、ここまでの経緯を見ると、連帯責任は回避できたと私も含め思っていた。
「授業が終わったら、女子全員でグラウンド10周!!」
「はい」
ブルマーを脱がされるのではないか。それとも、パンツ一枚?? 色んなことが脳裏をかすめたが、与えられた罰は罰走だった。安達さんも、ホッとしたことだろう。
安達さんは、これ以上の追加罰を恐れたのか、クラスメイトを巻き込みたくないと思ったのか、堂々と授業を受け、パンツ一枚の姿でみんなと一緒にグラウンドを走った。
その後、今回の出来事は、中田君と横山先生によって仕組まれていたことが分かった。庵野さんが呼ばれたことも、中田君による気合入れも、最初から考えられていたシナリオだったのだろう。
だが、このことを安達さんが問題にしたところで、追加罰を与えられるだけ。他の女子が問題にしても、その子がとばっちりを受けるだけ。
ましてや、中田君に仕返しでもしようものなら、間違いなく1年生の女子が、いや全学年の女子が罰を受けることになるだろう。この学校に入学し、そのことを誰よりも私たち女子が理解している。
安達さんには悪いけど、自分が巻き込まれなかったことにホッとしながら、何ごとも無かったように過していくしかなかった。
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