投稿作品集 > 松本 豊 第8章 p.01

このストーリーは、bbs にて、hiro 氏より投稿していただいた作品です。 この作品の著作権は hiro 氏にあります。



11月になった。

各地では秋祭りが開催され、当校が存在するこの地域でも、秋祭りが予定されていた。

日頃、閉鎖的な印象を受ける当校の印象を払しょくするため、数年前から当校の文化祭を秋祭りの日に合わせて開催し、一般の方にも学校を開放して見学して貰うシステムになっているとのこと。

歌や劇といった通常の出し物の他に、珈琲やジュースを販売する喫茶店や、生徒たちが自ら農家の人と交渉して野菜などを仕入れて、一般の方に販売する産直広場、たこ焼きやお好み焼きを販売する模擬店などがあり、中等部と高等部が協力して実施することになっている。

担任を持たない俺は、一般の方と同様に楽しもうと考えていた。それなのに……。


「松本先生、ちょっと相談があるんですが……」

横山先生が言ってきた。相談と表現していたが、決定事項の通達のようなものだ。

「はい、何でしょう」

俺は素直に返事をして、詳しい説明を聞いた。

要約すると、私立青洋学院の生徒は、ブルマーを触ることなく授業に集中して参加している。明日は文化祭で授業も無いから、その指導方法を見学して来るようにというものだ。

明日は、純粋に、楽しもうと思っていたのに……。


翌朝、指示された通り、私立青洋学院に来た。

校門で立っていた方に挨拶をすると、生活指導室に案内された。出された珈琲を飲んで待っていると、女性教師が入って来た。

「体育科の教科主任と生活指導主任をさせて貰っています長谷川範子です。今日一日、よろしくお願いします」

「松本豊です。こちらこそ、よろしくお願いします」

30代後半といったところだろうか。

「松本先生は体育教師で、ブルマー着用時の管理方法を見学されたいと聞いていますが、よろしいでしょうか?」

「簡単に言えば、そうなりますね……」

ブルマー着用時の管理方法なんて言われると、なんだか、変な気持ちだ。


「では、まずはグラウンドに」

そう言って、長谷川先生は俺をグラウンドに案内した。

グラウンドでは、女子生徒たちが準備運動をしていた。長谷川先生が俺を連れてグラウンドに現れたのを見たからか、女子生徒たちは俺たちの前に走ってきて、綺麗に整列した。

「よろしくお願いします」

生徒たちは、声を揃えて挨拶をした。

「体育委員、まずは服装チェック!」

長谷川先生が指示を出すと、二人の女子生徒が列から抜けて、一人ひとりのゼッケンなどを確認して回った。

「全員、問題ありません」

二人は、長谷川先生に報告して、列に戻った。


「回れ右!!」

長谷川先生の号令で、40人近くいる女子生徒たちは、一糸乱れぬことなく全員が揃って回転した。さっきまで準備運動をしていたからか、殆どの女子生徒たちのブルマーはお尻に食い込んでいた。

「屈伸!!」

次の号令で、女子生徒たちは屈伸を始めた。屈伸を続ける度にブルマーはお尻に食い込み、下着こそ見えていないが、お尻は悲惨な状況になっていた。

「ブルマーの中の下着は、禁止しています。ですので、ハミパンなどの心配はありませんが、下着を着用していない分、御覧の通りお尻への食い込みは大きくなります」

長谷川先生が、俺に説明してくれた。わざわざ回れ右をさせたのは、お尻への食い込みを俺に確認させるためだったのだ。

女って、冷酷……。それが、正直な俺の気持ちだった。


全ての準備運動が終わると……。

「今日は、ダンスの続きを各グループで練習!!」

長谷川先生が指示を出した。生徒たちは、各グループに別れて練習を始めた。

「松本先生、この後の授業中に、生徒たちがブルマーを触らないか観察してみてください」

長谷川先生が言った。

俺は、長谷川先生の指示もあり女子生徒たちがブルマーを触らないかお尻ばかり見ていたが、誰一人としてブルマーを触らなかった。

そして、授業は終わった。

どうして、ここまで徹底することが出来ているのか気になったが、長谷川先生に聞くより生徒自身に聞く方が本音が分かると判断し、長谷川先生の許可を得て目の前を歩いていた女子生徒を捕まえた。


「今、ブルマーがお尻に食い込んでいるよね。どうして、直さないの?」

「まだ、チャイムが鳴っていないから……」

「チャイム?」

「チャイムが鳴るまでは、まだ、授業中だから……」

俺の質問に対し、彼女は充分な回答は出来ていない。でも、彼女の言いたかった言葉の意味は、充分に理解することが出来た。

「長谷川先生も行ってしまわれたんだから、本心を聞かせてよ」

「本心?」

「今、ブルマーがお尻に食い込んでいて、悲惨なことになっているのは自分でも分かっているんでしょ?」

「はい……」


「長谷川先生も職員室に戻ったから、もう、食い込みを直してもバレないんじゃないかな? それなのに、どうして直さないのかと思ってね」

「友だちがブルマーを触っているのを見かけたら、体育の先生に報告しなければならないの。だから、今も誰かが私を見張っているかもしれないし……」

「見張っているって、大袈裟な……」

「大袈裟なんかじゃないの。触ったことに気付いていたのに、もし、私たちが報告しなくて、それが先生にバレた時には、もっと、孝江ちゃんが辛い思いをするの……」

「辛い思いって?」

「下半身裸でグラウンドを走らされたりとか……」

「報告しなかった為だけに?」

「うん」


「ちなみに、その、孝江ちゃんだっけ。どうして、その子が怒られるの?」

「体育委員だから……」

それだけ話すと、彼女は逃げていった。

「私たちの学校は、入学すると卒業までクラス替えはありません。また、1年生の4月に全員が何らかの委員会に所属させられ、一度所属すると卒業するまで代わることが出来ずに担当することになります。

体育委員会の生徒は、ブルマーの着用を徹底的に管理するように指導されており、もし、自分のクラスの生徒がブルマーに関する違反をすると、指導不足として罰を受けることになります。

ですので、生徒たちから体育委員ではなく、ブルマー委員、お尻委員などと呼ばれています。ちなみに私たちの学校は、登校すると体操服に着替えることになっていますが、ジャージのズボンが存在しないので、常にブルマー姿となります。

体育以外の授業でも、ブルマーを触ると授業に集中していないと判断され、体育委員の子が罰を受けることになります」

一人の女子生徒が、俺に話した。今度は、俺から話しかけたのではなく、生徒の方からだ。もしかしたら、本音の部分が聞けるかも……。そう思い、俺は質問することにした。


「ブルマー委員の意味は何となく理解できたんだけど、お尻委員は?」

「私たちがブルマーを触った場合は勿論、ミスをする、問題を起こす、クラスの平均点が悪いなどの時は、体育委員が代表してお尻叩きを受けます。だから、そう呼ばれているんだと思います」

「問題って?」

「問題とは、授業中に私語をした、掃除が不充分だったなどのような些細なことから、喫煙などの大きなことまで様々です」

「でも、どうして、体育委員が罰を受けるの?」

「生活指導担当の長谷川先生が体育教師だからじゃないですかね。流石に、そこまでは……」

「じゃあ、最後に一つ」

「下半身裸でグラウンドを走らされるって言ってたけど、本当なの?」

「下半身裸でグラウンドを走るという罰は、最も重い罰の一つです。ですので、ブルマーを触った者を知っていながら隠したり、体育大会や授業参観など保護者の方や来賓の方が多く集まる様な席でブルマーを触った場合などは、この罰に該当します」

「はぁー」

俺は、溜息をついた。


「じゃあ、君は、その、友だちが下半身裸でグラウンドを走らされているのを、見たことがあるの?」

「グラウンドを走らされていた訳では無いですが、似たような状況なら、あります」

「詳しく教えて貰えないかな?」

少し困った顔を、彼女はしていた。

「長谷川先生の許可も貰っているから、大丈夫だよ」

そう言って、俺は肩をポンポンと叩いた。

「私が見たのは、入学してすぐの頃でした。いつものように登校すると、下駄箱のところで先輩たちが下半身裸で立っていたの……。掲示板には“私たちは体育委員です。昨日は授業に集中せず、ブルマーを触る者が続出しました。指導不足の罰として、私たちは下半身裸で立っています”と書かれていました。

後で知ったんですが、立たされていたのは3年生の体育委員全員で、私たち新入生に対する威嚇というか見せしめっていうか、ブルマーを触ったら、こうなるんだぞっていう脅しのような、そんな目的だったようです」


「ちなみに、その、本当に、ブルマーを触った者は続出していた訳?」

「流石に、そこまでは私には……」

「そうだよね。変なことを聞いて、ごめんね」

「今、冷静になって考えると、もしかしたら、冤罪だったのかもしれませんね」

キーンコーンカーンコーン・キーンコーンカーンコーン……

彼女と話しをしていると、チャイムが鳴り響いた。

「先生、ちょっと、向うを向いていて頂けませんか?」

「えっ? どうして?」

「今は休憩時間なんで、ブルマーを触っても大丈夫なんで……」

さっきまで、大人びた印象を受けるぐらい冷静に話しをしていた彼女が、中学生の女の子らしい表情になった。そんなモジモジとした彼女の表情を見て、少し意地わるがしたくなった。


「私は、今、貴女と話している最中です。それなのに、向こうを向けとは、どういう意味ですか! それが、教師に対する言葉遣いですか。長谷川先生に、報告します!!」

「ごめんなさい。それだけは、許して下さい」

彼女は、必死で頭を下げた。

「じゃあ、どうして、そんなことを言ったの?」

「お尻に食い込んだブルマーを直したいんですけど、先生に見られていると恥ずかしいんで……」

彼女の本音だろう。

「お尻を見せて?」

「はい」

彼女は、俺にお尻を見せた。確かに、悲惨なぐらいブルマーがお尻に食い込んでいた。


「直さないの?」

「大丈夫です」

「さっきの罰です。今、ここで、私が見ている前で、ブルマーを直しなさい」

「そ、そんな……」

「長谷川先生に報告しても良いのかな?」

「直します」

そう言うと、彼女はブルマーの裾に手を突っ込み、クイッとブルマを引っ張った。これで彼女のブルマーのお尻への食い込みは解消された。

もう少し聞きたいこともあったが、今のことで話しづらくなったので、俺は彼女にお礼を言って生活指導室に戻ることにした。


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