投稿作品集 > 松本 豊 第6章 p.03

このストーリーは、bbs にて、hiro 氏より投稿していただいた作品です。 この作品の著作権は hiro 氏にあります。



今日は、今年初めて、三学年合同の練習が予定されていた。このような内容の時は、必ずと言って良いほど横山先生が指揮を執る。

俺は、横山先生に着いて、グラウンドに出た。

グラウンドでは、ダラダラした感じのする男子生徒に対し、女子生徒たちは綺麗に整列していた。横山先生を、いかに女子生徒たちは恐れているかが分かったような気がした。

横山先生が朝礼台に立つと、男子生徒たちも含めピシッと整列した。全員が綺麗に整列出来たことを確認すると、一人の女子生徒が朝礼台の下に走った。

そして、横山先生の前に立った。そして……。


「私たちは、ブルマーを触りません。もし触る者が現れれば、私たちはブルマーを脱いで授業を受けます」

まるで宣誓するかのように、右手を挙げて言った。すると今度は、振り返って生徒たちの方を向いた。

「男子の皆さん、私たちがブルマーを触らないか見張っていて下さい。もし触って居る者が居た場合は、横山先生に報告して下さい。見たくないでしょうが、私たちはブルマーを脱いでパンツで授業を受けますので、監視の方、よろしくお願いします」

よろしくお願いしますの言葉と共に、彼女は頭を下げた。そして、もう一度、横山先生の方を向いた。

「体育委員長、星野真理子!!」

右手を挙げて、名前を言った。そして、列に戻っていった。


「それでは、今から入退場の練習を行います。その前に、準備体操です。まずは、ラジオ体操!! 体操隊形に開け!!」

横山先生が指示を出した。

クラス毎でも一人か二人はタイミングがズレる。それが、今日は1200人もの集団だ。一度でタイミングが揃うはずは無かった。だが、横山先生は注意することも、やり直しをさせることも無かった。

「ラジオ体操、始め!!」

男子生徒を意識してか、いつもより動作の小さい女子生徒が多かった。それでも、横山先生は注意することなく、一回で終了させた。

屈伸・前屈・伸脚……。ここでもまた、女子生徒の動作は小さかった。その上、ダラダラとしている者も見受けられた。それでも、横山先生は注意をしなかった。俺も、仕方なく黙認することにした。

続いて、四つん這いになっての足上げ。やはり、女子生徒の動きは小さかった。だが、今度もまた、横山先生は何も言わなかった。さすがに俺は、黙認することが出来ず……。


「お前ら!! ブルマーを触っていなくても、真面目に取り組んでないやつもブルマーを脱がせるぞ!!」

俺は、注意した。俺の注意で、ようやくいつものようなピリピリしたムードが戻ってきた。おかしい。いつもの横山先生では無い。

「今日の横山先生、いつもと違いますね?」

俺は、たまたま隣に居た東野先生に話しかけた。

「そうかもしれないわね。去年の今年だから、意識しているのかもね?」

「去年の今年?」

「あっ。ごめん、聞かなかったことにして」

「そこまで言ったのに、今更、隠さないで下さいよぉーーー」

俺は、質問を続けた。


「去年の三学年合同の練習の時だったんだけど、練習に集中していないからという理由で、横山先生が女子生徒を体育館に集めて説教したのよ。そして、説教の後、体育館で“その場行進”をさせたらしいんだけど、全く揃っていなかったみたいなの。

それで、女子生徒全員を裸にして、男子生徒もいるグラウンドで行進させたの。男子の間では“全裸の行進”って、噂されていたみたいよ。さすがに、女子生徒全員を裸にして行進させるのは“行き過ぎた指導”だと、どこからか指摘を受けたみたい。

それで、横山先生は理事長から注意を受けたみたい。詳しくは知らないから、誰にも言わないでね。あくまでも、噂で聞いただけだから……」

東野先生が教えてくれた。

「だから今年は、いつになく慎重になっているってことですか?」

「たぶん、ね」


俺の質問に東野先生が答えてくれている時……。

「先生、峯野のやつ、ブルマーを触りました!!」

いつのまにか、入退場の練習に移っていた。

男子・女子・男子・女子……と交互に並んで行進する為、女子生徒は男子生徒にお尻を見られながら行進することになる。無防備なお尻を見られることの羞恥心から、触る者が続出するのだろう。

「峯野、ブルマーを脱ぎなさい」

横山先生が、冷静に指示した。

「うおー」
「うひょうーーー」
「白だよ白!!」

男子生徒の歓声を浴びながら、峯野はブルマーを脱いだ。


「今度、パンツを触ったりしたら、パンツも脱がせるからね!!」

横山先生が峯野に注意をしていた。この冷静さと圧力のかけ方は、本当に去年を引き摺っているのだろうかと思わせるものだった。

その後の練習では、峯野がブルマーを脱がされたことで、女子生徒たちへの見せしめになったのか、いつもの授業風景に戻ってきていた。横山先生も“手足の動きが揃っていない”と女子生徒を中心に、何度も何度もやり直しをさせていた。

それでも、男子生徒にお尻を見られながらの行進は女子生徒たちには辛かったのか、触る者が続出し、次々とブルマーを脱がされていった。

東野先生が話した“全裸の行進”について、俺は気になった。まだ、横には東野先生が居る。でも、一度終わってしまった話を今更蒸し返すことは難しい。

そんなことを考えていた時だった。俺の目の前で、既にブルマーを脱がされていた3年生の女子生徒がパンツを触ったのだ。

「おい、そこ!! パンツを触っただろ、パンツを脱ぎなさい!!」

俺は、注意した。だが、俺の指示を聞くことなく女子生徒は練習を続けていた。


しめしめ……。俺は、良からぬことを思いついた。俺は、パンツを触った女子生徒のもとに走り、列から引き摺り出した。

「俺の指示を無視する気か!! 良い度胸だな!!」

「え? すみません。知らなかったんです」

俺は、名前を呼ばなかった。まぁー、名前を呼びたくても、名前を知らなかったので、呼べなかったというのが真実。だから、本当に気付いていなかったのかもしれない。それでも俺は……。

「知らないはずがないだろ!! パンツを触った罰でパンツだけを脱がせるつもりだったが、体操服も脱げ!!」

今日初めてのパンツ没収と体操服の没収が、同時に来た。

「松本のやつ、横山よりも凄いかも……」
「丸見えーーー!!」
「松本最高!!」

男子生徒の歓声が、再び木霊していた。中には、俺のことを呼びつけにしている声が聞こえたが、まぁー、許してやるか……。


全裸になったのを確認した俺は、名前を聞くことにした。

「名前は?」

「佐藤あんりです」

「今度、俺を無視したら、連帯責任でクラス全員を全裸にするから、そのつもりで!!」

「はい……」

そう言って、俺は列に戻した。

「それじゃあ、授業を再開するわよぉーー!」

横山先生は、授業の再開を指示した。そう、俺が佐藤を引き摺り出したことで、授業が中断してしまっていたのだ。

その後の授業では、これ以上罰を受けたくないという思いと、友だちを巻き込みたくないという思いが重なってか、本当は隠したいだろう女の子の大切な部分を隠すことなく佐藤は練習を続けた。


だが、佐藤の顔を見ると、涙を堪えているのが明らかだった。

「ぜんたぁーい、止まれ!! 女子だけ、回れ右!!」

横山先生の指示が飛んだ。

回れ右と言うことは、反対方向を向くということ。佐藤も男子生徒の方を向くということになる。

あっ!!

俺は閃いた。俺は佐藤の動きをチェックすることにした。

よし!!

案の定、女の子の大切な部分に手をやった。すかさず俺は……。

「いちいち隠すな!!」

佐藤に近づき、手を横にやった。そして……。


「誰が、お前のこんな汚いもん、見たいやつが居るんだ。自意識過剰もいい加減にしろ!!」

そう言って、俺は女の子の大切な部分に触れた。

「嫌、やめて……」

小さな声だったが、佐藤は明らかに拒否する声を出した。当然と言えば当然だ。だが、そんな当然なことが許されないのが、うちの学校である。

「今の発言は、俺への反抗と判断する。さっきの無視に加え今回の反抗、これは、重罪だな」

「先生、違います!!」

「何が違うんだ!!」

少し大きめの声で怒鳴ると、佐藤はシュンとなった。


「佐藤あんりと同じクラスの女子生徒は、服を脱げ!!」

俺が指示をした。すると、横山先生が現れた。

「松本先生、ちょっとやり過ぎでは?」

「何を言っているんですか。いつもの横山先生なら、もっと早い段階でパンツ一枚の生徒が現れていましたよ。今日は、どうしたんですか?」

俺は、質問した。

「ごめん、今日は、ちょっと変よね」

そう言うと、横山先生は一人の世界に入り込んでしまったかのように俯き、朝礼台の方に歩いていった。

そんな横山先生の姿を見るのは初めてだったので、俺は動揺していた。だが……、今は、授業。そう、自分自身に言い聞かせ、佐藤の方を向いた。


すると、佐藤と同じクラスの女子生徒が全裸になっていた。忘れていた。そう言えば、次は全員を全裸にすると佐藤に圧力をかけていたのだ。今回は上半身裸のつもりだったが、もう後には戻れないだろう。

そんな時だった。

キーンコーンカーンコーン・キーンコーンカーンコーン……

授業の終了を告げるチャイムが鳴り響いた。

「今日は、ここまで。女子生徒は、今後の練習に集中出来るように、今の姿で残りの授業を受けなさい」

横山先生が、そう指示して授業を締めくくった。


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