投稿作品集 > ひとりだけ…… ≪創作ダンス≫ p.01

このストーリーは、bbs にて、hiro 氏より投稿していただいた作品です。 この作品の著作権は hiro 氏にあります。



―― 創作ダンス ――

3年生が二回目であったとしても、授業の内容は変わらない。例年通り、水泳の授業が始まる6月中旬まで創作ダンスの授業となる。

まぁー、これは、1年生も2年生も同じだ。協調性を学ぶために最も適切なカリキュラムだと先生は言うけど、男子はバスケットボールで女子は創作ダンス。なんだか腑に落ちない話である。

「次は、体育だね」
「嫌だなぁー」
「なんで、男の先生の前でお尻を突きだしたり、開脚したりしなくちゃならないのよ!!」
「ほんと、ほんと」

女子生徒たちの会話が聞こえてきた。

あんたたちハーフパンツじゃないの!!
私なんかブルマーで、させられるのよ!!
ブルマー姿で開脚しなければならない私の気持ちを考えてよ!!
どんなに惨めで、どんなに屈辱かを!!

私は、心の中で訴えていた。


“創作ダンス”

創作とは言っているが、ダンスの内容は体育教師たちによって決められている。内容は毎年異なるが、お尻を突きだしたり開脚したりと、羞恥なポーズが数多く取り入れられていることに代わりはなかった。

今年は、どんなダンスなんだろう……。
やっぱり、開脚もあるよね……。
ブルマー姿で開脚するのは、恥ずかしいんだけどな……。
それも、私、ひとりだけ……。

「はぁーーー」

これからのことを考えると、思わず私は、大きな溜息をついてしまった。

「溜息をひとつ吐くと、幸せがひとつ逃げるって言いますよ。あ・か・パ・ン・さん」

そう言うと、笑いながら更衣室を出て行った。私も急いでブルマーに足を通し、スカートを脱いだ。

「食みパンチェック、忘れないでね」
「やった、やった、食みパンチェック!!」
「懐かしい!!」
「私、ブルマーなんて、もう無理!!」
「ブルマーって、生地が厚いだけでパンツじゃん。絶対無理!!」

クラスメイトたちは、私を冷やかしながら更衣室を出て行った。


クラスメイトたちの言葉に視線を下げると、剥き出しになった私の太腿が見えた。分かっていることとはいえ、なんだか惨めな気持ちになってしまった。

私も更衣室を出た。運悪くというべきか、1年生たちが体育の授業を終えて戻ってきていたところだった。

「おいおいおい、ブルマだぜ、ブルマ」

一人の男子生徒の言葉をきっかけに、男子生徒たちの視線が私に集中した。

ブルマが正しいのか、ブルマーが正しいのか、それともブルーマーが正しいのか分からないが、男子生徒から私は“ブルマ”と呼ばれている。ちなみに女子生徒たちからは、今もなお“赤パン”と呼ばれ続けている。

私の母校の小中学校では今でもブルマーは現役だが、一部の小中学校では廃止されているところもあるようで、1年生の男子生徒の中には、数年ぶりに見るブルマーだったりするケースもある。

自意識過剰だと言われるかもしれないが、男子生徒の視線は私の下半身に集中していた。思わず私は、体操服の裾を思いっきり引っ張ってブルマーを隠した。


「おい、西野!! いつも言っているだろ。体操服の裾はブルマーの中に仕舞えって!!」

これまた運悪く、紺野先生が現れていた。

「す、すみません」

私は紺野先生に謝ると、急いで体操服の裾をブルマーの中に押し込んだ。

「よし、次から今みたいに、だらしない格好をしていたら、体操服を没収するからな!!」

「……」

周りを見渡しても、誰一人として体操服の裾をハーフパンツの中に入れていなかった。それなのに、私だけが怒られた。あまりの理不尽なことに、何も答えられなかった。

「聞いているのか、西野!!」

「はい、聞いています」

「聞いているんだったら、何か答えろ!!」

「何がですか?」

バシーーン!!

紺野先生のビンタが、私の左頬に炸裂した。


「い、いたぁーーい」

「何か言うことがあるだろう!!」

「す、すみません。二度と、だらしない格好はしません」

「それだけじゃ、足りない!! 今度、だらしない格好をしていたときは、体操服を脱いで上半身裸で授業を受けさせて頂きます。だろ!!」

「今度、だらしない格好をしていたときは、体操服を脱いで上半身裸で授業を受けさせて頂きます」

私は、心にもないことを言った。

「よし、じゃあ、授業に遅れたら悪いから、さっさとグラウンドに行け」

「はい」

私は、グラウンドに走った。

グラウンドでは、既にクラスメイトたちが綺麗に整列していました。勿論、誰一人としてブルマーを穿いている者など居ない。

「はぁー」

私は、もう一度、大きく溜息をついた。頭では、理解が出来ている。でも、気持ちの整理がつかないのだ。


そんなことを言っても何も解決しない。私も自分の気持ちを押し殺し、ハーフパンツ姿のクラスメイトたちの列に加わった。その瞬間だった。

キーンコーンカーンコーン・キーンコーンカーンコーン……

授業の開始を告げるチャイムが鳴り響いた。そして、紺野先生が現れた。

「ラジオ体操は、終わったのか?」

「はい」

紺野先生の質問に、誰かが答えた。

えっ? うそ!! ラジオ体操なんか、やっていない……。もし、紺野先生にバレたら……。

「よし、じゃあ、柔軟体操を行う。仰向けになって寝ろ!! 左右開脚からだ」

ピッ!!

紺野先生は、私たちが寝転がったのを確認すると、笛を吹きました。私たちは、両足を直角に上げます。

ピッ!!

次の笛で、両足を左右に開きます。


ピッ!!

今度の笛で、右足と左足が×の字になるようにクロスさせます。

ピッ!!

もう一度、左右に開きます。ここからは笛の音に合わせて、開く、クロスさせるの連続です。

ピッ!! ピッ!!
ピッ!! ピッ!!
ピッ!! ピッ!!

紺野先生の場合、開脚した状態から二回連続して笛を吹く。少し時間を置いて、もう一度二回連続して笛を吹く。こういう吹き方が多いんです。

開脚した状態で二回吹くと、私たちは両足をクロスさせた後、再び開脚した状態になります。つまり、私たち女子生徒が屈辱と感じている開脚のポーズに戻る訳です。

多分、いえ、間違いなく私たちの心理を知った上で、紺野先生は意図的にしているのです。

ピッ!! ピッ!!
ピッ!! ピッ!!
ピッ!! ピッ!!

私の股の間に紺野先生の姿が見えました。次の瞬間、私の太腿の内側をポンポンと竹刀で叩きました。これは、もっと開けという合図でしょう。私は、限界まで開きました。


「開けるんだったら、最初から開いておけ!!」

そう言いながら、紺野先生は電気あんまでもするかのうように、女の子の大切な部分を踏みつけてきました。

紺野先生は、靴を穿いています。体育館用とは言え、靴は靴です。靴で女の子の大切な部分を踏まれるだなんて、思ってもいませんでした。

屈辱的でした。でも、よくよく考えてみると、素足で踏まれるのは、もっと嫌です。つまり、靴で踏まれる方が、まだマシだったのかもしれません。

「よし、次は足上げ腹筋だ!! まずは、45度!!」

中々、次の指示が出ません。こまめに角度を代えてくる時もあれば、今日のように一つの角度を指示して、誰かが潰れるのを待つ時もあります。

「そのまま開脚!!」

ようやく指示が出ました。でも、私たちにとっては嫌な指示でした。再び、私の股の間に紺野先生の姿が見えました。

「西野!! 股のところから白いのが見えているけど、恥ずかしがらずに真剣に取り組むように」

「きゃっ!!」

思わず私は、食みパンを直してしまいました。


ばしーーん!!

私の右手に、竹刀が飛んできました。

「恥ずかしがらずに真剣に取り組むようにと、注意したばかりじゃないか!! どうして言うことを聞かないんだ!!」

「……」

私には、何も言えませんでした。

「何か答えろ!! それとも、もう一度、3年生をやるのか!!」

「パンツが見えていて、恥ずかしかったからです」

恥ずかしい気持ちを押し殺し、私は答えました。

「良いことを教えてやる。ブルマーの下にパンツを穿いているから恥ずかしいんだ。恥ずかしい気持ちをしなくても済むように、パンツを脱げ」

紺野先生は、怒っている様子もなく、ただただ事務的に言いました。ですが、脱げと言われて脱げるわけがありません。

「いや、そんなの嫌……」

私は、小さな声で答えました。


「ほう、俺に歯向かう気か。面白い、俺に歯向かえばどうなるのか、身にしみて理解していると思っていたんだけどな」

「す、すみません。ぬ、脱ぎます。でも、せめて、せめて、トイレに、トイレに行かせてください」

「仕方がないな。とっとと脱いで来い!!」

「は、はい」

私は、返事をするとトイレに向かって走ろうとしました。その時でした。

「お前らの中にも、足が曲がってきているやつがいるぞ!! 足は、ピンと伸ばせ!! 伸ばせないやつは、ハーフパンツを脱がせて、ブルマーにさせるぞ!! ブルマーになっても良いのか!!」

「いやです」

誰かが答えました。

「そうだろう。だったら、足は、ピンと伸ばせ!!」

「はい」


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