投稿作品集 > それぞれの告白 白い世界編

このストーリーは、bbs にて、のりぞう 氏より投稿していただいた作品です。 この作品の著作権は のりぞう 氏にあります。



■ 白い世界 ■

<序>

皆さんの通っている学校の体育大会って、どんなチームの分け方をしてますか?

例えば、オーソドックスな分け方だと、紅組と白組。クラス別の分け方もしますね。あと、関ヶ原の戦いみたいに東軍、西軍とか、少しひねりを加えて白虎団と青竜団と言う分け方をしている学校もあるみたいです。

私の通っている学校では、白団と黒団と言う分け方をしています。私の通っている学校は一学年4クラスあるので、1組3組は黒軍で、2組4組は白軍とチーム分けをしています。

何で、そんな話をするかと言えば、今日、私の通っている高校で体育大会が行われたからです。その、体育大会で私、白団の女子応援団員をやらされていました。今から私がお話しするのは、そんな私の応援団に纏わるはお話です。


<一>

体育大会に花を添えるものと言えば、応援団。

わざわざ応援合戦なんてプログラムを組むぐらいですから、応援団は体育大会の花形と言っても言い過ぎではないですね。そんな体育大会の花形とも言える応援団の女子団員として抜擢されたのは、7月の期末テストが終わってすぐの事。

私の通っている高校の応援団員は、各クラスから男女2名ずつが選出されることになっていますが、男子の場合だと、元気のいい男子とかクラスを仕切っている子なんかが応援団を買って出るだけど、女子の場合は恥ずかしがって自分で名乗りを上げる子など居ません。

これが中学生時代だったら、ノリのいい子が手を挙げるだろうけど、高校生になると周りの目を気にして遠慮してしいます。そんな乙女心が災いして、女子の応援団候補が中々見つからないのです。

そこで、女子の場合はクラスの投票で選ぶ事になるってわけで、いくら体育大会の為に結成された即席の応援団と言えども、体育大会本番に向けて毎日のように応援の練習があるから、運動部に所属している子は必然的に候補から外されるし、文化部でも吹奏楽部や合唱部に入っている子も同様の理由から外されていきます。


そんな条件でふるいに掛けられて残るのは、吹奏楽部や合唱部以外の文化系の部活に所属している子か、帰宅部の女子たち。女子の応援団のメンバーはその子達の中から選ばれることになるのです。

この投票だけど、投票権は男子しかもらえない事になっていて、当事者である女子には投票権が無いのです。

何で、そんな選び方をしているかと言えば、女子同士の場合だと、応援団に選ばれた子が誰が誰に投票したのかを探り出して、自分を選んだ子をトイレの中に引きずり込んで「どうして私を選んだのよ」って事になるのを先生たちが心配しているみたいです。

そんな面倒くさい事を誰がやるのか私が聞きたいぐらいだけど、これはこれとして、後々のクラスメイト同士のトラブルを回避しようとしている学校側の配慮として有難く受け止めておかなくちゃいけないのかもしれませんね。

まぁ、そんな訳で男子だけの投票になるから、ただの応援団員選びじゃなくなるのです。自然と文化系女子の人気投票の性格を帯びてきちゃうのです。さしずめ、一位に選ばれた子はクラスの美少女チャンピオンで二位で選ばれた子が準ミスって事になりますね。

1位や2位で選ばれたら選ばれたで嬉しいかもしれないけれど、その反面、応援団候補から落選したり、名前すら上げてもらえなかったクラスの女子達から嫉妬の眼差しで見られるし、体育大会が終わるまで応援団に縛られるしで、その後の事を考えると迷惑な話です。


私なんかは可愛いくなければスタイルも良くないし、絶対に選ばれるはずがないと、レベルの低いところで高を括っていたけど、投票の結果発表で黒板に“河原田汐莉(しおり)”と大きく二番目に私の名前が書かれたとき、思わず私は自分の目を疑ってしまいました。

私よりももっと可愛い子やスタイルのいい子だって居るじゃない。どうして、私が選ばれるのよ。

そんな想いで呆然と黒板を見続けていたけど、これは後で仲のいい男子から聞いた話だけど、私が選ばれた理由は「可愛い子が応援団の練習でしごかれるのが可哀想だから」ですって。

「汐莉だったら、元気はあるし、明るいし、それに、友達からよく弄られているから、多少のシゴキでも身体が持つだろう」って言うのです。それに「汐莉は顔が可愛くないけど、おっぱいやお尻が大きいから、それで選ばれたんじゃないか」って。

「男って言うのは、多少、顔が残念でも、大きなオッパイやお尻が大きいと心を赦しちゃうものだって」って、その男子は笑いながら言うのです。まったくもって失礼な話よね。「もう、勝手に人の事を見世物にするな!!」って言いたい気分です。

「こんな事を言われるのも、汐莉がクラスの皆から愛されている証拠だよ」って皆が慰めてくれるけど、そんな事を言うのなら、「もっと別の愛し方をしてよ!!」私はそう言いたいわけです。


<二>

私、よく周りの人たちから言われます。「汐莉って名前は可愛いけど、名前倒れだね」って。

人の事を大阪の食い倒れみたいに言わないでよね。そんな名前倒れをするぐらいなら、“花子”と改名したいぐらいです。そんな私が美人さんやカワイ子に混じって応援の練習をするわけだから、別の意味で目立ちます。

練習と言っても、寄せ集めの私達だけでは練習になりませんから、大会に出られないチア部の補欠部員達が私たち白団の指導をしてくれるのです。黒団の方はバトン部の補欠部員達が指導する事になってます。

一方の男子応援団は昨年、応援団をやっていた先輩達から指導を受ける事になってます。なんで、男子と女子と練習の指導方法が違うかと言えば、男子の場合は自分から立候補して応援団に入団するから、その分、縦の繋がりが強いわけです。

でも、私たち女子の場合はクラスの男子による投票で選ばれているから、縦の繋がりがとても弱くて、その為に、女子の場合はそれぞれチア部、バトン部のお世話になります。


でも、どうして、白軍と黒軍がチア部とバトン部に別れて練習をするかと言うと、体育大会である以上はお互い敵同士になるから、別々のところで練習をするのが理由らしいけど、それとは別の理由もあるのです。

そのもう一つの理由って言うのが、チア部の創部に原因のある、根の深い話です。私の通っている高校には、昔はバトン部しかありませんでした。でも、今から25年ぐらい前と言うから、ちょうど、昭和の終わり頃にバトン部の部員の一部がバトン部から離れてチア部を創ったという事件が起こったのです。

なんで、バトン部から離れてチア部を創ったのかは詳しい経緯は伝わっていないけど、「チア服は可愛くて素敵だけど、バトン部は身体のラインが出るレオタードを着て人前で演技をするのがダサくて恥ずかしいから」と言う冗談めいた話が伝わっていますが、その当時を知る人が居ない以上は真相は良く解ってはいません。

そんな事があったものだから、バトン部とチア部との間に根っこの深い対立関係が長い事と続いていたそうです。

今では当時を知るOG達の影響力も無くなったせいか、そう言った対立話も聞かなくなったけれど、対立関係が解消された今でも、当時の名残で私たち女子応援団チームはそれぞれバトン部とチア部に別れて指導を受けているって訳です。


<三>

とにかく、練習はとても厳しいかったです。体育大会だけの応援の為にそこまでするのかっていった感じで、容赦がありませんでした。

いくら補欠部員と言っても、先輩部員やレギュラー部員からしごかれている子達が私達を指導するから練習が半端じゃなくて、特に、私たち1年生団員や先輩団員でも初めて応援団入りする先輩たちは顔を真っ赤にして涙目なりながら練習させられました。

特に一番きつかったのが股割です。股割をやらされると聞いた時、私たちは血が引く思いをしました。だって、股割と言えば、あの身体の大きい相撲部の新入部員ですら半分泣きながらやっているぐらいですから。

たかだか体育大会の応援の為にそこまでしないといけないのって思ったけど、チア部の子に言わせてみれば、「応援で一番大切な事は皆と動きを合わせる事と、ダイナミックなアクション」って事らしくて、応援の振り付けで片足を蹴り上げた時に、脚が水平以上の高さまで上がらないととても貧弱な演技に見えるみたいです。

いくら体育大会の為だけの応援団とは言え、徹底的にやらなくちゃダメですって。

初めて股割をする時に、股割をする時に毎年痛みに耐え切れずオシッコをお漏らしする子が居るっていうものだから、私たちはお漏らしをしてもいいように学校の水着に着替えさせられて、運動場で応援の練習をしている男子応援団の前で股割をさせられました。

プール以外の場所で水着姿になるのって、とても恥ずかしいんだよ。そんな恥ずかしい思いをしながら白団の男子応援団チームの前で股割をさせられるから、恥ずかしさの二乗って感じで私たちはなかなか股を開く事が出来ませんでした。


そんな私達にチア部の子達が「早く股を開け」なんて私達に怒鳴り散らしたけど、みんな、男子の目を気にして股を開けませんでした。

私達が恥ずかしがって全然言う事を聞かないもんだから、チア部の子達がとうとう痺れを切らして男子の手で無理やり股を開かせられる事になりました。

男子の不調法な手が私達の太ももやふくらはぎに触れるたびに「キャー」とか「もう、スケベ、どこを触ってんだよ」とか「恥ずかしいからやめてよ」なんて悲鳴を上げるものだから、「これは遊びじゃないのよ。次に悲鳴を上げたら水着の股布をマンコに食い込ませるから覚悟しな」って、チア部の子達を怒らせてしまいました。

私たちはチア部の子達が言った「マンコに食い込ませる」って言葉に委縮しちゃって、あとは男子たちに弄ばれるがままです。

普通に脚を持って押さえるだけの男子も居れば、ここぞとばかりに私たちの太ももを撫で回したり、恥ずかしい場所を弄ってくる子も居るなかで、どれだけ嫌な思いをしても、何か文句を言ったら割れ目に水着を食い込まされると思うと、私たちは何も言えずにジッと耐えるしかありませんでした。

その代りって言っちゃうのはなんだけど、股割で背中を思い切り押された時は、耳の鼓膜が破れるんじゃないかと言うぐらいに悲鳴を上げちゃいました。

股割が終わると、太ももの付け根が痛くて痛くて、まともに立つことも歩く事が出来なくて、痛みを少しでも和らげようと思ってがに股になったけど、水着姿でがに股になるものだから、お股が恥ずかしいぐらいに無防備になっちって大変でした。

男子なんかはここぞとばかりにジロジロと恥ずかしいところを見てくるんだよ。もう、最悪です。


<四>

最悪と言えば、私達の着る衣装。

男子の場合だと、白団の団員は柔道着を着て応援して、黒団の団員は学ランを着て応援します。如何にも応援団って感じで、見た目で白黒はっきりしてますよね。

で、問題なのは、私たち女子の衣装の方です。まず、黒団の女子団員は、スクール水着姿で応援しないといけないのです。股割の時に水着姿で運動場に出るだけでも恥ずかしかったと言うのに、体育大会当日はスク水姿で一日中過ごさないといけないのです。

黒団だから紺色のスクール水着って発想も何だか安直すぎるけど、衣装にそんなにお金を掛けられないから合理的と言えば合理的ですよね。でもね、スクール水着を着られる黒団はマシな方です。

私達白団の衣装は、上は白の体操シャツだけど、下は白色のスカートに白のパンツを穿かなくてはいけません。パンツと言っても、こういう時ってアンスコを穿くのだけど、私達に渡されたのはいつも穿いている様な普通の白いショーツ。

しかも、私達が穿くスカートは少し意匠がこらしてあって、ウエスト部分では繋がっているけど、スカート自体は暖簾の様に八枚に別れています。イメージ的には生パンツのままで腰みのを着けている姿を思う浮かべればいいかも。


だから、ジッと立っているだけでもスリット部分からパンツが見えちゃうし、太ももを少しでも動かせば、スカートが捲れてモロパンになっっちゃうってシロモノです。スカートの下はアンスコじゃなくて生パンツだし、これじゃ、男子喜ばせるだけじゃないの。

どうも、この衣装は白団の女子チームの長年の伝統らしくて、去年、応援団部に入団させられた先輩達も散々抗議をしたみたいだけど、決して取り合ってくれなかったみたいで、チア部の子達に言わせれば「恥ずかしと思うなら馴れろ」と逆に怒られたみたいです。

私達が衣装について抗議したその日の練習が終わると、チア部の子達から「恥ずかしいのが馴れないのなら無理矢理でも馴れてもらうから」と言われて、私達は応援団の練習中は、必ず下着姿で参加する事を言い渡されて、この日の練習は解散になりました。

私達は初めチア部の子達が言った事を冗談だと思ったけど、先輩の話だとチア部の子達が言った言葉はどうも本気らしくて、毎年、この手のシゴキを科せられているそうです。

例えとんでもない指示や命令でも、私達に拒否する権利なんてありません。翌日の練習から、私たちは下着姿になって応援の練習に打ち込んだけど、ほんと、最初の頃は下着姿で人前に出るのが全然馴れなくて、羞恥心ばかりが先行していました。

私たちは下着姿で屋外にいる事自体が恥ずかしいのに、そんな格好でダンスを踊らされるのですよ。特に、応援団のダンスって、脚を上げたり、股を開いたり、胸を揺らしたり腰やお尻を振ったりして扇情的なダンスばかりでしょ。


それを下着姿でやらされるものだから、皆の注目を浴びちゃって、身体中がカッと火が付いた様に熱くなりながらダンスを踊っていました。

そんな調子ですから、おかげさまで、夏休みに入る頃には、普段、プールの授業で水着で隠れて真っ白になっているお腹の部分までが、ジリジリと照り付ける太陽の光を浴びて真っ黒に日焼けしてしまいました。

でも、人間って不思議なものですよね。お腹の白い部分が黒く焼けていくに従って、段々と羞恥心が薄れてくるんです。

なんだか、下着姿でいるのもビキニの水着を着ているのも同じじゃないって感じになってきちゃって、夏休みに入る頃には、平気な顔をして男子の前を下着姿で歩けるまでになって、夏休みの終わりごろになると、私たちは男子の前で大胆な行動を取れるようになりました。

私たちは男子の前で自主練と称して脚を上げたり、股を広げて男の子たちの反応を楽しんでたの。男子ったら、情けないんだよ。汗でしっとりと濡れたショーツ姿で男の子たちの前に来ると、皆、顔を下に向けるんだよ。

練習中に掻いた汗や恥ずかしいシミでショーツの前の部分がしっとりと濡れて恥ずかしい毛が薄らと透けて見えるの。もう、私たちはすっかり慣れっ子だから陰毛が見られようが、ショーツが割れ目に食い込もうが平気なんだけど、私達が羞恥心に馴れてくると、逆に男子の方が恥ずかしがるのよ。

「人が折角サービスしてあげているのだから、しっかりと見なさいって」って言ってやりたいぐらい。

夏休みが終わって二学期が始まると、初めの頃は私達を叱ってばかりいたチア部の子達もあまり怒らなくなってきました。動きに大胆さが加わって、逆に「動きがダイナミックになってよ」って、褒められるぐらいになっていました。


でも、世の中こう言うでしょ。「過ぎたりは及ばざるが如し」って。今度は私達が大胆になり過ぎて、恥じらいが無くなったって言い出したの。そこで、二学期が始まると、今度は体操着姿で練習するように言われました。

私達からすれば、折角、下着姿に馴れたって言うのに、本当に勝手のいい話です。

9月に入って月末に行われる体育大会本番までの間、私たちは体操着姿で練習に励んだけど、体操着姿で練習していると、今度は下着姿に馴れた時とは逆に、体操着に馴れてしまい、下着姿になるのが恥ずかしく思える様になってきました。

チア部の子達もそのあたりはよく心得ているもので、体操着で練習をする日と下着姿で練習する日を交互に入れ始めました。しかもですよ、下着の練習日は全員下着姿になるんじゃなくて、下着チームと体操着チームと分けられるの。

下着姿で練習している隣で、体操着姿で練習しているの。私たちの学校の体操着はハーフパンツだからどんだけ股を開こうが下着が見える心配はないから、体操着組は堂々と演技しているけど、下着組は体操着姿の子達を羨ましがるの。

そこでチア部の子達が言う訳。「悔しかったらアンタらも堂々と演技しろ。下着何てビキニと一緒だろ」って。そうはっぱを掛けられると、下着組はやけになって演技をし出すの。

こうなると、バトン部の思惑通り、羞恥心を保ちつつも大胆な演技が出来るようになるって寸法です。本当に、私達の心と身体って、良い様に操られてますよね。


<五>

体育大会本番、私たちはチア部の部室の前に集合すると、衣装を受け取りました。

白色の八枚の布に別れたスカートと、新品の真っ白なショーツ。ショーツと言うよりも、女児用のおへそまで隠れそうなパンツです。こんなダサいパンツ姿を皆に見られるんだと思うと、悲しい気持ちになりました。

でも、こんな事で気落ちしていたら応援どころじゃありません。衣装を受け取った私たちは気を取り直して、自前のショーツと受け取ったばかりの真っ白な真新しいショーツをトイレの中で穿き替えると、衣装を持ったまま運動場に急ぎました。

運動場に出ると、私たちはクラスメイト達が見ている中で体操着からユニフォームへ着替えます。着替えると言っても、ハーフパンツを下してスカートを穿くだけですけどね。

こうして本番になって白団のユニフォームを着て皆の前で応援するとなると、流石に緊張もしてきました。でも、私たちは一生懸命頑張って応援しましたよ。

体育大会が始まってすぐの時は緊張していたせいで思ったように身体が動かなかったけれど、競技が進んでいくうちに熱が入って私達が勢いよく脚を蹴り上げて、パンツのクロッチを見せると、男子だけじゃなくて、女子までもが大喜びしちゃって、それに気をよくした私たちは初秋の日差しを浴びて眩しく輝く真っ白なパンツに包まれたお尻を振りながら、元気いっぱいに応援し続けました。


<六>

こうして、体育大会が終わって家に帰って今日一日の事を思い出すと、居ても立っても居られず、ソワソワと身体が動いてしまいます。

体育大会本番までは気分が高揚して押さえられていた羞恥心が、一気に溢れ出てきてしまい、身体が落ち着かないのです。明日、どんな顔をして学校に行けばいいんだろう……。今の私はその事で頭がいっぱいです。

でも、皆からどう思われようと、私たちの頑張りは偽りのない本物です。この応援団の経験がこれからの高校生活の役に立つとは思いませんが、忘れる事の出来ない思い出として、いい経験は出来たと思います。

なら、来年も女子応援団部に入りたいかと言われれば、お断りですけどね(笑)

(終わり)


inserted by FC2 system