投稿作品集 > 新・幼なじみは応援団員 p.02

このストーリーは、bbs にて、DD 氏より投稿していただいた作品です。 この作品の著作権は DD 氏にあります。



新聞部に入部すると僕はすぐに部長に「応援団の取材をしたい」と申し出た。すると、部長は苦い顔をした。

「吉沢君、それはちょっと……」

言いよどむ部長に畳み掛ける。

「なんでですか? 運動部のために日々練習を欠かさない彼らにもっとスポットを当てるべきじゃありませんか?」

「そ、そうだね。じゃあ、団長にかけあってみるよ」

部長も心のどこかで「どうせ許可が下りるわけない」と踏んでいたのだろう。しかし、あっさりと取材許可が出た。

カメラを首からかけ、ICレコーダーを握り締めてまずは団長に挨拶するため、応援団の団長室へ。ドアを開けると、椅子に座ったガタイのいい学ラン姿が目に入った。その顔に見覚えがある。練習を偵察に行った時、僕に声をかけてきたあのコワモテだ。

コワモテは椅子から立ち上がると、堂々とした足取りで僕の前に来て、片手を差し出した。


「団長の黒田です。よろしく」

その圧倒的な存在感に気圧されながら、僕は黒田団長の手を握った。

「この度は取材の許可をいただき、ありがとうございます。新聞部の吉沢です」

「君、この前、うちの練習覗いてたよね」

やっぱり覚えていたか。僕は赤面した。

「どんなことも包み隠さず書いちゃっていいからね。なんなら写真もご自由に」

そう言って唇を歪めた団長の顔には「お前に撮れるかな?」という挑戦的な笑みが浮かんでいた。それが僕の記者魂に火をつけた。

「わかりました」

こちらも不敵な笑みを浮かべたつもりだが、少し声が震えていたかもしれない。

「では、さっそく今から新入生たちへの学ラン授与式がありますので、部室の方へどうぞ」

団長や他の3年生の後に従って応援団の部室に向かう。


ドアを開けるとすでに部員たちが集合していた。壁際に2年生、正面に向かって1年生が並び、それに向かい合うように3年生が整列する。史奈は僕の顔を見ると、一瞬驚きの表情を浮かべたが、すぐに何事もなかったように前を向いた。

「今日から新聞部の取材が入ることになった。そのつもりで」

簡単な前置きの後、団長が1年生に向かって言った。

「お前たちは今日から正式な応援団員だ。その名誉に恥じぬ行ないをするように!」

「押忍!」

1年生が声を揃えて返事をする。見学の時に15人いた1年生は八人まで減っていた。驚いたことに女子団員は一人も欠けていない。

「これより、学ランを授与する。全員素っ裸になれ!」

「押忍!」

八人の1年生は一斉に体操着を脱ぎ始めた。もちろん、三人の女子団員もだ。


あっという間に下着姿になり、恥ずかしい部分を隠しているわずかな布も取り去られる。全裸になった者は両手を太ももの横にピシッとあてて直立不動の姿勢を取った。

史奈もかわいらしいピンクの下着を上下ともに脱いで、乳首も尻もヘアもすべてを露わにする。平静を装っているが、幼なじみの僕には相当恥ずかしがっているのが手に取るようにわかった。他の二人も同様だ。桑原さんも菱川さんも、必死に恥ずかしさをこらえている。

僕は写真を撮るべきかどうか迷った。喉はカラカラ。カメラを握る手はぐっしょりと濡れている。ふと、脳裏に先ほどの団長の笑みがプレイバックされた。

(大丈夫。これは取材なんだ。掲載するかどうかは部長の判断に委ねればいい)

震える手でカメラを構えると、ファインダーに全裸で整列する1年生団員を捉え、シャッターを切った。静寂した部屋に響くシャッターの音が想像以上に大きく聞こえて、ビクッとする。

誰一人それを咎める者はいない。1年生たちも表情一つ崩さなかった。行き届いた教育。僕は女子団員たちに寄り、今度は彼女たちだけの写真を撮る。

その後、ふんどしが配られ、2年生による締め方の指導が行なわれたが、その様子もバッチリカメラに収めさせてもらった。完全に取材のことなど頭から消え去っていた。


最後に学ランが配られ、授与式が終了する。学ランを着た新入団員は儀式を経て、すっかり一人前の応援団員の顔になっている。史奈も少し大人びて見えた。もしかしたらこういう厳しい慣習も悪くないんじゃないかと僕は思い始めていた。

……

夏が近づくと、各運動部の大会に向け、応援団、チアリーディング部、吹奏楽部による合同練習が始まる。その中で最も気炎を上げているのはもちろん応援団である。

1年生だけじゃなく、2年生、3年生までもが竹刀で気合いを入れられる。気合い入れの際にはズボンを脱ぐのがルールだ。当然、女子もズボンを下ろし、ふんどしを締めた尻を露わにする。2年生以上は平然としているが、チアリーディング部と吹奏楽部の1年生たちにとっては衝撃的な光景だ。

「うわー、かわいそう」
「しんじらんない」

思わず隣同士で囁きあったチア部の1年生を応援団長の黒田先輩は見逃さなかった。

「そこ! なにしゃべってんだ! 前に出ろ!」

納得がいかない顔をしながらも団長に迫力に気圧され、言われた通りにするチア部の1年生たち。


「前屈みになれ!」

尻を突き出した二人のスコートを捲り上げ、ブルマの上から竹刀で尻をひっぱく団長。団員に対する体罰に比べるとさすがにヌルい。しかし、尻を擦りながら二人の1年生が列に戻っていくと、今度はチア部のキャプテンに罵声が飛んだ。

「田所、おまえの教育が甘いからだ。ブルマを脱いでケツを出せ!」

「はい!」

チア部のキャプテンがコバルトブルーのブルマを下ろし、白い下着を露わにする。応援団員や吹奏楽部の男子が見ている前で、だ。顔は青ざめているが、抵抗しなかったところを見ると、もしかしたらこうなることを覚悟していたのかもしれない。

毎年恒例の光景で、去年、先輩がやられているのを見ていたのだろう。下着の上からのケツ打ち10発。

「ありがとうございます!」

ブルマを上げ、列に戻っていく田所先輩の目にはうっすらと涙が浮かんでいた。もちろん、その一部始終はしっかりカメラに収めさせてもらった。


しかし、意外にも一番厳しかったのは、吹奏楽部だった。練習が終わって解散した後、吹奏楽部の部長は部員たちに居残りを命じたのだ。

「お前たち、あんなしょぼい演奏で恥ずかしくないのか」
「一生懸命やってる応援団やチア部に失礼だ」

整列した部員たちに罵声が飛ぶ。最後に、

「男子は全員ズボンを下ろし、女子はスカートを上げろ」

学年を問わず、全員下着丸出し。誰一人躊躇う者がいないところを見ると、どうやら日常的に体罰が行なわれているようだ。

端から順に尻をモノサシでひっぱたかれる吹奏楽部員たち。その光景に応援団員とチア部員1年生たちは口をポカンと開けて見ていた。

ところが、それだけではなかった。今度は3年生に向かって、「お前たちがしっかりしてないから、下がだらけるんだ」と言って、下着を下ろさせたのだ。男子も女子もケツが丸見えである。部長はモノサシで一人10発ずつ尻を叩いた。

それが他の部にも刺激を与えたのか、翌日から練習はさらに厳しさを増した。


応援団の1年生は声が出るまでふんどし一本で練習させられ、練習中、余所見をしていたチア部員は上半身裸。吹奏楽部も1年生の女子が一人、掃除が長引いたため、遅刻してきたのだが、連帯責任で1年生全員、その日は下着姿で練習させられた。

僕は無我夢中でシャッターを切った。シャッターチャンスには事欠かない。竹刀で真っ赤に晴れ上がった女子応援団員の尻を撮り、チア部員のむき出しの乳房をカメラに収めた。

新聞部に戻ってデータ整理をしていると部長が声をかけてきた。

「取材の方はどうだ?」

「バッチリですよ」

何気なくモニターを覗き込んだ部長が思わず言葉を失う。

「お前、これ……」

驚くのも無理はない。モニターの中には全裸にされて恥らう遅刻した吹奏楽部員の姿が映っていたからだ。手で前を隠しているものの、大き目の乳房はハッキリ写っている。


「いやぁ、あまりの厳しさにびっくりしましたよ。普通、ここまでやらないっすよね」

場を和ませようとおどけた口調で言ったが、部長は少しも表情を崩さなかった。

「噂には聞いていたが、ここまでとはな」

部長が知らないのも無理はない。合同練習は一般生徒立ち入り禁止の場所で行なわれるからだ。

「それくらい本気ってことですよ」

「おまえ、それを記事にするのか?」

「いや、しませんよ。というかできません。こんなもんが出回ったらいくら腑抜けの教師たちだって活動停止にするでしょう。そんな、彼らの努力を水の泡にするようなことはできませんよ」

「だよな」

次々表示される女子部員たちの恥ずかしい写真を食い入るように見つめながら部長はつぶやいた。


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