投稿作品集 > 彩音と恵輔 桜商バトン部 p.02

このストーリーは、bbs にて、のりぞう 氏より投稿していただいた作品です。 この作品の著作権は のりぞう 氏にあります。



● ツラくないかな……(2) ●

■ お姉さん編 ■

バトン部の練習は辛いと言えば辛いです。

『練習で何が一番辛いのか?』と訊かれれば、ハッキリと『コレコレが一番辛いです』と答えられるわけじゃないですが、強いて言えば、自由な時間が持てないのが一番辛い事かもしれません。

朝は早いし夜は遅いし、家に帰っても夕食を食べてお風呂に入って寝るだけの毎日です。休みも全くなくて、毎週末は朝早くから夜遅くまで練習漬けだし、時には泊まり込みで練習させられる事もあります。

教室では、友達同士がどこかへ遊びに行ったとか、バイトを始めたとか、ドラマや音楽や流行のファッションの話で盛り上がっているのに、私だけはそういった話についていけないのです。


練習に明け暮れているから遊びに行ったりバイトをしたりする時間もないし、ドラマや音楽なんて見たり聴いたりしている余裕もないし、ファッションどころか、高校に入ってから、制服と練習着以外の服を着た覚えもありません。

とにかく、教室にいると、私だけが世の中の流れから取り残されているような気がするのですが、まだ、それは許容範囲です。

私にとって一番辛いのは、練習の毎日で、家族との時間が取れない事かもしれません。先輩たちの中には、折角レギュラーになれても、練習漬けの日々に嫌気が差して、部活を辞めていく子もいます。

レギュラーになれば、今まで以上の練習を課せられるのが目に見えているからです。もちろん、部活を辞めていく先輩の方が少数で、友達や家族との関係よりも、辛い練習を共にする部員達との繋がりを大切に思う先輩ばかりです。

私もそんな先輩達や部活の仲間たちとの時間を大切にしていきたいと思っています。



● 青空更衣室(3) ●

■ お姉さん編 ■

帰りのHRが終わると、私は体育館裏に急ぎます。体育館裏に着くと、部活の皆と練習着に着替えます。

誰が言い始めたか『青空更衣室』。壁も屋根もない吹きさらしの場所で着替える事に、入部したての頃はかなりの抵抗感がありました。

先輩たちは、周りを気にして着替えられないでいる私たち新入部員に、「こんな事で恥ずしがってどうするの。酷い時は皆が見ている前で着替える事もあるんだからね」と、恥ずかしがっている私達に注意していました。

初めは人が見ている前で着替えさせられるなんてある訳がない。ただの脅しとばかり思っていましたが、それがただの脅しじゃない事を知ったのは、人目の付かない体育館裏での着替えに慣れ始めてきた頃でした。

青空更衣室に慣れ始めたころ、いつもの様に制服から練習着に着替えようとしていた私達に部長さんが、「今日は校門の前で着替えるから、私についてきな」と言われたのでした。


初めは何かの冗談かと思っていましたが、「何ボサッと突っ立ているの。早く、私達についてきな」と言われたので、私達は言われるまま部長や先輩の後をついていくと、本当に校門の前に連れてこられたのです。

校門の前まで来ると部長さんが、「今から私達が見本を見せるから、先輩に恥を掻かせるなよ」と私達に言うと、部長さんたちが一斉に制服を脱いで練習着に着替え始めたのです。

校門には下校する生徒が大勢いるし、校門の外には通行人もいます。そんな学校で一番人目の付く場所で制服を脱いでいく先輩たちの姿を唖然として見ていると、先輩たちは澄ました顔をしながら、いつもの様に制服のスカートを脱いで、ショーツを脱いで、下半身を丸出しにした後、ブルマを穿きました。

そして、ブルマを穿き終えると、制服の上着を脱いでブラジャーを取ってオッパイを丸出しにすると、スポーツブラに付け替えていました。

当然、校門の前で女の子達が一斉に着替え始めれば、誰だって足を止めて注目します。でも、先輩たちはそんな周りの人たちの目を気にする事なく着替えていました。


最後にノースリーブのシャツを首に通して、シャツの裾をブルマの中に仕舞うと、部長さんは表情も変えず、

「いい事、私達は常に更衣室が与えられたり、人目の付かない場所が与えられたりする訳じゃないの。いつ、どこで着替える様に言われても、すぐに着替えられるように普段から慣れていくことも練習のうちなの。それが分かったら、あんた達も早く着替えなさい」

と、私達に指示を出しました。

「一年、私達先輩に恥を掻かせるなよ」

着替えを済ませた先輩たちが、脱いだものをバッグの中に仕舞いながら私達に言いました。

(先輩が着替えたのだから、私達も着替えないといけないよね)

青空更衣室に慣れ始めたとはと言っても、今までとは違います。私達は周囲の目にさらされた中で着替えないといけないのです。

それを思うと、全身がガタガタと震えてきましたが、身体の震えとは別に、胸の奥がジンジンと熱くもなっていました。私は人前で恥ずかしい姿をさらけ出す事に、興奮を覚えたのです。


『私達は周りから見られてナンボ』

顧問の先生や先輩たちが言っていた言葉を思い出すと、私は思い切ってスカートを下ろしました。スカートを下してショーツを脱ぐと、皆の視線が私の下半身に注がれているのを感じました。

この時の私は、恥ずかしいと言う気持ちと、皆から注目されているという思いが心の中を駆け巡っていました。

脱いだショーツをバッグの中に仕舞うと、代わりに練習用のブルマを取り出して、ブルマを腰の上まで上げました。ブルマのクロッチが割れ目に触れると、心なしか、ブルマに湿り気を感じました。

ブルマに穿き替えると、少し気持ちにも余裕が出てきたのか、上着を着替える時はブルマを着替える時よりも冷静な気持ちで着替える事が出来ました。私がいつもの練習着に着替えると、先輩たちが拍手してくれました。

普段、怒られたり怒鳴られたりしている私が褒められるなんて、裸になる事以上に照れ臭く感じました。



● ツラくないかな……(3) ●

■ お姉さん編 ■

バトン部の練習は掃除に始まり掃除に終わります。

練習着に着替えた私達は、体育館へ急ぐと、体育館の床を雑巾で拭きます。

この時、全員横一列に並んで雑巾を掛けるのですが、こちら側の壁から向こうの壁まで雑巾を掛ける時、横一列のラインが綺麗に揃うように雑巾を掛けなくてはいけません。

言うには簡単ですが、実際にそれをやろうとすると大変です。

まず、顔をまっすぐ前を向いて雑巾を掛けないといけないので、横を見て動きを合わせることが出来ないから、横の子の息遣いや気配を感じながらスピードを調整して雑巾がけをしないといけないのです。

だからと言って、横の事を気にしてばかりいると、「横ばかり気にするんじゃありません。雑巾がけにも意識を向けなさい」と言われてお尻に指導を受けることになります。


両腕両脚をまっすぐに伸ばした状態で雑巾がけをするので、指導棒が綺麗に決まります。雑巾がけに慣れるまで、体育館中にバチン、バチンと私達のお尻を叩く音を響かせながら、横の列が揃うまで何往復雑巾がけをさせられました。

入部したての頃の私達は、この雑巾がけが筋トレや周りとの呼吸を合わせる特訓になっていると言う事を先輩から教わるまで、「早くバトンの練習がしたいと思っているのに、どうして雑巾がけばかりやらされるの?」と、不満に感じていました。

この雑巾がけが終わると、柔軟です。

身体の柔らかさが演技の見栄えを左右させるし、怪我の抑制にもなります。とはいっても、入部したての私達の身体はとても硬く、限界まで股を開くと、あとは先輩たちに無理やり股を開かされたり、先輩が私達の身体の上に乗っかったりして柔軟をやらされました。

柔軟も慣れるまでが大変でした。もう、股の筋が切れるんじゃないかと思うぐらい股が痛くて「ギャーギャー」と悲鳴を上げていました。とにかく、股割が出来なくては始まりません。だから、顧問も先輩達も柔軟に力をいれていました。


柔軟体操が終わると校庭を走らされました。

「とにかく、走って、走って、走りぬいて体力をつけろ」

顧問の先生や先輩たちに言われた言葉です。スタミナの源は下半身の筋力と肺活量らしくて、その二つを手に入れるのにランニングは欠かせない練習だそうです。とにかく、運動場や学校の周りを走らされました。

柔軟の後でお股の筋肉が悲鳴を上げている中でのランニングは泣きたくなるぐらいと言うよりも、皆、泣きながら走っていましたが、「泣く暇があるなら、痛みを忘れるぐらい真剣に走りなさい」と、顧問の先生から太ももに指導を受けながら走らされました。

このランニングだけで一時間以上は時間を取っていましたが、雑巾がけ、柔軟で私達の身体はヘトヘトになっているのに、更に一時間のランニングは本当に地獄でした

でも、ランニングまではあくまでもアップと呼ばれる準備運動みたいなものです。身体を温めて全身をほぐし終わると、いよいよ練習本番です。


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