投稿作品集 > 雨宮、部活でしごかれてるってよ 接近編 p.04

このストーリーは、bbs にて、DD 氏より投稿していただいた作品です。 この作品の著作権は DD 氏にあります。



夏休みに入ってTからバイトしないかと誘われた。清掃員のアルバイトだ。ちょうど部活も休みだったので、ちょっとした小遣い稼ぎのために行くことにした。

場所は古びたホテルだった。仕事はそれほどきつくない。忙しいのは一日のうち数時間程度で、後は休憩室で携帯電話でもいじっていればよかった。

その日、僕は午前中の作業をしていると、突然、声をかけられた。振り向くと、なんと雨宮さんがいた。

「どうしてここに?」と尋ねると部活の合宿だという。そういえば、彼女はTシャツにジャージ姿だった。

「S君は?」と聞かれたので、清掃員のバイトだと答えた。それからしばらく他愛もない話をした。英語教科室に呼び出された一件から雨宮さんとはちょくちょく話をするようになっていた。

夏休みの予定の話などで盛り上がっていると、突然、「雨宮!」と怒鳴る声が聞こえた。神矢先輩だった。

「雨宮、こんなとこで何さぼってんだよ」

先輩になじられ、雨宮さんは青ざめた。


「すみません」

僕は黙ってことの成り行きを見守っていたが、先輩が僕に気づいて、

「あ、この前の」

「こんにちは」

「なにしてんの?」

「あ、いや。清掃員のバイトしてて」

「そうなんだ」

一瞬、和やかな空気になりかけたが、先輩はすぐに怖い顔に戻って、雨宮さんに言った。

「雨宮、ケツ出して壁に手をつけ」

「えっ?」

雨宮さんは驚いた顔で聞き返した。驚いたのは僕も同じだ。まさかこんなところで雨宮さんのケツバットが見られるなんて。僕の期待感は高まった。


だが、同時にここは男として席を外してあげるのがマナーかとも思う。僕が葛藤していると先輩は声を荒げて言った。

「聞こえなかったのか? ケツ出せって言ってるんだよ!」

雨宮さんはちらっと僕の顔を見た。しょうがない。ここは席を外してあげるか。

「じゃあ、僕は仕事に戻るんで」

先輩にそう告げると、彼女は残念そうな顔で言った。

「そうか。せっかくだから君にも見てやってほしかったんだけどな。仕事じゃしょうがないか」

僕は立ち去ってから猛烈に後悔した。こんなチャンスめったにないんだぞ。今からでも引き返して雨宮さんのケツバットを見に行くべきじゃないのか? 僕の中の悪魔がささやく。

しかし、もし覗き見したのがばれたら、もう一生、雨宮さんは口を利いてくれなくなるかもしれない。


その時、僕の心の中で邪悪な考えがひらめいた。

「覗き見ではなく、偶然目撃してしまった」のならいいんじゃないか。確かあの場所は中庭を挟んで、向かいの渡り廊下から丸見えだった。僕は渡り廊下に急いで向かった。

渡り廊下にたどり着き、雨宮さんたちがいた場所に視線を向ける。少し距離があるのでかなり小さくだったが、壁に手をつく雨宮さんの姿が見えた。

ジャージと下着を下ろし、お尻が丸出しなのが辛うじてわかる。その後ろで、神矢先輩がバットを構えて立ち、雨宮さんのお尻めがけてフルスイングしていた。

豆粒ほどの大きさだったが、僕は初めて目撃した雨宮さんのケツバットに興奮した。表情などはさっぱりわからない。ただ、ここから見ても相当痛そうだ。

罰を受け終えた雨宮さんはジャージを穿き、すぐに二人の姿は視界から消えた。

頭の中で網膜に焼きついたさっきの場面を何度も反芻しながら休憩室に戻る。すると、すでに仕事を終えたTがジュースを飲みながら呑気にテレビを見ていた。

さっきのできごとをTに話そうかと思ったが、胸の内にしまっておくことした。


すると、Tのほうから、「このホテルにうちのソフトボール部が合宿に来てるぞ」と切り出した。

「へぇ、そうなんだ」

とぼけるとTは続けた。

「さっき、東館で作業してたら、2年生が全員ケツ丸出しで廊下に立たされてたよ」

「マジで!?」

思わず身を乗り出して聞いてしまった。

「なんか3年生に怒られて、ケツバットされたらしい。みんな、ケツ真っ赤になってたもん」

くそー。心の中で毒づいた。なんでこいつだけいい思いしてるんだよ。それならかっこつけないで、雨宮さんのお仕置きを見学させてもらうんだった。

「いやぁ、こっちも何食わぬ顔で通り過ぎたけど、すごかったよ。やっぱハンパないよなぁ、うちのソフトボール部」

こいつ、ひょっとしたら合宿のことを知っていてこのバイトに応募したんじゃないだろうか。

まぁ、いい。こっちは(遠目だったけど)雨宮さんの生尻ケツバット見てるんだ。僕は心の中でほくそ笑んだ。それに午後は僕が東館の担当になる。ひょっとしたら雨宮さんがしごかれている姿を見るチャンスがあるかもしれない。


昼休憩を挟み、午後の作業が始まる。

僕は意気揚々と東館に向かった。ソフトボール部員らしき子達と何回かすれ違う。しかし、しごかれている場面には一度も出くわさなかった。

残念。空振りか。肩を落として休憩室に戻る途中、神矢さんにばったり会った。神矢さんは僕に気づくと、慌てたそぶりを見せた。

「こんにちは」

「あ、ああ。君か」

「どうしたんですか?」

「なんでもないよ。仕事はいいのか?」

「今終わったところです」

「そうか。君、雨宮のこと、好きなんだろ?」

「えっ?」

「隠さなくてもわかるって。ただ、うちの部は恋愛禁止だから。諦めたほうがいいよ」


それを聞いてちょっと安心した。元々僕なんかが雨宮さんと付き合えるわけがない。でも、彼女に恋人ができるのは辛かった。ソフトボール部にいる限りはフリーだということだ。

「じゃあ先輩も彼氏いないんですね」

「ああ」

「美人なのにもったいないなぁ」

「馬鹿。からかうなよ」

しばらく談笑していると、突然、「神矢! ミーティングもう始まってるよ」と声がした。振り向くと、ジャージを着た女子が立っている。おそらく、先輩と同期のソフトボール部員だろう。

「やばっ」

先輩の顔が青ざめる。よく見ると、神矢先輩を呼びに来たソフトボール部員の頬に赤い指の跡がついていた。先輩が来ていないことで顧問のG先生に怒られ、ビンタを食らったのかもしれない。

「じゃ、また」

先輩は僕に挨拶すると、呼びに来た部員と一緒に廊下を走り去って行った。この後、先輩は雨宮さんみたいにケツバットされるのだろうか。先輩には悪いけど、僕はドキドキしていた。


神矢さんが罰を受ける姿が見たい。だが、それはかなわぬことだった。雨宮さんがお仕置きされた新館とは違って、ソフトボール部が宿泊している東館を外から覗ける場所はどこにもない。そんなのはとっくに調査済みだ。

僕は神矢さんが先輩からケツバットされる姿を悶々と想像しながら休憩室に戻った。Tはすでに休憩室に戻っていた。

「なんかあったか」

何かを察知したかのようにTが聞いてきた。

「いや、なにも」

僕はテレビを見るフリをしてシラを切った。しばらくすると、内線の呼び出し音が鳴った。

「はい、休憩室」

僕がインターフォンに出ると、支配人がすまなそうな声で言った。

「悪いけど、東館の416号室のお客さんに、タオルと氷を持って行ってくれるか」

「わかりました」


僕は言われたとおり、タオルと氷を用意して、東館に向かった。416号室と言えば、ソフトボール部が泊まっている部屋だ。ジュースでも飲むんだろうか。僕は不思議に思いながら、部屋のドアをノックした。

ドアを開けてくれたのは3年生らしき部員だった。

「タオルと氷を届けに参りました」

「あ、すみません」

タオルと氷をその子に渡した瞬間、チラッと室内の様子が見えた。ジャージ姿の部員がお尻丸出しの格好でうつ伏せになっている。髪型からそれが神矢先輩であるのは間違いない。

やっぱりケツバットを食らったらしい。氷とタオルは先輩のお尻を冷やすために必要だったのだ。

見ていることに気づかれないようにさりげなく視線を向ける。神谷さんのお尻は想像していた通りの形のよさだった。青あざになるほどではないが結構痛そうだ。

「あのー」と声をかけられ、我に返った。

「はい?」

「どこに返却すればいいですか?」

「西館一階のスタッフルームまでおねがいします」

「ありがとうございました」


ドアが閉められ、夢のような光景は消えた。この記憶を永久保存したい、と思いながら休憩室に戻る。Tは相変わらずケータイをいじっていた。

「なんだった?」

「さぁ? ジュースでも飲むんじゃない?」

僕はとぼけた。なにも教えてやる義理はない。

一時間くらいたった頃、休憩室のドアがノックされた。ドアを開けるとなんと雨宮さんが立っていた。昼間のことを思い出したのか、雨宮さんは僕の顔を見ると頬を紅潮させた。

「これ、返しに来たの」

そう言って、雨宮さんが僕にタオルと氷を入れていた容器を渡す。

僕はそれが使われた用途を思い出し、ドキドキした。もちろん、洗ったとは思うが、もしかしたらこのタオルが神矢先輩のおしりに直に当てられたかもしれないのだ。

「神矢先輩、大丈夫だった?」

僕はわざと知らないフリをして雨宮さんに尋ねた。


「さっき会ったんだけど、ミーティングのこと忘れて慌てて帰って行ったから、昼間の雨宮さんみたいに叱られたんじゃないかと思って」

雨宮さんはいつになくおどおどした様子で、「うん。ミーティングの後、先輩たちからケツバットされたみたい」と答えた。

「それはもうしわけないことしちゃったなぁ。僕とおしゃべりしてて遅刻したようなものだから」

「……」

「わざわざありがとう。おやすみなさい」

「うん。おやすみー」

ドアが閉まると、そこには雨宮さんのいいにおいだけがあたりに残り続けた。

(続)


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