あゝ たまひろい > 各論 卓球部編

マイナースポーツの代表格卓球。どうしても地味なイメージがつきまといます。その中での“たまひろい”ですから、より一層悲壮感が漂います。(以下、卓球はマイナースポーツ、を何度か繰り返し書きます。卓球を愛する皆さま、ごめんなさい。悪気はないんです)

体育館は、バレー部やバスケ部といった、メジャーな部が占領します。マイナーな卓球部の居場所なんてありません。

マイナー卓球部の練習場所は、舞台の上になります。まぁ、ある意味、体育館で最も目立つ場所ではありますが。


舞台上に卓球台を並べ、先輩部員は、舞台の上で練習に取り組みます。

そこで、“たまひろい”の下っ端1年生の役割は、重要度が増します。

1年生は、舞台の手前側、ギリギリのところに整列します。このとき、多少危険を伴いますが、足の裏のかかと側、後ろ半分を舞台からはみ出してもよいでしょう。

整列した1年生は、先輩たちが練習している卓球台のある方向を向きます。バレー部やバスケ部などのメジャーな部が練習しているほうにお尻を向けるかたちです。

テニス部のように、中腰の姿勢は取れません。舞台は狭いですので、先輩たちの邪魔にならないように、背筋を伸ばして、気をつけの姿勢をとります。

ただ、筋トレをかねて、つま先立ちをするのはアリです。

そのときは、ラケットをかかとの下に敷かせます。ラバーの部分は、靴の跡がつきやすいですから、もしズルをしてかかとをつこうものなら、すぐにバレてしまいます。


1年生の役割は“たまひろい”ですが、舞台際の1年生は、ピンポン玉を後ろに逸らせない、という大切な役割もあります。

舞台の下では、バレー部やバスケ部などのメジャーな部が練習していますから、マイナーな部である卓球部がそれを邪魔するようなことがあってはなりません。

1年生は、先輩たちが打ったスマッシュや逸らしたピンポン玉を、身を挺して止めます。

この舞台際の1年生の列を、ほかの部の人たちは「人間の壁」と呼んでいます。また、一部の男子はこれを「ブルマの壁」と呼んでいます。


しかし、そうはいっても、ピンポン玉を逸らしてしまうことはあります。

そのときは、1年生の代表者が舞台を降りて、ピンポン玉を取りに行きます。

もちろん、勝手にほかの部が練習をしているエリアに入ることはできません。マイナー卓球部のくせに、メジャーな、ほかの部のお邪魔をしてしまうわけですから、きちんと挨拶をしなければいけません。

「練習中失礼します! 卓球部1年、○○です。ピンポン玉を拾わせていただきます!」
「卓球部1年、○○です。ピンポン玉を拾わせていただきました! お邪魔して申し訳ございませんでした!」


お邪魔した先が、優しい部の場合は挨拶で許してくれますが、厳しい部の場合はそうはいきません。

「おい! そこの卓球部、ちょっと来い!」

という感じで呼ばれます。決して名前では呼んでくれません。マイナー卓球部の下っ端1年生の名前なんていちいち覚えてもらえるわけがありません。

そうなるとやることは決まっています。呼ばれた部員は、ダッシュでその人のもとに行き、自分のラケットを差し出します。

そして、ひざに手を置いて、お尻を突き出すポーズを取ります。「尻ラケ」でもって、償いをするわけですね。


しかし、一度や二度ならまだしも、同じ日に何度もピンポン玉を逸らしてしまうと、これはもう、1年生だけの問題ではなく、卓球部全体の問題となります。

そのときは、卓球部の部長によって、自主的に償いをします。

連帯責任として1年生全員に「尻ラケ」を与えます。

1年生は、舞台上で、お邪魔をしてしまった部のほうにお尻を向けるように、四つんばいの姿勢になります。

「××部の皆さま、練習を邪魔してしまい、すみませんでした!」

などと、叫びながら、部長の手による「四つんばい整列尻ラケ」を受けます。



あゝ たまひろい > 各論 バドミントン部編

badminton ですから、バトミントンではなく、バドミントンと書くのが正しいようです。まぁ、細かいことはどうでもよいです。そんなこと言い出したら、バドミントンだって怪しいものです。

バドミントンの場合は、ボールではなくシャトルですから、“たまひろい”の雰囲気とは少し違います。

最近のシャトルは大分、丈夫になってきてはいますが、それでも、ラケットで強烈に打つと壊れやすいです。この辺も、ほかの球技とは違いますね。なにせ、トップレベルの選手だと、最大初速度 300km/h 超らしいですから、半端じゃない破壊力です。

部活用品ですから、無闇に買い直すということもできません。バドミントン部の1年生は、シャトルを拾うだけでなく、修理するまでが仕事です。

ほかの部の“たまひろい”のように、大量のシャトルを拾うという場面は少なく、拾うシャトルは限られます。

先輩部員は、このことを利用して、後輩の指導にあたります。

まず、下っ端1年生は、ラケットをかかとの下に敷いたつま先立ちの姿勢で待機します。この辺は、テニス部や卓球部と同様です。

かかとをつくズルをしたときの罰の「尻ラケ」は、テニス部や卓球部以上の厳しさです。

テニスラケットより細く、卓球ラケットより長い、バドミントンラケットは、「尻ラケ」に最適なのです。


一つシャトルが落ちると、その近場にいた1年生部員が一斉に動き出します。シャトルの奪い合いです。

シャトルを拾った部員は、先輩部員に渡しに行き、安堵の表情を浮かべます。

このとき、マネージャーが、その1年生部員をチェックし、名簿に記入します。誰が、いくつのシャトルを拾えたか、これが、のちのち重要な意味を持つのです。


練習が終わると、ミーティングと称した反省会が部室でとりおこなわれます。

部室に顧問が入ってくることはないので、そこは先輩部員の独壇場となります。

先輩たちが、部室のベンチなどに自由に腰をかけているのに対して、1年生は、壁に沿って整列し、硬いコンクリートの床の上に正座をします。

そこで、マネージャーによって、拾ったシャトルの個数が発表されます。

「……。○○、五個。△△、四個。□□、七個。よって、今日の最下位は△△!」

最下位の△△は、部室の中央に引っ張り出されます。最下位の部員は、最もサボっていた、やる気のない部員として、反省しなければいけません。

部員以外誰もいない部室という空間では、普段はできない、多少無理な制裁が与えられます。

例えば、「ブルマ下ろしの刑」や、「尻ラケ」を発展させた「生尻ラケの刑」などです。

部長により刑が宣告されると、対象の1年生部員は、覚悟を決めてその刑を受け入れなければなりません。


1年生が最も恐れているのが、「シャトルの刑」です。

シャトルの刑には四種類の型があります。

・直立前型
・直立後型
・ブリッジ型
・四つんばい型

いずれのシャトルの刑も、“穴にシャトルを入れる”という部分は共通です。その穴が、前なのか後ろなのか、そのときの姿勢はどうなのか、によって分類されます。

「直立前型」は、お股の穴にシャトルを入れて、直立不動の姿勢で、部長の許可がでるまで耐えます。何をされても、どんなことを言われても、動いてはいけません。

「直立後型」は、お尻の穴にシャトルを入れて、直立不動の姿勢で、耐えます。お尻の力を抜けば、シャトルが落ちてしまうので、ずっとお尻に力を入れておかなければなりません。

「ブリッジ型」は、ブリッジの体勢で、お股の穴にシャトルを入れます。入部したての頃は、部長の手によって、穴にシャトルを入れてもらいます。しかし、上級者となると、ブリッジの体勢から自分で自分の穴にシャトルを入れられるようになります。

「四つんばい型」は、ひざをつかない四つんばいの体勢で、お尻の穴にシャトルを入れます。

最下位だった1年生部員は、部室の中央、みんなが見ている中で、指示された型の体勢で、穴にシャトルを入れるのです。

1年生部員全体が怠けているときや気の抜けた態度が見られるときは、このシャトルの刑が、「整列シャトルの刑」へとなります。

部長の宣告一つで、1年生全員が、自分の穴にシャトルを入れて、恥ずかしい格好で先輩のお許しを待ちます。

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