教育的指導 > 清掃教育

――うち中学では、清掃教育に力を入れている。

はっきり言って、うちの中学の生徒は、勉強が出来ない。かといって、芸術やスポーツなど何か一芸に秀でているのかといえば、そうでもない。

前期入試の試験日をどの学校よりも早く設定することで、滑り止めとして受験してもらい、後期入試をどの学校よりも遅くすることで、他校の受験からもれた生徒を獲得する。

経営戦略といえば聞こえはいいが、結果、集まる生徒の質は低下する。

勉強も出来ない。スポーツも出来ない。芸術性もない。ならば、掃除くらいはきちんとやろう、そんな経緯らしい。


“キーン、コーン、カーン、コーン”“キーン、コーン、カーン、コーン”

六限目の授業が終わり、清掃の時間。

生徒たちは、大急ぎでジャージに着替える。

うちの中学では清掃の時間が一日のうちで、もっとも緊張感が高まる時間だ。それが授業中でないのが残念なのだが……

ジャージに着替えた生徒たちは、それぞれの分担場所に散らばり、私たち教員も、生徒監視のためにそれぞれの持ち場に向かう。


私の担当は、一階の東側の廊下だ。

私がその場所に着くと、担当の生徒三人は掃除に取り掛かっている。そのうちの一人が、私が担任をしているクラスの風紀委員、相田真由だ。

清掃の時間は20分間。

そのうち15分間は、私たち教員は口出しをせず、監視だけを続ける。

“ブーゥ”

清掃の時間がラスト五分のところで、ブザーが鳴る。

これを機に、私たち教員の清掃指導が始まる。


「ココッ!」

私は、廊下に掛けてあるパドルを手に取り、その先で、廊下の隅を指し示す。そこに汚れが残っていたからだ。

「はいっ!」

すぐに反応したのは、相田真由だ。

彼女は、私の指し示した先に、雑巾を近づけながら、同じ場所を担当している、ほかの二人を呼ぶ。

三人は、私が指し示した汚れを中心に、身を寄せ合うように集まり、その汚れに雑巾をあて、四つんばいの、雑巾掛けの格好をする。


しかし、手はまだ動かさない。その前に指導を受けなければならないからだ。

三人は、四つんばいのまま、さらにお尻を突き上げる。

『せーの、おねがいしますっ!』

私は、突き上げられた三つのお尻をテンポよくパドルで打っていく。

パンッ! パンッ! パンッ!

『……せーの、ありがとうございますっ!』

そして、三人は一つの汚れを懸命に雑巾でこすり始める。

『すみません。すみません。すみません。……』

その汚れが落ちるまで、三人は見逃してしまった汚れに謝りながら、雑巾で床をこすり続ける。


『おねがいしまーっす!』

三人の様子を監視していると、窓の外、校庭のほうから声が聞こえた。

そちらを見ると、四人の生徒が、お尻を突き上げた格好で、お尻叩きを待っている。

(あの先生か……それも、またあいつら……)

四人の中の一人は、うちのクラスの谷垣由佳。彼女の首には黄色い首輪。今朝の下着検査でパンツを没収されているからだ。ジャージの下には、ブルマ直ばきのはずだ。

パドルを握るのは、校内で、もっとも恐れられている体育教師。

彼は容赦を知らない。


「はよう、ジャージを下ろさんか!」

怒鳴り声が、私のいる校舎の中まで聞こえる。

さっき私は、ジャージの上から相田真由ら三人にパドルを与えたが、この体育教師は、それでは許さないようだ。

『はっ、はい!』

谷垣由佳を含めた四人は、お尻を突き出した四つんばいのまま、ジャージを下ろす。

四つのブルマに包まれたお尻があらわれる。

そのうちの一つ、谷垣由佳のブルマの下に、パンツはない。

「食いしばっとけ!」

『せーの、おねがいしますっ!』

彼は、突き上げられた四つのブルマを力いっぱい、パドルで打つ。

バフッ! バフッ! バフッ! バフッ!

『……せーの、ありがとうございますっ!』

私のパドルとは違う、力強い音が伝わってくる。

(これで、谷垣は赤い首輪か……)

私は、四人の突き上げられたブルマを見ながら思った。

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