敗退 > 謝罪

「ブッ、ブブッー」

バスケットボール秋季新人戦地区大会三回戦。体育館に試合終了のブザーが鳴り響きました。

私たち1年生は、お互いに顔を見合いながら、相手選手とベンチに挨拶をして、急いで顧問の先生のもとに駆け寄ります。

うちの学校のバスケ部では、毎年ベスト4に進むのが当然。この大会もライバル校とともに優勝候補に上げられていました。

しかし実際には、ベスト16にも残れずに敗退。バスケ部始まって以来の情けない成績です。

もちろん勝負なので、時には負けることもあります。しかし、今日の相手は、誰が見ても明らかに格下。負けは許されない試合でした。


先生は、無言でロッカールームから出て行きました。

しかし、私たちはこの先自分たちがやるべきことは分かっています。

いそいで、制服に着替えて、学校に戻ります。

学校の体育館に着くと、すぐに体操服に着替え、体育館の真ん中に整列しました。

私たち1年生の前には、2年生の先輩たちが整列しています。みなさん鬼のような目で私たちを睨みつけています。

2年生の先輩たちは、この秋季新人戦に向けて、自分たちの練習よりも私たち1年生の練習相手になってくださいました。普段は、先輩たちが優先して使うコートも、ここのところずっと私たち1年生に譲ってくれていました。

その横には、何人かの3年生がいました。

3年生は夏の大会で引退し受験に備えていましたが、今日は何人かの先輩が、受験勉強の合間を縫って私たち1年生のために応援に来てくださったのです。

私たち1年生は、そんな先輩たちの前で、情けない試合をし、負けてしまったのです。


誰もしゃべらない、長い沈黙が体育館を包んでいました。

「す、すいませんでした!」

私たち1年生は、整列している2年生の足元で、ひざをついて、床におでこをこすり付けるようにして、土下座をして謝ります。

「すいませんでした。すいませんでした。すいませんでした……」

何度も何度も、数え切れないくらい謝ります。それでも、先輩たちは何も言ってくださいません。

(はやく……はやく私たちを怒鳴って……)

体育館には、私たちの謝罪の言葉が響くばかりで、先輩たちの声は何ひとつ聞こえません。

「もう、その辺でいいだろう」

先生の言葉です。

その言葉は、私たち1年生にとって、救いの言葉であると同時に、これから始まる悪夢のような時間の始まりを告げるものでした。


「じゃあ、2年から。1年は早く準備しろ!」

先生が言います。

まだ土下座を続けている私たちの目の前から、2年生の足が離れていきました。2年生は私たちの後ろに回ります。

それを見て、私たち1年生は覚悟を決めて、準備に入ります。

(しょうがない……自分たちが悪いんだ……先輩たちが私たちのために頑張ってくれたのに……それなのに、私たちが負けちゃったんだもん……)

私は土下座の姿勢、おでこを床につけたまま、お尻を高く突きあげます。ひざを床から上げて、それでもおでこは床につけたまま。かなり窮屈な無理な体勢で、お尻をなるべく高く突き出します。

(苦しいよ……でも、これから、もっと痛いのが飛んで来るんだ……)


バシッ! (ウッ……痛いよ……苦しいよ……)
バシッ! (クッ……痛いよ……もう嫌だよ……)
バシッ! (アッ……)
バシッ! (ハッ……)
バシッ! (グッ……)
バシッ! (ヌッ……)
……

2年生は、高く突き上げられた私たち1年生のお尻を、ブルマの上から順に叩いていきます。一人一発ずつとはいえ、2年生全員が叩くと、何十回にもなるのです。

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