進学塾のスパルタ指導 > 中学受験 p.02
私の番です。塾長の前に立って、気をつけをして、私は自分の名前と家で考えてきた目標を言って、最後に「おねがいします!」と頭を下げます。
「よしっ!」の声が聞こえると、私は後ろを向きます。
すると、私のおでこに、布が当てられます。これは、「合格」の二文字が書かれた手ぬぐいで、塾長が直々に参加者の頭に巻いていきます。
この合格手ぬぐいは、合宿に参加することが決まったときに渡されたもので、家族や友だちがメッセージを書き込んでくれています。
辛いことがあったときには、この合格手ぬぐいを見て、自分を奮い立てるのです。
塾長は、合格手ぬぐいを巻き終わると、パシッ、と私のお尻を叩きます。
私はそれを合図に、もう一度塾長の方を向いて、気をつけの姿勢を作ります。
「じゃあ、頑張るんだぞ!」
そう言って、差し出された塾長の手を握り、握手をします。
<よしっ。がんばろうっ!>
塾長に合格手ぬぐいを巻いてもらって、自分の勉強道具を置いてあった場所に戻ると、何人かの子たちが、部屋の隅に集まっていました。
私は、どうしたんだろう、と思ってみていると、どうやら怒られているみたいでした。
よく見ると、集まっている子たちは、柄のパンツを穿いていました。
勉強に集中するために、パンツは白色のみ、というのは事前の説明会のときに言われていることで、私は、今日のために新しい白いパンツを買ってきていました。
その子たちは、色つきパンツや、シマシマのパンツ、お花がらやキャラクターパンツなどを穿いていました。
私は、あまり見てはいけないと思いつつも、チラチラをその様子を見ていました。
すると、その中の一部の子が自分のバックの場所に戻り、バックの中からパンツを取り出して、また部屋の隅に戻っていきました。その子たちは、叱られて目に涙を浮かべていました。
一部の残っていた子は、先生から、袋に入った新しいパンツを渡されていました。
多分、替えの白いパンツがある人は自分のものを、無い人は先生から新しいパンツが支給されたみたいです。
部屋の隅にその子たちが揃うと、先生が、パンッ、と手を叩く音が聞こえました。
それを合図に、その子たちは、自分のパンツに手をかけました。
<え? うそ……こんなところで……>
その子たちは、みんな寄り添うように小さく固まって、前かがみのまま、パンツを下ろし始めました。みんなお尻をこちらに向けています。前を見られるよりは、後ろのほうがまだまし、ということでしょう。自分だってそうします。
パンツを下ろして、お尻丸出しになると、すぐに替えの白いパンツを穿きにかかります。
一瞬でみんなが白いパンツに穿き替えました。
その子たちは、やっと解放されて、目をこすりながら、バックを部屋の後ろにあずけに行きました。
授業は、全員が、無駄なものを一切身に付けない、パンツ一枚の状態で受けます。ほかに身につけていいのは、靴下と靴、それから頭に合格手ぬぐいだけです。
さすがに、みんな理解がはやいらしく、私はついていくのがやっとです。先生がする質問も、普段の教室でやっているときよりもレベルが高く、私は、あてられても答えられないときがありました。
答えられなかった人は、その場で、立たされて、次に答えられるまで座れません。慣れてきているとはいえ、授業中に自分だけ立たされて、みんなに胸やパンツを見られて、すごく恥ずかしいです。
授業の最初と最後に小テストがあり、最初の小テストは前回の授業の復習、最後の小テストはその授業の確認テストです。どちらの小テストも、点数が悪いと補習があるので気が抜けません。
普通は、夜ご飯の後にお風呂に入って、少し休憩の時間がるのですが、補習になった人は、夜ご飯が半分に減らされる上に、お風呂を禁止になります。
みんなが、ご飯とお風呂と休憩をしている時間に補習をするのです。
私も何度か補習になって、そのときは、みんなより明らかに少ないご飯を一気に口の中に詰め込んで、みんなが、楽しそうにご飯を食べている間を抜けて、教室に向かいます。
補習の時間は、先生がほぼマンツーマンで指導してくれます。
自分が分からないところをたくさん聞くことが出来るのはよいのですが、パンツ姿で、胸をさらけ出している自分のすぐ近くにずっと先生がいるというのは、嫌で嫌で仕方がありません。