誠清女子学苑 > 下っ端部員は絶体絶命 p.05
■ 一致団結 ■
全員のお話とお触りが終わりました。
結局、私がいる右側フェンスチームに21人、反対側の左側フェンスチームに15人が整列しました。太陽が降り注ぐ青空の屋上で、私たちは相変わらず裸で気を付けの姿勢を保っています。
監督が、左側チームの方へゆっくりと歩き始めました。左側チームが整列している前の中央付近に監督は立ちます。
「おめぇらは、こんなときに何考えてるんだ! いいかげんにしろ!」
監督は左側チームの人たちに対して、そう怒鳴ると、列の先頭の村木先輩の方へ近づきました。
ビシッ! バシッ!
<!? ……どういうこと??>
監督は村木先輩の前に立つと、村木先輩のあごをおさえてから、往復ビンタをしました。監督は次に隣の澤口先輩の頬を打ちます。左側チームの人たちは、全員監督から往復ビンタを受けました。
<なんで? こんなときに、って言ってたよね。こんなとき、ってどういうこと? みんな頑張ってたじゃん。頑張って耐えたじゃん。玲ちゃんなんて、長い時間、すごく偉かったよ……。次は、こっちチームもビンタなのかな……>
「全員あっちのフェンス際に並べ!」
左側チーム全員の整列ビンタを終えると、監督は私たちの方のフェンスを指差し怒鳴りました。これで左側チームと右側チームがグチャグチャになります。
<えっ、私たちはビンタなし? もう、チームがバラバラだよね……。何であっちチームはビンタされてんだろう?>
私は疑問に思いましたが、監督からの説明はありません。もちろん質問する人も、反抗する人もいません。左側チームにいた人、何人かの顔をうかがいましたが、なぜか、しょうがないな、というような納得した顔をしていました。
36人全員が、全裸のまま、フェンス際に一列に整列しました。監督とコーチはべらを手に私たちを見ています。
「今からお前たちを鍛え直す。脱落者がいたら、それまでだ! ここでバレーを続けたいのなら、気合いでついてこい!」
「「「はい!」」」
「声が小さい!」
「「「はいっ!!」」」
「もっと!」
「「「はいっ!!!」」」
練習メニューは、私たち基礎練組が、午前中にこなしたメニューでした。つまり筋トレです。
端の人から順に、1から10までカウントし、終わったらその隣の人がまた10カウント、次にまた隣の人が10カウント。全員がこれをこなします。36人全員が10カウントするので、全部で360回こなすことになります。
腕立て伏せ、360回。腹筋、360回。背筋、360回。スクワット、360回。……。
監督はありとあらゆる筋トレメニューを指示し、私たちは必死にそれをこなしていきます。監督とコーチはべらを手にしながら、裸の私たち36人を監視します。ダメな場合には、容赦なくべらが飛びます。
主に3年生や実践組が重点的に監視されているようで、私の隣にいる奥垣先輩は、何度も何度もべらを受けていました。私も、10回以上はべらされました。でもこれは少ない方です。
罰を受けながらも、誰一人脱落することなく、全員が筋トレをこなしました。
「よ~し。10分休憩」
監督の口から神様のような言葉がでました。私たちは、裸であることも忘れ、先輩も後輩も関係なく、体中のマッサージをしあって、体力を回復させようとしました。
休憩も三分が過ぎたとき、急に沙織里ちゃんが立ち上がりました。監督に近づき、なにやら話しています。
「ほかに、トイレに行きたいやついるか?」
監督が私たちに聞きます。どうやら沙織里ちゃんは、トイレに行きたいことを監督に言ったようです。私は内心救われました。実は、私も筋トレの途中から我慢していたのです。でも、こんなときにトイレに行きたいなんて言ったら、何をされるかわかりません。
<ありがとう、沙織里ちゃん。救われたよ!>
私は、手を挙げながら立ち上がりました。何人か立ち上がった気配がしたので横を見ると、三人の人が立っていました。全員が1年生でした。
「よし、わかった。五人だな。していいぞ!」
少しくらい怒られることを覚悟していた私は、あっさりと許可が出たことにうれしくなりました。休憩時間が残り少なくなっていたので、急いで、屋上のドアに駆け寄ります。
「どこ行くんだ!」
監督の怒鳴り声です。私たち五人は、ビクッとして止まりました。
「だれがトイレに行って良いと言った? オレは、していい、って言ったんだぞ」
そう言って監督は、屋上の溝を指差しました。指の先をたどると、そこには排水口がありました。
<え! そこでしろっていうの?>
どうやら、トイレに行かせてもらえるのではなく、その排水口でおしっこをしろ、ということのようです。私たち五人は固まりました。
「何だ? したかったんじゃないのか? したくないのにトイレに行こうとしたのか?」
こう言われると何も言い返せません。しかも、本当はしたくてしょうがないのです。我慢も限界です。
ここで、沙織里ちゃんが動き出しました。よっぽど限界だったのか、内股になりながら、そろそろと排水口へ近づきます。
そして、みんなにお尻を向けるように後ろを向いて、排水口の上にしゃがみこみました。あまりの事態に休憩していた全員がおしゃべりをやめ、屋上は静まり返りました。
それは沙織里ちゃんがしゃがむと、ほぼ同時でした。
シャー シャー
特徴的な音が聞こえました。沙織里ちゃんのおしっこが、排水口のステンレスのふたに当たるたびに、ステンレスが響く音が聞こえます。ティッシュもトイレットペーパーもありません。すべてを出し切ると、沙織里ちゃんは、お股を上下に振りました。
<私、あんなことできないよ……。でも、我慢できないし……>
沙織里ちゃんは顔を真っ赤にして、うつむきながら戻ってきました。私も限界でしたが、足がすくんで動きません。
今度は栞ちゃんが、排水口の上にしゃがみました。
ジョヮー ジュァー
しばらくすると音が聞こえてきました。沙織里ちゃんと同じようにお股をふって、みんなのところに戻ります。
その後、玲ちゃんと可乃ちゃんが排水口の上にしゃがみ、おしっこをしました。残るは私だけです。しかし、なんと私の尿意は、驚くべきことにすっかり引いていました。
「や……やっぱり、いいです。大丈夫です、私……」
行きたいと言っておきながら、やっぱりいい、となれば、さすがに怒られるかもと思いましたが、「そうか。世話のやけるやつだな、まったく……」と、言われただけでした。
「よ~し。休憩終わり! これが最後だ!」
「「「…………」」」
「うさぎ跳びで、屋上三周!」
「「「はいっ!」」」
畠中部長、会田副部長を先頭に二列に整列します。私は一番後ろになりました。部長と副部長の後ろに全員が並び、しゃがんでうさぎ跳びを始めます。
ザッ! 「うっ」
ザッ! 「はぁ」
ザッ! 「はっ」
……
ザッ! 「うぁ」
全員が同じように裸で、同じようにツルツルでした。もう学年は関係ありません。お互いに励ましあいながら進みます。途中、何人かがバランスを崩し、近くで監視するコーチからべらを受けます。
二周目が終わりかけ、あと一周。列が止まりました。だれかが転んだのです。
前を見ると倒れているのは畠中先輩でした。今まで先頭でみんなを引っ張っていた部長。きっと私たちよりも何倍もプレッシャーを受け、何倍もの覚悟でこの練習に取り組んでいたのです。
倒れこんだ部長のお尻に、コーチのべらが容赦なく振り下ろされます。監督も近づいてきます。部長は自ら立ち上がって、監督にお尻を突き出しました。
「みんなごめんね。迷惑かけちゃって……。あと一周。頑張ろう!」
私は気が付きました。私だけでなく、みんな感じ取ったと思います。
誰かがべらを受けるときは、列が止まります。部長はわざと転んだのです。自分の背後で、ほかの部員の体力の限界を悟ったのです。自分が転んで、自分のお尻を犠牲にすることで、私たちに一瞬の休憩を与えてくれたのでした。
その直後です。
<ちょっ、あとちょっとなのに……>
ここで私の尿意が復活してきました。あと一周です。私はお股に力を入れて、うさぎ跳びを始めました。しかし、あと半周まで来たところでした。
「何してんだ! てめぇ~!」
コーチの怒鳴り声が聞こえ、列が止まります。私は前をうかがいました。しかし、全員がうさぎ跳びの姿勢を保っています。
コーチは鬼のような形相で私たちに迫ってきます。いえ、私に迫ってきます。確実に私とコーチの目が合っています。
みんなも振り返って、私の方を見ています。しかし、微妙に目は合いません。しゃがんだ私の足元を見ているようでした。
<うそっ!>
私は、やっと気が付きました。
筋トレとうさぎ跳びで、下半身が限界を迎えていて、今まで気づかなかったのです。なんと私はうさぎ跳びをしながら、お漏らしをしてしまっていたのです。
急いでお股に力を入れますが、止まりません。私はうさぎ跳びの体勢、しゃがんだ状態のまま、監督に、コーチに、みんなに、おしっこをしているところを見られてしまいました。
お股に力を入れて止めようとしますが、一度出始めたおしっこはワレメの間から出続けました。
結局すべてを出し切った私は、立ち上がり、お尻を突き出そうとしました。うさぎ跳びの列を止めてしまった、べらを受けるためです。しかし足に力が入らず、手間取ってしまいます。
「とっとと、尻を突き出せ! 回数増やすぞ!」
コーチがべらを持った右手を振り上げました。
そのとき、私は左右から支えられるような形で持ち上げられました。横を見ると、畠中先輩と三澤先輩が私の肩に手をかけて、支えてくれています。二人の先輩に支えられながら、私はお尻を突き出しました。
コーチは、三つ並んだお尻の、真ん中をべらで打ちました。更に、列から勝手に外れた罰を受けるために、畠中先輩と三澤先輩は、コーチにお尻を突き出しました。
程なくしてうさぎ跳びが終わり、監督の前に三列に整列します。すっかり日が落ち、夕方になっていました。裸の私は、少し寒さを感じます。
「お前たちの覚悟はよく分かった。もう体は限界だろう。今日の練習はこれで終わりとする。夜練は休みだ。明日もゆっくり休んで、あさってからの練習に備えてくれ。
オレも、お前たちを最後まで引っ張る覚悟をした。練習は一層厳しくする。お前ら覚悟しておけ!」
「「「はいっ! よろしくお願いしますっ!」」」